『嵐が丘』・荒涼たるヨークシャーを舞台に繰り広げられる愛憎劇・1939年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

           

 



       『嵐が丘』


   
アカデミー賞を受賞したのは、数々、ノミネートされるも、

グレッグ・トーランドの撮影賞のみ。

だけど、それで充分。

なぜなら、エミリー・ブロンテの原作のイメージをいかに忠実に画面に

映し出してくれるか、観客はそれを期待していたと思うから。

原作の読者は自分の想像を巡らせることができるチョットの隙間が欲しい。

イマジネーションを膨らませるのがだいご味であるとしたらこの撮影は大成功だから。




ブロンテの小説の形態はゴシック小説と言われるもので、

   怪奇現象、宿命、古城、古い館、廃墟、幽霊 暗闇、などがモチーフとされている。

ワイラーはそこのところを散りばめながら、暗いヨークシャーもヒースに、豊かな草原と、

二人をそこに投げ込んで

 

明るい愛の場面も 作った。



ー----ストーリーー---

百年前・・・

英国ヨークシャーの荒野に陰鬱な屋敷があった。

「嵐が丘」(屋敷の名前)に来るのは、嵐で道に迷ったよそ者くらいだった。


吹雪で道に迷ったロックウッドは(嵐が丘)と呼ばれる館に辿り着いた。

ヒースクリフさん??・新しい借家人のロックウッドです。


陰気な館には主人のヒースクリフと妻のイザベルそして使用人のジョゼフとエレンが暮らしていた。

迎えた住人は全員不愛想でロックウッドに敵意をあらわにした。

ロックウッドは今夜泊めてもらうのに召使部屋に案内された。


その夜、ロックウッドは、破れた窓の外からヒースクリフを呼ぶ女の声を聴いた。

”ヒースクリフ、中に入れてお願いよ!”

ロックウッドは手をつかまれた。氷の手のようなものを感じた。



ロックウッドからそのことを聞いたヒースクリフは、吹雪の中へ飛び出して行った。

取り残されたロックウッドは、館の家政婦エレンから、

これまでの「屋敷ー嵐が丘」にまつわる悲劇を聞かされることになった。


元々この屋敷の主はアーンショー。

とても慈悲深い人で貧しい孤児を保護し、ヒースクリフと名付けた。

 



そして実の子供たちと分け隔てなく慈しんで育てた。


息子のヒンドリーはそれが気に食わなかったし、ヒースクリフを嫌っていた。

父アーンショーが死んでからは、ヒースクリフを館の馬て丁として扱き使った。


成長したキャシーは、ヒースクリフを愛するようになっていた。


そんな中、二人は隠れて、ペニストン岩でいつも逢瀬を重ねた。

 

   

そこは二人にとってお城であった。



が、キャシーは

上流階級にもあこがれを持っていた。

今夜もエドガー・リントン家のパーテイの様子を覗いていて、

 

犬にかまれたキャシーをエドガーが介抱した。


裕福なエドガー・リントンは前からキャシーに好感を持っていた。

急速にエドガーとキャシーは近づいた。


キャシーは彼から求婚され有頂天になっていた。

キャシーもキャシーでヒースクリフとエドの間を行ったり来たりで

ヒースクリフへの愛が本物とも思えない。


キャシーを独占したいヒースと、心はヒースでも、上流階級のエドガーも気を引いておきたい

キャシーのわがまま。

そりゃあヒースも傷つくわいな。移り気で欲張りなキャシー。


返事は思いとどまったものの、ヒースクリフは、キャシーがエドガーの求婚を受け入れたと

早合点し、ショックのあまりに館を飛び出し行方をくらました。



キャシーがエドガーと結婚してどの位経ったのだろうか、

ヒースクリフは成功者となり裕福な紳士として戻って来た。



エドガーと結婚したキャシーに復讐することを誓ったヒースはまず、自分を苛め抜いたヒンドリーの

借金を肩代わりし、「嵐が丘」を乗っ取った。

次にエドガーの妹イザベラに近づき、手練手管でその気にさせ、求婚した。

 



