50歳を過ぎて急に生きる事が格段に楽になったなぁと感じる。物心ついた頃に父の本家に引っ越して祖母の他に叔母さんや叔父さんや従兄弟と十数年同居するという経験をしている私は、小さい頃から他人の顔色を伺う癖がついてしまっていた。自分のせいで相手の機嫌を損ねてしまうことを極度におそれるあまり、断るという事が苦手だった。特に相手が好意で言ってくれているとなると、どんなに嫌だなぁと思っても結局は承諾して後で後悔するのだった。

前に知らない人の車に乗ってしまう話を書いたが

40代の時に乗ってしまったその言い訳をしたい。

当時、私は電車で片道1時間半をかけて通勤していた。田舎の在来線ということもあり高架になっておらずよく人身事故で電車が止まっていた。

ある日の事だ。隣の席のおじさんがご機嫌に酔っ払って話しかけてきていた。私は曖昧に笑いながら適当に話を合わせながら、早く駅につかないかなぁと思っていた。そんな時に限ってあと三駅という所で電車が止まった。するとおじさんは奥さんに車で迎えにきてもらうから乗っていけというのだ。当然断ったのだが、なんせ酔っ払っているので全然納得してくれず、どんどん声が大きくなるおじさんのおかげで注目の的になった私は、根負けしておじさんの奥さんの車で家まで送ってもらったのだった。

迎えに来た奥さんの怪訝な顔が今でも忘れられない。私は、善意であってもきっぱりと断らねばならない事があるのだという事を身をもって知ったのだった。