『ミニヴアー夫人』・1940年代に輝いていたハリウッドの女優さん② グリア・ガースン | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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1940年代に輝いていた女優さん② グリア・ガースン

 

 『ミニヴアー夫人』  1942年度作品

 

           ウイリアム.ワイラー監督


夫の記憶が戻るまで一定の距離を置いて辛抱強く、彼を見守り、


耐えて待ち続ける女性ポーラ。

『心の旅路』のグリア・ガースン演じるヒロインである。

同じ年にウイリアム・ワイラー監督の作品・・・『ミニヴアー夫人』に出演しているガースン。

周囲の人誰にでも平等に接し、みんなから愛されるミニヴアー夫人。そんな彼女の

意識と行動が周囲の人々の意識と行動を変えてゆく様を演じて、この年、こちらの作品で

アカデミー主演女優賞を受賞した。


1941年から五年続けて、アカデミー賞にノミネートされている。

『塵に咲く花』、『ミニヴアー夫人』、『心の旅路』、『キューリー夫人』、『パーキントン夫人』。

懐かしいところでは『チップス先生さようなら』のキャサリンですね。


1940年代に輝いた女優さんの一人です。

当初、ミニヴアー夫人の役には、ノーマ・シアラー(マリー・アントワネットの生涯)に声がかかったが、

三人もの子持ちの役は嫌だと断ったらしい。

グリア・ガースンは引き受けた以上は是が非でも成功させたいと、頑張ってこの作品の方で賞を獲得しました。

まばゆいような気品、美しさでは他の女優さんを圧倒する程美しい女優さんですね。


さて、

ミニヴアー夫人ですが、家族愛、夫婦愛、で間違いではないんですが、これはプロパガンダ作品。


企画の段階ではまだドイツとは開戦していなかったので、ドイツ人を悪役濃厚とするにははばかられたが、

1941年の日本の真珠湾攻撃後、続いてドイツはアメリカに宣戦布告したので、

徹底してドイツを憎き敵国として描くことになったそうである。


世界大戦初期のロンドン郊外の田舎町に住むミニヴアー一家、前半特に、ミニヴアー夫人の日常を

描いている。

そして後半、この町の人々の日常がドイツ軍の爆撃によって攻撃を受け、町は破壊される。

市井の人々の日常がいとも簡単に奪われ、命を奪われる様を丁寧に描き、その戦への反対意識が

物語のラストまで失われない脚本の巧さ。

まさにワイラーの世界です。


そのお話。



1939年、初夏のこと。

ミニヴアー夫人は町でお買い物。

浪費癖が治らないことは自分で十分意識している夫人だが、

一通りの買い物は終わったが帰る電車を一旦降りて、高級帽子店に引き返してまで、欲しい帽子があった。

 




”気が変わらない内に早く包んで、ああ主人にどう言い訳しようかしら・・・”

と思案しながら、駅のホームを降り立ったところ、駅長のバラードに呼び止められた。

 




彼が丹精込めて育てた見事な薔薇を見せられた。

眼を輝かしてみる夫人。

『ミニヴアー夫人』と名付けていいかと承諾を求められた夫人。

自分の名が薔薇の名前に・・・と感激して承諾した。


ミニヴアー夫人の夫クレムは建築家。

 



長男のヴインはオックスフオードの大学生。寮に入っていて今日帰ってくるはずだ。

長女のジュデイは10歳、次男のドビーは5歳で「ナポレオン」という猫が友達だ。

 



で、二階の寝室で夫への言い訳を思案しているところへ夫が帰ってきた。

彼は彼で気に入った高級乗用車を購入してしまい妻のなんと言い訳しようかと思案していた。


とまあ、幸せを絵にかいたような家庭だった。

 

 

 




