音楽を制作するにあたっては、ドラムソロの曲や一部のラップ音楽などを除いてメロディを考案する必要がある。

筆者の場合、自作曲のメロディは、日常生活を送っているときに浮かんできたパターンと、指板や鍵盤などに触れているときに浮かんできたパターンとがある。

 

色と平和」の場合、最初は「作詞作曲しよう」とすら思っていなかった。

Aメロの1番にあたる箇所の文章を書いていたら、2番の文章が頭に浮かび、1番と2番の文章を眺めていたらメロディが浮かんできた。

そのメロディを自宅で歌っていたらサビにあたるメロディとかも浮かんできて、サビの歌詞を考案するに至った。

そして「伴奏を考えよう」と思い、指板に触れていると伴奏のメロディや、リフと間奏のメロディも浮かんできて、気づくと曲が完成していた。

ただ、自分の場合、歌詞から曲ができていくことは余り多くない。

どちらかと言えばメロディから曲ができていくことが多い。

 

日常生活を送っているときにメロディが頭に浮かんでくるパターンは10代の頃と今とでスタイルが殆ど変わっていない。この記事を書いている今日も、あさ歩いているとき一つの自作メロディが浮かんできたが、「日常生活を送っていたら今まで聴いたことのないメロディが頭の中で流れてきた」というのは10代の頃と同様である。

だが、指板や鍵盤などに触れているときに浮かんでくるパターンは、今と数年前とで変わっている点がある。

(「カリンバ ソロ」はカリンバに触れているときにメロディが浮かんできたのだが、カリンバは指板とも鍵盤とも言えないだろうので、この記事では話題から除外する。)

数年前までは指板経由でメロディを考えることが多かったのに最近は鍵盤経由でメロディを考えることが増えているという変化がある。

 

筆者は中高のときYouTubeで音楽を聴くという習慣ができた。

その音楽は「ボーカル・ギター・ベース・ドラム(・鍵盤系の楽器)」という楽器編成のものが殆どだった。

最初はドラムに関心が湧いたが、次第に(エレキ)ベースに関心が移った。

ポップ音楽やロック音楽は派手だったり大衆的だったりする印象があったため、安物のイヤホンでは聞き取りづらいことも多い楽器がしばしば用いられていると知って意外に思った。

大学に入って、ネットでエレキベースの指板を調べると、4弦の場合、開放弦の音は一般的に太いほうからEADGであると知った。

筆者はこれを「Eat dog(犬の肉を食べる)」で暗記した。AからGまでのアルファベットだけを拾えば「EAt DoG」となり、「EADG」が浮かび上がる。

なおドがCであり、レがDであるなどといった初歩的な知識を知ったのは大学に入ってからで、それまではパワーコードがどういった和音なのかすら知らなかった。

指板やフレットなどといった用語の知識すら乏しかったほどだった。

 

筆者はマイケル・ジャクソンの曲をたくさん知っている訳ではないが、ビリー・ジーンやスリラーは流石に知っており、20歳前後の頃この2曲のベースラインを自宅でなぞったことがある。

そして「2曲とも、ベースの主な旋律が、長方形の角のように配置された4つの音から構成されている」と気づいた。

 

Bass Solo 1 ベース ソロ 1 【オリジナル曲】

 

Bass Solo 2 ベース ソロ 2 【オリジナル曲】

 

Bass Solo 3 ベース ソロ 3 【オリジナル曲】

 

Bass Solo 4 ベース ソロ 4 【オリジナル曲】

 

筆者はベースソロのインスト曲を幾らか書いているが、1~3は指板経由でメロディを考案していった。

 

1は、指板に触れているときに「或る弦の0と3と5」を鳴らすと自然な旋律になることがあるという発想をディープ・パープルのSmoke on the WaterやクイーンのAnother One Bites the Dustのリフなどから得ていて、この発想をもとに考案していった。

