高齢男性との廊下の窓際でのやりとりの翌日のこと


 男性は、車輪のついた点滴の器具を支えにし、そこから巻き出る管を腕につけて歩いているものの、その姿からやりとりの時の生き生きとした笑顔は消えていた… 


 そのまま自室のベッドに戻ってから、男性に声を掛けるべきだったか、かけなくてよかったのかと、ふと考えてしまった


 数日後、夕方の散歩の時間に談話室に座っている男性を見かけた


 その男性は、少し疲れを感じさせる表情で、椅子に腰をかけていた


 男性に会釈をすると、笑顔でその会釈を返してくれた


 どうやらその男性は、少し体調も良くなったようで、お互いの病や身の上話をした


 その男性は、幾度と入退院を繰り返し、今回がガン治療の投薬の為の最後の入院となるそうだ


 今回の投薬がうまくいかなければ、もう今後の治療はないのだと、微妙な笑みを浮かべて教えてくれた


 何も答える必要はなく、ただその男性の声に耳を傾けてるだけでも十分に力になれるのではないかと考え、話を聴くことにした


【続く】