うらがえす | 拾い読みあれこれ

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「さかさ桃太郎」の話が、添田知道の『ノンキ節ものがたり』、昭和48年、で紹介されていた。

桃太郎が鬼ヶ島に鬼退治にでかけるところまでは、お伽話の桃太郎と一緒。

鬼退治をして桃太郎は鬼の金銀財宝を手に入れて凱旋。それからはぜいたくな生活を始める。しかし、そのうちに、なにもしないで遊んでいることに、次第に飽きてくる。

そこで桃太郎は、こんな宝物を持って贅沢しているからいけないんだと気づき、宝物を鬼ヶ島に返してしまおうと考える。

他方、鬼ヶ島のほうでは、宝物を取られてしまってから、鬼たちは自活自営しなければならなくなり、畑を耕したりして、なんとか暮らしを立て、平穏な毎日を送っている。

桃太郎に宝物を返しに来られて面食らう。宝物を持って行かれてかえってさっぱりしたのだから、返すと言われても要らないという。桃太郎は怒ってあばれ、宝物を押し付けてひきあげる。

帰り道、桃太郎は空腹を感じるが、気がつけば無一文。しかたなく刀を売り飛ばしてキビ団子を買う。家来のキジに与えると、それまで贅沢三昧をしていたものだから、キビ団子なんてうまくない。こんなものをあてがわれるんじゃあかなわないと桃太郎のもとから逃げ出していく。

と、まあこんな話が続いていく。

添田は、この話は「持てる者」の悩みを諷告しているという。たしかに、さかさ桃太郎は持てる者の悩みを語る。

そして「このように、なんでも一度うらがえしてみるものだ」と。

たしかに我々、持たざる者、持たざる悩みに囚われている。うらがえして考えることは、気づきにくいことに気づかせてくれるか。財宝よりも、自活自営の平穏な生活の価値に。

時に、逆の発想をしてみることは考える流儀として参考になるし、有益かもしれない。