『失われた週末』・ビリー.ワイルダー監督作品・・1945年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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    『失われた週末』

 

 

 

          

 

  ビリー.ワイルダー監督の≪失われた週末≫

 

 

幻覚におびえるアル中の売れないいや、書けない作家の恐怖と

 

苦しみを綿密に描いたワイルダー絶品の作品。

 

 

1945年度のアカデミー賞では、

 

作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞を獲得、そしてカンヌ国際映画祭では

 

最高賞、今のセザール賞に当たるのかな獲得しています。

 

 

 

 

     あらすじ デス。

 

 

ニューヨークの安アパートに住む、

 

ドン.バーナム(レイ.ミランド)は

 

作家になるためにニューヨークに出てきたのであるが、いつまで経っても、一行の文章が書けない。

 

ある時酒を飲んだら一行書けた。

 

また書けない。また飲む、そうやっているうちに

 

 

いつしか強い酒におぼれるようになった。

 

   

 

 

故郷を出るときに母がタイプライターを持たせてくれたが今では

 

宝の持ち腐れになっている。

 

今日も見れば窓の外に長あーい紐がぶら下がっている。  

 

 

その下には酒の瓶が結わえてある。

 

兄ウイック(フィリップ・テリー)が来て、酒の在りかをチェックする。

 

ここなら見つからないだろうと考えた挙句に思いついた隠し場所だ

 

 

兄、ウイックは

 

彼を何とか立ち直らせようと、常に監視を続けている。

 

恋人へレン(ジェーン.ワイマン)も協力して、彼を酒から

 

引き離そうとしている。

 

 

極度にお酒の好きな方は分かるでしょうが、

 

一杯、いや一滴の酒を口に入れるために、

 

 

あの手この手で二人をだましたり、まあいろんな場所に酒を

 

隠してこそこそと口に入れる。その様をワイルダーは

 

緻密に緻密に描く。アル中の人というのはまあいろんな手を使って酒を浴びる。

 

その辺が見事に詳細にエグく描かれていて、見る方はなんと

 

知恵の回ることよ と笑ってしまう。

 

 

あの手、この手が浮かぶなら、小説のネタなんていくらでも浮かびそうなもんじゃがのう??

 

そう、あれだけ知恵が回るのなら、小説のネタもたくさん浮かぶだろうに・・・・

 

 

兄と、恋人はなんとか田舎にドンを連れ出そうとしたが、

 

逆にドンの方が

なんとかかんとか二人を言いくるめて、

音楽会へ追い出す。

 

 

 

そして、部屋中、くまなく酒を探すのだ。

 

が、ひと瓶も、一滴も無い。

 

メイドにその日払う日当が

 

机の引き出しに入っていることを

たまたまメイドから聞き出した

 

 

ドンは、お金を持ち出し、なじみのナット(ハワード・ダ・シルヴァ)の酒場に行く。

 

ナットはドンたち兄弟とは身内同然の付き合いだ。

 

   

 

 

ここの店主が身内同様の付きあいで、情にほだされいつも一杯だけと飲ませてしまう。

 

が、今日は10ドル持ってきた。    

 

ここ、飲ませどころの塩梅が肝心なのだが、ついつい負けてしまう。

 

情にほだされるのはわかるが、鞭も必要というものだ。

 

 

 

そうして、

 

10日間も兄に禁酒を強要されていたので、

 

一杯口に入れるや、才能豊かな作家と錯覚し、雄弁になり、

 

体内に気力が満ち満ちてくる。

 

兄を追い出したドンの頭は、酒を手に入れるための頭脳が

 

冴え渡り、意気揚々と、酒壜を買って家へ帰った。

 

いくら弟のためにと努力しても、ドンに裏をかかれ、(ここもあきれ果てて笑ってしまった)

 

 

 

ここから、酒を求めて彷徨う描写が始まるが、

 

時々フラッシュバックでヘレンとの関係が示される。

 

彼女は3年前に知り合って以来、

 

彼の酒癖を直すため虚しい努力をしてきたのである。

 

 

 

再び現在に戻り、

 

持ち金は全て使い尽くし、近所のレストランへ行き、

 

ふと隣の女のハンドバッグに手をかけるが、見つかって店から放り出される。

 

 

 

最後の手段で、命から2番目に大切なタイプライターを質に入れようとするが、

 

ユダヤ人の祭日でどこも休業。

 

  

 

仕方なく、顔見知りでドンを憎からず想っている娼婦のグロリア(ドリス・ダウリング)から

 

5ドル借りるが、その後階段から転落して気絶してしまう。

 

気が付いたときには、アル中収容所の壁の中。

 

 

アルコールが切れ、とたんに、幻覚、幻聴が起きる。

 

彼は恐怖におののいた。

 

 

やっと、アパートへ帰ったものの強迫観念は消えず、

 

介抱に来たへレンの毛皮を質屋へ持ち込み、ピストルを

 

請け出し、自殺しようとするが、

 

ヘレンに銃を見つけられ、

 

自殺を断念した。

 

 

やっとのこと、

 

ヘレンの深い愛に気付き、心から禁酒を誓うのだった。

 

                

 

ーーーー彼の部屋の窓にはまた、ウイスキーのびんが一本ぶら下がっている.....

 

 

ああー-いつの日か またー--

 

 

ー-------------

 

レイ・ミランドが渾身の演技ですね、我々観客はあきれ果てて を通り過ぎて腹立たしくなります。

 

そのくらいに、役にのめりこんでいます。

 

というのも役に入る前から基準を超えたアルコール摂取を履行し、役に臨んだと聞きました。

 

個性の強い人で・・『ダイヤルⅯを回せ』のあのずるがしこい亭主が浮かび、

 

これがこの人の持ち味なんですよね。納得!!

 

献身的に彼を支える恋人役のジェーン・ワイマン、どうしても不二家のペコちゃんにしか見えない。(笑)

 

 

映画の構成と言い、ミランドのアル中作家のみじめたらしさと言い、

 

アル中のミランドの動き、頭の中、見事に人物像が出来上がっていました。

 

以前、デビット・リーンとビリー・ワイルダーの比較・・で書いたと思うのですが、

 

広い広い舞台で大画面が似合う、リーンと比べて、ワイルダーは小部屋の中での舞台劇みたいな作り方が特徴。

 

本作品も劇場に(椿姫)を鑑賞に

 

行くとことろと居酒屋以外ほとんど、

 

ドンのアパートの一室での撮影でした。

 

一番可笑しかったのは、

 

ヘレンと椿姫の観劇に行くシーンですが、彼はポケットに酒瓶を忍ばせている。

 

あれやこれやしてヘレンに気づかれそうになるが、なんとかごまかして、バイバイした途端に

 

酒瓶がポケットから落ちて割れてしまう。

 

ガチャーン!!あきれるヘレンの顔。笑っちゃいました。なんか惨めで哀れで・・・・

 

昨日の『黄金の腕』の麻薬中毒といい、

 

アルコール依存症といい、現代より

 

もっともっと日常的に、そして

 

身辺=身近にある風景だったのかも

 

しれませんね。

 

だからワイルダーも、

 

プレミンジャーも、メスを

 

いれたのかも知れない。