ここの町にはベルドンという名家があって、そのベルドンが毎年花の品評会を催す。

そして名門の特権を利用して毎年、暗黙の了解でベルドン夫人が品評会の優勝トロフイーをかっさらっているようだ。



翌日。

ベルドン夫人の孫娘キャロルが、

今年は駅長が自信作を薔薇部門に出品するという噂を聞きつけミニヴァー家を訪れる。

で、今年も祖母に優勝させたいのでバラード駅長に出品を辞退するように説得してもらえないだろうか  という

相談だった。が、息子ヴインが遮った・

 



上流階級の階級主義を批判して、平等に審査すべきだと興奮して反論した。

 




そんなことはわかっているキャロルで、そのうえでのお願いだったが、

自分の方が間違っていると夫婦に謝罪して帰った。



しかし若い二人はこれがきっかけで互いに興味を持ち、

その夜のダンスパーティーで二人が恋におちてしまう時間の速さ!!

 

あっけにとられる父と母。



やがてイギリスはドイツに宣戦を布告し、

第二次世界大戦に参戦するのだった。


ミニヴァー家の家政婦グラディスの恋人も出征した。



ヴィンは空軍へ志願、近くの飛行隊へ配属されることになり、

キャロルと正式に婚約した。

 



クレムも村の人々と共に付近を巡察したりと忙しい。

ミニヴァー夫妻は飛行編隊が上空を通るたびに、

ヴィンの合図であるエンジン音を聞き、息子に手を振ってああ無事に生きていると安堵する。



若い二人は晴れて、村の人々の祝福を受けて結婚式を挙げる。



ダンケルクから退却するイギリス兵の救助に駆けつけたクレムが

一時消息不明になった。


その留守に、村に不時着したドイツ軍パイロットが

ミニヴァー家に侵入した。

夫人は一人で気丈に対応し、左腕を負傷しているドイツ兵に夫のコートを着せて

なんとか送り出した。

空襲は激しくなり、防空壕へ避難すること頻繁になった。

 



そんな中でなぜか、

「ベルドンカップ」が無事に開かれる。



薔薇の栽培部門の審査は、

今年もベルドン夫人に決まったが、夫人は

バラード駅長の「ミニヴァー夫人」を一等に、

自分の薔薇を二等と発表した。

駅長たちは歓びに沸いたが、敵の飛行機が来襲するとのこと。

みんな散り散りに逃げた。



ミニヴァー夫人とキャロルはヴィンを航空隊基地へ送り届けて、家路を急いでいるところに

敵機が襲う。弾に当たったキャロルは家に着く前に息を引き取った。

 



数日後、


めちゃめちゃに破壊され、廃墟と化した教会では

礼拝が行われた。

 



全壊した教会に集まった人々にやりきれない怒りが胸にこみあげてくる。


孫を失って憔悴し切ったベルドン夫人の傍らに

キャロルの夫ヴィンが寄り添う。

バラード駅長も亡くなった。


この先も困難が襲うだろう。

乗り越えていくしかない戦争である。


ワイラーは作品の完成後に、米国陸軍通信隊に配属され、海の向こうで

オスカー受賞を知らされた。

彼自身もカメラを持ってメンフイス・ベルに乗務したこともあって、実際に戦場で

惨状を目の当たりにしたら、この作品の表現では甘すぎたと語ったそうである。


1942年度の

アカデミー最優秀作品賞     ミニヴアー夫人

        監督賞     ウイリアム・ワイラー


        主演女優賞   ジュリア・ガースン

        助演女優賞   テレサ・ライト

        脚色賞     アーサー・ウインぺリス・ 

                ジェームス・ヒルトン

        撮影賞     ジョーセフ・ルッテンバーグ  の6部門獲得。 
           


 ミニヴァー夫人     ・ グリア・ガースン

 クレム・ミニヴァー   ・ ウォルター・ピジョン
 
 キャロル・ベルドン   ・ テレサ・ライト
 
 ベルドン夫人      ・ デイム・メイ・ウィッティ

 バラード駅長      ・ ヘンリー・トラヴァース  

 

息子ヴイン       ・ リチャード・ネイ