2は、ビリー・ジーンやスリラーのベースラインをなぞって気づいたことをもとに「らんらら、らんらららー」あたりの部分を考えていった。冒頭のほうのメロディは半音でもメロディを作ってみたいなと思って出来た記憶がある。

3は、たった4つの音でインスト曲を作ろうという発想に基づいて出来た。E2A0E2(E2は「E弦の第2フレットの音」という意味)のあとにA2A0E2E0と音を低くしていくと良さげなリフ(のようなメロディ)が出来たので、E0以外の音から始まる別のメロディを考案しようと思った。

そしてE2A0を繰り返したあとE0A2を繰り返す動きを考案し、同じ音から別の組み合わせを考えE2A0A0E2A0A0E2A0のあとE0E0A2E0E0A2E0A2と鳴らしていく動きを考案していった。

当初は「E2A0E2A2A0E2E0→前者のメロディ→E2A0E2A2A0E2E0→後者のメロディ→E2A0E2A2A0E2E0」で並べようと思っていたのだが、前者のメロディはかなりシンプルなものだったこともあり、最初のリフ(実質的なイントロ)の直後にくるメロディは後者のメロディにした。

ただ「E2A0E2A2A0E2E0→前者のメロディ→E2A0E2A2A0E2E0→後者のメロディ→E2A0E2A2A0E2E0」のままでも良かった気はする。

 

1~3の作曲時期は2020~2022年ころであり、これらの時期から少し後に書いた4は鍵盤経由でメロディを考案していった。

鍵盤経由での作曲は指板と違って異弦同音がなくコードの音も考えやすいというメリットがある。

その一方で、指板での作曲にもメリットはある。

たとえばドレミファソラシドを演奏したあと、半音上げで演奏する状況を考える。

ギターやベースの場合、A3からD10までの動きをフレット一つ分だけずらすだけで容易に演奏できるが、鍵盤の場合は「白い鍵を左から右へ順に鳴らすだけの動き」が「白い鍵と黒い鍵の混じった鍵を左から右へ鳴らしていく動き」となり、少なくとも初心者にとっては難しい。

 

キンクスがYou Really Got Meを鍵盤経由で書いたのか、それとも指板経由で書いたのかは寡聞にして知らないが、この曲はFGGFGがGAAGAとなり、そしてCDDCDとなっていく。

つまり「或る音を1回ならしたあと、その音より半音2つ分高い音を2回ならし、最初にならした音を1回ならして半音2つ分高い音を1回ならす」という行為の反復によって曲が構成されている。

ギターやベースでYou Really Got Meを演奏する場合は、この行為をFから始めたあと、フレット二つ分ずらして同じ手の動きをして、最後に隣の弦で同じ手の動きをすればよく、鍵盤と指板だったら後者のほうがYou Really Got Meという曲の構成を直感的に掴みやすいと個人的には感じている。

 

最後に、指板由来と鍵盤由来の両方で曲が完成したケースを紹介する。

たとえば2019年頃に作詞作曲した「Nevada Song」は、2019年の冬頃に一つのベースラインを指板由来で考案したことに由来する。

Aメロとサビのメロディは歌詞を書いているときに頭に浮かんできた。

その後、伴奏のメロディと間奏のメロディを鍵盤由来で考案し、アウトロの韻文を考案して曲が完成した。

 

この「Nevada Song」は筆者が人生で初めて作詞作曲した曲だが、厳密には中高のときに「らっらら、ららららー、ららら、はんとうはー」という歌をほぼ即興で考案してみたことがある。

だが、これは単に歌メロを考えてみただけという域を出ていないし、歌詞も今となっては「らっらら、ららららー、ららら、はんとうはー」などと断片的にしか覚えていない。

だから「らっらら、ららららー、ららら、はんとうはー」という歌は作詞作曲という段階には達していなかったと思われる。

筆者が人生で初めて作詞作曲した曲は、やはり「Nevada Song」で間違いないのだろう。

そのときの記憶が不鮮明なので何とも言えないが、現在そのように筆者は考えている。