2025年10月3日にルクセンブルク大公として即位したギヨーム5世。新大公夫妻の即位を祝う晩餐会で輝いた大公家のティアラを紹介します。
●ステファニー大公妃

ベルギアン・スクロール・ティアラ
このティアラは、ギヨーム大公の祖母ジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃へのウェディングギフトとして、
ベルギーと深いつながりを持つ多国籍銀行 ソシエテ・ジェネラルから贈られました。中央の最大のダイヤモンドは取り外し可能で、指輪としても着用可能です。

ギヨーム大公の祖母ジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃はベルギー王室出身で、結婚に伴い多くのジュエリーをルクセンブルク大公家に持ち込みました。結婚式では別のティアラを身に着けましたが、結婚式の後の写真撮影ではベルギアン・スクロール・ティアラに付け替えました。このティアラは大公妃が亡くなるまで彼女個人の所有物であり、ジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃専用のティアラでしたが、三男ギヨーム公子の妻であるシビラ妃に貸し出されたことがあります。

ジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃(左)、2002年ノルウェーのマッタ=ルイーセ王女の結婚式に参列したシビラ妃(右)
2005年にジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃が亡くなると、このティアラはマリア=テレサ大公妃に受け継がれました。

近年、このティアラはマリア=テレサ大公妃の象徴的なティアラとなり、国賓晩餐会や王室レセプションなどの華やかな行事で頻繁に着用されました。他のティアラとは異なり、大公家の女性達に貸し出されることはなく、約20年間マリア=テレサ大公妃専用のティアラでした。マリア=テレサ大公妃お気に入りのティアラでしたが、アンリ大公の退位に伴い、長男の妻ステファニー大公妃に譲られました。
●マリア=テレサ大公妃
グランド・ダッチェス・アーデルハイト=マリー・サファイア・ティアラ
グランド・ダッチェス・アデライド=マリー・ティアラ
グランド・ダッチェス・マリー=アデライド・ティアラ
マリア・テレサ大公妃はサファイアとダイヤモンドが輝くこのティアラにエメラルドとダイヤモンドのイヤリング、そしてアールデコ調の大きなエメラルドとダイヤモンドのブローチを合わせました。(左)
前髪でティアラが隠れてしまっている画像しか見つからなかったので、別の機会に同じティアラを着用された画像を並べました。(右)
ティアラの大部分は、ダイヤモンドの実がちりばめられた複雑な葉模様で構成され、中央には大きなサファイアがあしらわれています。このティアラはルクセンブルク大公家のティアラの中でも比較的古いものです。
ドイツの諸侯家門アンハルト=デッサウ家のアーデルハイト=マリー公女(後のアデライド=マリー大公妃)がナッサウ公(オランダとの同君連合解消後のルクセンブルク初代君主アドルフ大公)と結婚した際に持参した宝石を使用して1865〜1870年に作られた可能性が高いと考えられています。
このティアラはアーデルハイト=マリー大公妃の孫にあたるマリー=アデライド女大公の名を冠して呼ぶこともあるようです。最初の持ち主であるアーデルハイト=マリー大公妃のフランス語名はアデライド=マリー。その孫がマリー=アデライド女大公(アンリ大公の祖母シャルロット女大公の姉)。マリー=アデライド女大公は在位期間も7年と短く、29歳で亡くなっています。マリー=アデライド女大公がこのティアラを好んでよく着用していたという説もあるようですが、その写真や肖像画は残っていません。最初の持ち主の名を冠したグランド・ダッチェス・アーデルハイト(アデライド)=マリー・サファイア・ティアラとルクセンブルク初の女性大公マリー=アデライド女大公の名を冠したグランド・ダッチェス・マリー=アデライド・サファイア・ティアラ、どちらの名か濁したグランド・ダッチェス・アデライド・ティアラ等様々な名前で呼ばれています。
マリー=アデライド女大公が1919年に退位した後、1920年代から妹のシャルロット女大公によって着用され始め、1985年に亡くなるまでシャルロット女大公の所有物でした。
その後、このティアラは個人の所有物ではなく、ルクセンブルク大公家の所蔵品となりました。シャルロット女大公の長男ジャン大公の妻であるジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃は公の場でこのティアラを着用されたのは1995年の1度きりだったと言われています。マリア=テレサ大公妃は大公世子妃であった1996年から様々な機会にこのティアラを着用されましたが、そこまで着用回数は多くなかったようです。
その代わり、マリア・テレサ大公妃の時代には息子達の妻や姪にも貸し出されました。

(上段左から)マリア・テレサ大公妃、ステファニー大公世子妃、クレア妃、テシー元妃、マリー=ガブリエラ公女、オーストリアのガブリエラ大公女
このティアラは近年、アンリ大公の姪にあたる2人の花嫁のウェディングティアラとなりました。2017年にマリー=ガブリエル公女(ジャン公子の娘)、2020年にオーストリアのガブリエラ大公女(マリー=アストリッド公女の娘)がブルボン=パルマのアンリ公子との結婚式でこのティアラを着用しました。
※オーストリアのガブリエラ大公女の父親カール・クリスチャン大公は最後のオーストリア皇帝・福者カール1世の孫です。
※オーストリア大公(Archduke)は公爵の上位の肩書(複数の公爵領を所有する「公爵の公爵」)で、神聖ローマ帝国ではハプスブルク家だけに許されました。 当初は君主が「大公」を名乗りましたが、16世紀からハプスブルク家の成員を大公(Archduke)と呼ぶようになりました。オーストリア大公(Archduke)の妻や娘はArchduchess(オーストリア大公妃、大公女)と呼ばれます。
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ショーメ・エメラルド・ティアラ
ショーメによって制作されたアールデコ調のティアラは精巧なダイヤモンドの渦巻き模様、中央の巨大なカボションカットのエメラルド、その中心に配置された大きなスクエアカットのダイヤモンドが特徴で、重厚な印象を与えます。
1926年、フェリックス大公配は、1859年にオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフから大公家に贈られた45カラットの巨大な洋ナシ形のエメラルドを含む、さまざまな宝石をショーメに送り、アールデコ調のデザインで頂点を飾り、巨大な逆さまの洋ナシ形のエメラルドをあしらった新しいティアラを製作するよう依頼しました。
ジョゼフィーヌ=シャルロット大公妃の長男の妻、マリア=テレサ大公妃もこのティアラを愛用し、初期の肖像画や2011年のノーベル賞授賞式等様々な機会に着用されました。
2000年代にマリア=テレサ大公妃のお気に入りとなり、シャルロット女大公から3世代のグランド・ダッチェス(女大公、大公妃)に愛用されたティアラでしたが、10年以上公の場で着用される機会がありませんでした。(最初にご紹介したベルギアン・スクロール・ティアラにお気に入りが変わった為でしょうか?)
そして近年、再びショーメ・エメラルド・ティアラはを見る機会が訪れました。

マリア=テレサ大公妃の娘アレクサンドラ公女は、2023年1月の新年を祝う晩餐会でこのティアラを着用されました。続いて、ステファニー大公世子妃(当時)も2024年2月にチェコ共和国大統領を歓迎して開かれた国賓晩餐会でこのティアラを着用されました。そして、2025年10月の新大公即位を祝う晩餐会でフェリックス大公子の妻、クレア妃にも貸し出されました。
②に続く予定です。
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