前回までで骨髄採取のほとんどを書き終えてしまいましたが、ここからは手術後の様子を書いていきたいと思います。





手術が終わり、麻酔から覚めた後はストレッチャーで病室まで戻ります。

身体がずっしりと重たくなっているという事以外はいつも通りです。

足の方から運ばれそのままエレベーターに乗りますが、待ち受けていた病棟看護師さんたちにバトンタッチし、担当してくれた手術看護師さんとはここでお別れです。

ところが、ここまで来る間に①より覚醒していく事、②ストレッチャーで少なからず揺すられた事、③体内に麻酔薬が残っている事によって徐々に具合が悪くなってきました。

さっきまで気管チューブが入っていたせいで声は出せませんし、精神的なゆとりもなかったので感謝を伝えられないまま、そして具合の悪さをちょっとだけ我慢しながらエレベーターを上がっていきました。

エレベーターには私の他に、病棟看護師さん2人(1人は担当看護師さん)と左側の採取をしてくれた先生が既に着替えを済ませて乗っています。

私の入院していた病室までは、クリーンルームという事もあって何度も通路を曲がります。

病室のある階に着くと、看護師さんが「今度は頭の方から行きますね」と言って進んでいくのですが、先の景色は見えないし何度も曲がるせいで頭が揺すられ余計に具合が悪くなってきて、それに耐えるだけで精一杯でした。

唾液もまだ飲み込めなかったので、それも辛かったですね。

「もう少しで病室に着くはず…」と心の中で思いながら景色を見ていたら、何だか朝までいた病室を通り過ぎている気がして疑問を感じながら着いた病室に入っていきました。

その病室を見回すとやっぱり違っていて、それが1人部屋だという事が分かりちょっと安心です。

病院側の配慮で、ここから退院までこの病室で過ごす事が出来ました。


病室に入ったら先ずはベッドに移る為、ストレッチャーを横付けします。

そしてストレッチャーに敷いてあったシーツ?を看護師さん6人くらいで持ってベッドに移し、酸素も病室のものに切り替え、点滴も病室に準備してあったスタンドに付け替えます。

後は、手術前にいた病室から金庫付きテレビスタンドみたいなのを持ってきて、セッティングしたら今までの慌ただしさも終了です。

ここから3時間くらいは絶対安静になります。




さてここで、具合の悪さや苦痛というのがどんなものなのか伝えておこうと思います。

私の場合一番辛かったのは吐き気でした。

最終的に嘔吐もしてますが、手術室から病室までの移動中で気持ち悪くなり、病室で落ち着いたくらいにはその気持ち悪さが明確に吐き気になりその後嘔吐。

それが手術当日と次の日の朝頃まで続いて、私の骨髄採取での一番の苦痛です。

痛み自体はそれほどではありません。

手術から目覚めた時も痛くありませんし、絶対安静中も動かなければ痛みはさほど感じません。

最初に痛みを明確に感じ始めるのは、おそらく術後初めて起き上がる時と、立つ時の一時的な前屈みの姿勢になった時だと思います。

ただ、麻酔の副作用や痛みの感じ方等には個人差があるので、骨髄採取をすると必ずこうなるというものではありません。

麻酔は、比較的若い女性には吐き気が強く出るそうです。

痛みは、刺した数や範囲によっても変わってきますが、思ったより痛くないと感じる人が多いみたいです。

記憶的にも人によっては気付いたら病室にいて、その間の出来事や話した内容を一切覚えてないという事もありますし、眠たくてしばらく寝たり起きたりを繰り返したりという事もよくあります。

それから、気管にチューブが入っていたせいで声が出しづらいだけでなく、しばらく風邪を引いている時のような痛みがあります。

それと、忘れてはならないのが尿道カテーテルです。

私は経験ありませんが、尿道カテーテルによる苦痛やストレスは人によってかなり強くなります。

最近でも問題になっており、骨髄採取での尿道カテーテルの必要性に関して各病院で話し合われていると思われます。





こうした中、術後3時間くらい安静を保ちながら過ごします。
麻酔科の先生①
…トントントン(左肩を叩かれてる)


麻酔科の先生②
寝ている私の右側で「○○さん、手術終わりましたよ。」



「(ん゙)」まだ声は出せないので心の中で。


麻酔科の先生①
トントントン
「○○さん起きて下さい。」


麻酔科の先生②
「○○さん、手術終わりましたよー起きて下さーい。」


モニターを見ながら何やら話をしている様子。


私「(何か言ってるなぁ…あっ、手術終わったんだ、起きなきゃ。何か身体重い。)」


麻酔科の先生①
トントントントン←ちょっと強め


麻酔科の先生②
「○○さん、手術終わりましたよー。」


ここで目を開けて麻酔科の先生②を見る。


それを確認した先生②は先生①とモニターを見ながら話し中。


私「(とりあえず身体が重い。手術後ってこんな感じなんだぁ。いろいろ見て覚えておかなきゃ。)」


そう思った私は、先ず寝る前に取った左手の甲の状態を見て、次に右手の甲に取っているであろう輸血用のルートを見て(うん、入ってる入ってる)、それから周りの景色を見てました。