イザベラはヒースを愛していたし、すぐに受け入れた。

だが、ヒースクリフはその裏でキャシーに愛を告げ、今も愛していると迫った。

 




そんなヒースクリフの歪んだ愛にキャシーは苦しみ、そしてとうとう病気になり寝込んでしまった。

やがて生きる気力を失いヒースクリフの腕の中で死んでいった。

 




エレンの話がそろそろ終わろうとする頃に医師のケネスがやってきた。


ケネスは”吹雪の荒野にヒースクリフと女の二人連れを見かけた。追いつくと・・・・・

 



ヒースクリフが一人で死んでいた・・・と言う。


エレンは”キャシーよ”と言った。


愛し合うヒースとキャシーは時空を超えてやっと結ばれたのだった。
ー----

① 19世紀の荒涼としたヨークシャーのじめじめした館に

起こる超自然現象、暗く重苦しい雰囲気が作品を覆う。


②  そこで情熱的な男女の愛と復讐劇の話が展開していく。


③  禁じられた愛、そして復讐、その結果としての悲劇と虐げられた男のあがき

    を描いた


そもそも、この作品は恋愛物語の部類ではない。

原作では、

親兄弟の愛を求め続け、その家族たちに受け入れられなかったゆえ

崩壊する家庭。復讐、そして後半は

その子たちによるアーンショー家とリントン家の、家庭の再生が描かれているのですが、

ワイラー監督はヒースクリフと、キャシーの愛の物語だけにスポットを当てましたね。


そしてヒースクリフとキャシーの成長過程なんだけれども、

二人の成長の過程が違うゆえにお互いを思う愛の質が違う。

そしてそれを二人ともわかっていない。

だから罵り合いは収まらない。

では、二人はお互いのどこを、何を愛していたんでしょう。

 

やはり男らしさ、力強さ、押しの強さ、

 

エドガーには無いものばかりを持っているヒースクリフ。

ヒースクリフは復讐は遂げても、想い人である、死んでしまったキャシーが忘れられず、

その亡霊とともにペニストン岩のお城の向こうへ消えてゆく。


自然界の荒々しさと人間の内面の暗闇を見事に結び付け

  深い恐怖とそれ以上の美の感覚を与えてくれた。

これがこの作品のすばらしさでしょうね。



 監督  ウイリアム・ワイラー

 撮影  グレッグ・トーランド

 音楽  アルフレッド・ニューマン


キャスト

   ヒースクリフ    ローレンス・オリビエ

   キャシー      マール・オベロン

   ヒンドリー     ヒュー・ウイリアムズ       
 
   イザベラ      ジュラルデイン・フイッツジェラルド

   エドガー       デヴイット・ニーブン     
   
   アーンショー     セシル・ケラウエイ

   ロックウッド    マイルズ・マンダー    
   
   
   使用人ジョセフ   レオ・G・キャロル 


   使用人エレン       フローラ・ロブソン

   医師ケネス      ドナルド・クリスプ

ローレンス・オリビエのハリウッドでの出世作となった作品。

そしてその後、ヒッチコックの『レベッカ』と、この二本で世界にオリビエを知らしめた。


余談ですが、

オリビエは

マール・オベロンとそりが合わずにしょっちゅう揉めていたそうだが、その愚痴をロンドンのヴイヴイアン・リーに

手紙で知らせていたそう。ヴイヴイアンはハリウッドに飛んできた。

ちょうどそのころ『風と共に去りぬ』の撮影が行われていたが、まだスカーレットを演ずる女優が決まっていなかった。

オリビエを追ってハリウッドに来たヴイヴイアンだが、ある日、アトランタの炎上シーンを撮影していて、

ヴイヴイアンがそれを見ていた。

彼女のほほに映る赤い炎を見て、セルズニックは”スカーレットは彼女だ!”と決まったそうだ。

マール・オベロンのおかげだよ・

これは有名な話ですね。
 

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