星の軌跡や天空の色彩を、長時間露光による地上の淡いディテールやシルエットとともに楽しむ「星景写真」。大判銀塩写真で試行錯誤しながら作品創りすることを、つい数年前まで好んでやっていました。
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22年位前の話。
星景と夜明けの風景撮影で、夕刻に面河渓から入山。標高1,300m位の稜線で幕営していました。4x5フィルムに2カット目の120分露光をしつつ、23時頃に2度目の夕食を摂りました。アラームをセットして仮眠しようとしたとき・・・!
「ヒー・・・ホー・・・」
(!) 少なくとも数km先と思われる谷筋のず~っと奥の方から、良く通る竹笛みたいな音が聞こえてきました。何でしょうかね。作品創りへの拘りから単身幕営や夜間登山なんかするクセに、基本的にビビリなので、ドキドキしながら耳を澄まします。この日は無風で気温は0℃くらい、自分の吐息以外は何の音も聞こえません。結局何の音だったんだろう、まさか人じゃないよね・・・なんて思ったとき、再び!
「ヒー・・・ホー・・・」
うわっ、何だこれ ∑(゚Д゚)!?
霧島の主峰・韓国岳北麓で偶然出会い、その作風に通ずるものがあってとても好きだったアマチュア写真家、故・徳森繁 氏は、ビビリな僕に、いつもの穏やかな声でこう言いました。
「夜の山の、何が怖いんですか? 怖いものなんてこの山には何も居ないじゃないですか。」
・・・いや、仰るとおりですけどね・・・。暗闇の中で、不意にガサガサ揺れる薮、ヘッドライトで照らした先には無数の光る目・・・。大抵、前者はイノシシかウサギ、後者はシカだって知っていますけど、何度登っても慣れません(´д`)。
静まり返った林床で無意味に身構え、様子を伺います・・・。
「ヒー・・・ホー・・・」
うわっ来た! さっきより明らかに近付いてるぞ!!
冷静に考えろ・・・付近一帯は広葉樹の森。しかも急傾斜地だ。そんな地形をこの速度で接近可能、すなわち対象は「飛翔体」であることはまず間違いない。時刻と場所を考えれば、人工物・・・機関音が聞こえないのでモーターグライダーか飛行船の類に限定されるが、その可能性は限りなく低い。能動的に音を発することが可能な自然の飛翔体は、ほぼ鳥類。あるいはコウモリである。どちらも危険は無い・・・(ハァハァ)。しかし鳥は「鳥目」というじゃないか。夜間ウロつくといえばフクロウ。フクロウは「ホーホー」じゃないのか?
「ヒー・・・ホー・・・」
Σ(゚д゚;)!! なな、な、何なんだこの「ヒーホー」は!?
近い! ほぼ同標高で、距離は100mか、その位な感じだ・・・。居る、確実にこの暗闇の森の中に、ヤツが居る!!
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「ヒー・・・ホー・・・」
うわぁ来た、そこだ、そこの、目の前の、その木に居るぅああおわぁあぁぁ!!
「おらあぁぁ、何なんだよお前はぁぁ@△Π◎※×Σ〇!!!!」
・・・なんて叫んだような気がします。
真っ暗な広葉樹のシルエットにマグライト(ミニマグじゃなくて大きいやつ)を照射しながら姿を捜しましたが、ヤツは見付かりませんでした。
「ヒー・・・ホー・・・」
ヤツは反対側の谷筋へ遠ざかっていきます。僕の叫び声なんか意にも介していないようで、自分のペースで「ヒーホー」いっています。この後、「謎のヒーホー」は急速に遠ざかっていき、ついに聞こえなくなりました。やれやれ・・・。
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いま、自宅トイレにバードウォッチングの本を置いています。フィールドに出たとき、生き物や植物について少し知識があると楽しいので、「座るとき」に数ページずつ目を通しています。種類毎の特徴を表すコピーが配してあるんですけど、そこに気になるひと言が!
「暗闇から聞こえる、寂しげな声」
この本には、掲載種の声を聞くことができる3次元バーコードが殆どのページに付いていて、スマホで読み込むことで声が聴けます。僕はガラケーなので奥さんに読み込んでもらって確認・・・こいつだ。
トラツグミ (スズメ目ヒタキ科トラツグミ属)
「夜間に寂しげな声で鳴く。山中で野宿していて本種の声が聞こえてくると、気味悪く感じる。」との解説。まんま僕の例です。その気味悪さ故、妖怪、鵺(ぬえ)の声とも云われたらしい。
正体が分かると、何という事は無いですね。また聞けたら良いなと思っています。
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こうして、謎の「ヒーホー」は20年以上の時を経て(?)解明されました(w。