そうこうしてると頭の上の方で「深呼吸して下さい」という声が。


私「深呼吸?どうやってするの?この状態で出来るの?分からないけどとりあえずやってみよう。」


この時、頭では挿管チューブが入っている事を分かっているものの、呼吸が楽で喉に一切違和感がなかったので、正直よく分からない感覚になっていました。


先生①が直ぐ近くでまた「深呼吸して下さい」と言ったので、また深呼吸するの?と思いながらも深呼吸しかけたその時、今まで入っていたチューブが抜かれ直ぐに酸素マスクが当てられました。


この時の痛みが一番強かったように思います(笑)。


呼吸が酸素マスクに切り替わった時点で身体に付いているものが全て外されました。


そして、手術看護師が「今から病室に戻りますねー、足の方から行きまーす。」と言い、私の寝ているストレッチャーが移動し景色が動いていきました。





覚醒の詳細はこんな感じです。


時間的には手術が終わった10分後に仰向けになり、その5分後に抜管、またその5分後に手術室を退室といった具合になります。




前回たくさん書かせて頂きましたが、私としては自身の経験上、既に体験されているドナーの方の話が一番勉強になったという事もあり、このブログも次なるドナーさんの為に書いているというところがほとんどです。


なので、もしも間違い等や言葉足らずで誤解を生んでしまう部分がありましたら、医療関係者の皆様にご指摘頂けたらと思っております。

前回までは私が体験し、その体験をもとに実際の様子を書いてきました。


ただ今回は、自分で体験していながらも一切分からない(多分最も不安な)部分を書いていきたいと思います。





麻酔が開始されドナーが寝た後、挿管するにあたり更なる鎮静と鎮痛をしていきます。
※薬剤は、担当する麻酔科の先生や病院の方針などによって異なりますが、ドナーへの麻酔管理の安全性に違いはありませんので過剰な心配は要りません。


使用した麻酔薬の効果が出る時間に注意しながら筋弛緩剤を投与します。


これにより、挿管のしやすさと不動を得る事が出来ます。


気管内挿管が完了したらそこから吸入麻酔薬を入れ、静脈麻酔を併用したバランス麻酔を行っていきます。


角膜保護用のテープを貼り、麻酔深度計を付ける場合はここで付けます。


次に自己血を輸血する為のルートをもう片方の手から取ります。


尿道カテーテルが必要な場合は、このタイミングで入れていきます。


水分(生理食塩液など)の点滴を始めます。


ここまで完了したら次はいよいよ手術台に上がる訳ですが、身体に取り付けたものが外れないように、関節や筋肉に過度に負担がかからないように、みんなで協力して仰向けからうつ伏せにしていきます。


直腸体温計を挿入し、体位を整えていきます。


スムーズにいくと、麻酔が開始されてから手術台にうつ伏せになるまで大体15分くらいです。


そこから準備を整え、麻酔が手術に必要な深さで安定出来た事を確認してから、術部をポビドンヨード(イソジン)で3回以上消毒し、ドレープ(水色の布)をかけタイムアウトを行います。


いよいよ手術開始です。


ディスポ針を腸骨に刺し、注射器で数mlずつ採取していきます。


皮膚上の針穴は左右合わせても6カ所くらいですが、同じ皮膚の穴から何度も骨に刺し直すので、実際には数十カ所~百カ所くらいの穴を開ける事になります。


私の場合皮膚の穴は、左右1カ所ずつの合計2カ所でした。


刺し直す理由としては、同じ穴から吸引しようとしても血液が出て来なかったり、無理に吸引すると抹梢血が多くなり、質の高い骨髄液を患者さんに届けられない為です。


造血幹細胞(血液を造る血液)自体は抹梢血の中にも微量にありますし、腸骨以外の骨の中にもありますが、採取量と採取時の安全性という観点から、骨髄バンクドナーの骨髄採取は腸骨からと決まっています。


こうして少しずつ骨髄を採取していく訳ですが、手術の開始から終了までの予定時間は採取する骨髄の量で変わります。


大体1時間30分くらいから2時間30分くらいが多いんじゃないかと思います。


手術が終わりに近付くにつれ麻酔薬の量を徐々に減らし、覚醒に向けた準備を始めます。


終わったら止血をし、ガーゼを当て、またみんなで協力してうつ伏せから仰向けにしていきます。


麻酔薬はほぼストップさせ、筋弛緩回復剤を投与します。


麻酔科の先生たちは手術の後半から、麻酔薬の絶妙なバランスと投与のタイミングで、ドナーの"自然な目覚め"をつくってくれています。


全身麻酔から目覚めた時に、痛くない様に、苦しくない様にしてくれます。


仰向けにし、意識レベルが上がってきたタイミングで少し肩を叩き、声をかけながら起こしていきます。


「○○さん、手術終わりましたよ」って。