前回までは私が体験し、その体験をもとに実際の様子を書いてきました。
ただ今回は、自分で体験していながらも一切分からない(多分最も不安な)部分を書いていきたいと思います。
麻酔が開始されドナーが寝た後、挿管するにあたり更なる鎮静と鎮痛をしていきます。
※薬剤は、担当する麻酔科の先生や病院の方針などによって異なりますが、ドナーへの麻酔管理の安全性に違いはありませんので過剰な心配は要りません。
使用した麻酔薬の効果が出る時間に注意しながら筋弛緩剤を投与します。
これにより、挿管のしやすさと不動を得る事が出来ます。
気管内挿管が完了したらそこから吸入麻酔薬を入れ、静脈麻酔を併用したバランス麻酔を行っていきます。
角膜保護用のテープを貼り、麻酔深度計を付ける場合はここで付けます。
次に自己血を輸血する為のルートをもう片方の手から取ります。
尿道カテーテルが必要な場合は、このタイミングで入れていきます。
水分(生理食塩液など)の点滴を始めます。
ここまで完了したら次はいよいよ手術台に上がる訳ですが、身体に取り付けたものが外れないように、関節や筋肉に過度に負担がかからないように、みんなで協力して仰向けからうつ伏せにしていきます。
直腸体温計を挿入し、体位を整えていきます。
スムーズにいくと、麻酔が開始されてから手術台にうつ伏せになるまで大体15分くらいです。
そこから準備を整え、麻酔が手術に必要な深さで安定出来た事を確認してから、術部をポビドンヨード(イソジン)で3回以上消毒し、ドレープ(水色の布)をかけタイムアウトを行います。
いよいよ手術開始です。
ディスポ針を腸骨に刺し、注射器で数mlずつ採取していきます。
皮膚上の針穴は左右合わせても6カ所くらいですが、同じ皮膚の穴から何度も骨に刺し直すので、実際には数十カ所~百カ所くらいの穴を開ける事になります。
私の場合皮膚の穴は、左右1カ所ずつの合計2カ所でした。
刺し直す理由としては、同じ穴から吸引しようとしても血液が出て来なかったり、無理に吸引すると抹梢血が多くなり、質の高い骨髄液を患者さんに届けられない為です。
造血幹細胞(血液を造る血液)自体は抹梢血の中にも微量にありますし、腸骨以外の骨の中にもありますが、採取量と採取時の安全性という観点から、骨髄バンクドナーの骨髄採取は腸骨からと決まっています。
こうして少しずつ骨髄を採取していく訳ですが、手術の開始から終了までの予定時間は採取する骨髄の量で変わります。
大体1時間30分くらいから2時間30分くらいが多いんじゃないかと思います。
手術が終わりに近付くにつれ麻酔薬の量を徐々に減らし、覚醒に向けた準備を始めます。
終わったら止血をし、ガーゼを当て、またみんなで協力してうつ伏せから仰向けにしていきます。
麻酔薬はほぼストップさせ、筋弛緩回復剤を投与します。
麻酔科の先生たちは手術の後半から、麻酔薬の絶妙なバランスと投与のタイミングで、ドナーの"自然な目覚め"をつくってくれています。
全身麻酔から目覚めた時に、痛くない様に、苦しくない様にしてくれます。
仰向けにし、意識レベルが上がってきたタイミングで少し肩を叩き、声をかけながら起こしていきます。
「○○さん、手術終わりましたよ」って。