主人の携帯に掛かってきた、
「突然の」電話。
え?、思わず耳を傾けました。
誰かが亡くなったようです。
「では、うちのに調べさせますから…、」
ですって、
え?うちのって、私のこと?
(誰なんだろう?)
不安感がよぎります。
えェ?だの、へぇ、だの
暫く話していた後,
「ヒロシさんが死んだ」
と言います。
「山の中で死んでたって、」
えぇ~っ!?~、です!。
何故?
何でだか判らない。
岩手の田舎から出て来て、
ずっと独り暮らしで、
部屋の中には田舎の手掛かりになる住所が無い。
「なにか解らないか?」
と聞かれて、履歴書か海外旅行の書類を調べて見ると答えたそうです。
他の人の履歴書は全部有るけれど、ヒロシさんのが有りません。
海外旅行の書類は本籍地だけ、
市議会議員のおじさんが知らないの?
オジサンは奥さんが亡くなって、遠い老人ホームだそうです。
死んだヒロシさんは岩手から就職で上京して、
残土屋さんに勤めたのだけど、
法の目を潜って、何でもかんでも埋めてしまう残土屋さんだったのですね。
何回も捕まって、
残土屋さんが潰れた。
そのあと屠殺場に勤めて、そのあと牛の仲買人になって、
市議会議員のIさんの、
オジサンに出会った。
オジサンに可愛がられて、
市議会議員のIさんに可愛がられて、
うちの下請けさんのK社で働いていました。
ある日、
「3人を使って欲しい」って、
えー、K社に怒られるでしょう、
と言ったら、
「ちゃんと話してきたから構わない」
「今、みんな日給8000円だけど、1万円欲しいから」
って言います。
親方とSちゃんを連れて来ました。
K社に気兼ねをしながら、
ヒロシさん達を受け容れたのは。
もう30年も前の事です。
みんな年を取り、親方も亡くなりました。
ヒロシさんは辞めてから時々頼まれて、K社の手伝いをしていました。
現場で会って、
懐かしいヒロシさんの肩に抱き付きましたね。
ヒロシさんの故郷の住所が解ったのは、
市会議員の弟さんの奥さんからだったそうです。
死因は自殺でした。
山の中でヒッソリと、
ヒロシさんは独りで歩いて逝ったのです。
警察の管轄?になって~、
顔も見られません。
ゴールデンウィークで、お休みの日でした。
葬祭場もお休みでヒッソリと、
警察関係だけの扉が開かれます。
一時間半後に、
白い骨になったヒロシさんに会いました。
頭と、
体と両手、
腰と足、
何でなの、
遺体は焼くだけで、田舎で御葬式をするそうです。
30人以上、市議会議員さんとk社の人達、
みんなでレストランに入りました。
御食事をして、コーヒーを飲んで、みんなで話が尽きません。
私達のテーブルにはK社の会長と他の下請けさん、
(このテーブルの分は私が払うようですね)
そう思ったら会長が、
「これはヒロシさんの奢りです」
って、ビックリしました。
亡くなったヒロシさんの部屋に行ったら、
テーブルに預金通帳とハンコ。
その横に封筒に入った現金。
預金通帳のお金で御葬式をして、
封筒の現金は、参列者の人たちの為に使って下さい。
と書いて有ったそうです。
75才になった時に役所から人が来て、
生活保護を受けますか、と聞いたら、ヒロシさんは断ったそうです。
誰の世話にもならない。
働いて食べて、
年を取ったら死ぬと決めていたのですね。
部屋の中も綺麗で、
後を濁さない死に方だと思うけど、
それが良いのか、悪いのか、
一刻者だったヒロシさん、
私が電話をした時に、
「…ヒロシです…」
って言ってたでしょ。
あの声が耳の奥に蘇ります。
もう呼んでも還らない。
ヒロシさん、
ありがとうね。
***~さようなら~***