35歳のK君は若手の中でもダントツのソツのなさを誇るイケメンだ。以前に紹介した副部長も若い頃はこうだったのではないかと思えるほどの出来過ぎくんなのだ。
「若いのにすごいね!」と私たちが褒めても
「いえいえ、僕なんかまだまだです。M部長に一から鍛えられました」
とこれまたそつなく答える。
「M部長がいなかったら今の僕はありません。本当にすごい人です。もう転勤されましたけど」
としみじみ言うので、ここまで部下に言ってもらえるとは素敵な事だ、
「失敗しても必ず守ってくれますし。まぁ、そもそも自分の思った通りになっていないと『もうええ!俺がやる‼️』と僕が座ってた席に座ってものすごい勢いで仕上げていくので失敗とかないんですけど。今でもイライラしている時のM部長がペンで机をコツコツたたく音が幻聴で聞こえることがあります」
「そこまで⁉️」
「はい。本当にあの一年で教えてもらった事があとあとどれだけ助かったかと思うと感謝しかないです。できればもう…二度と一緒にお仕事したくないです。」
あれ❓
うんうんとK君が語るM部長の話を聞いていた私達は全員首をかしげた。
聞き間違いか?
この話の流れなら【もう二度と】ではなく【もう一度】一緒に仕事をしたいが正しいのではないか。
そうK君に問いただすと、ブンブンと首をふり
「無理です!僕いっつも人事異動の時に一緒にならないかチェックしてます。もし一緒になるようなことがあったら今の仕事は全部ほっぽり出して、M部長の指示にすぐ対応できるように準備します。半年ぐらい前から準備したいぐらいです。」
そこまで⁉️
「あの時の事を思い出すと今でも血の気がひきます。本当にもう二度とって思います」
なんだか最初のいい話とは違ってきたなぁと思いながら、もう一度ともう二度とって一字違いで大違いだと思った私だ。