私は小さい頃から全く知らない他人の車に乗ることに抵抗のない人間だった。
昭和世代で田舎に住んでいたので、雨の中歩いていると知らない人が声をかけてくれて車で送ってくれる。車で送ってくれる=親切な人という図式が出来上がっていたのだ。月日はたち、私は電車で少しだけ都会の高校に通うことになった。高校から友達と帰っていると通り雨にあって、私達が近くのお店の軒先で雨宿りをしていると、車が目の前にとまって女性が運転席から
「駅まで送っていこうか?」と声をかけてくれた。
「え?いいんですか⁉️」
私は大喜びで車の後部座席に乗って友人にも
「早く!早く!」と手招きしたのだが、なぜか
友人はものすごく乗りたくなさそうだった。ただ、既に私が乗っていたので渋々乗って一緒に駅まで送ってもらったが「良かったねぇ😆」という満面の笑顔の私に友人は無言だった。次の日、その友人がその出来事を他の友達に言いふらし、私は5、6人に取り囲まれてこんこんと説教された。その時、初めて私は知らない人の車に乗るのは世間では非常識なのだと知った。
ちなみに親からそれを習わなかったのかいうと、同じ頃、母は母で
「雨の中小さい子が2人濡れながら歩いていたから車で送っていってあげるっていったら、何回言ってもいいですって乗れへんねん。遠慮せんでもいいのにって思ってんけど、家に帰ってきてよく考えたら私、人さらいって思われたんちゃうやろか?切ないわぁ」と言ってたぐらいなので無理な話だった。
それで、それ以降そんな事はなくなったのかというと、三十代の時には寝そべって乗るようなオープンなスポーツカーに乗った人から自分の職場の隣にあったホテルまでの道を助手席にのって道案内して欲しいと言われて乗り込んでしまった。40代でも気がつくと駅に夫を迎えにきた他人の車になぜか私も乗っていた。そんな出来事があるたびに周囲から説教され「いつかえらいめにあうぞ‼️」と言われたが、おかげさまで未だ無事に日々を過ごさせて頂いているのだった。