ウイリアム・デイターレ監督『ゾラの生涯』と ポランスキー監督の『オフイサー・アンド・スパイ』 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

『オフイサー・アンド・スパイ』と『ゾラの生涯』のこと。 


     

前者はロマン・ポランスキー監督

後者はウイリアム・デターレ監督  作品である。


   どちらもフランスのドレフエス事件を扱っている。


前者は 2019年のヴエネツイア国際映画祭で銀獅子・審査員大賞を受賞。

後者は 1938年度のアカデミー作品賞,

                                     助演男優賞を受賞している。



ネットに、世界史用語というページがあって、ここで作家の大仏次郎さんが

ドレフエス事件について書いたのを

 

掲載していたので、

ストーリーを簡易にするために、主な部分を抜粋して記載します。



ー------


 1894年 夏 フランスの参謀本部の諜報部が

ドイツ大使館に送り込んでいたスパイの盗み出したメモの中に

フランス陸軍の誰かが書いたと思われる機密情報があった。


驚いた参謀本部は直ちにその犯人捜しに乗り出したところ、

参謀本部付のアルフレッド・ドレフエスが浮かび上がった。


疑われた理由は彼がアルザス生まれのユダヤ系であったことだった。

参謀たちのユダヤ人に対する軽蔑と差別意識がその判断を濁らしたのである。


密かにドレフエス大尉の筆跡を取り寄せてメモと比較したところ、参謀たちは

 ろくに調べもしないで、筆跡は一致していると簡単に結論を出した。


10/13日ドレフエス大尉は参謀本部に私服着用で出てくるよう命じられた。

やってきたところを反逆罪で逮捕されたのだ。



大尉は強く否定したが参謀が聞き入れるはずもなく、

事件をスクープした反ユダヤ系の新聞が「ユダヤ人の売国奴、逮捕される」と報道した。



翌1895年一月、練兵場で徽章(きしょう)ははぎ取られ、軍刀はへし折られた。

 





ドレフエスは終身刑として南アメリカのフランス領ギアナ沖にある「悪魔島」に送られた。

 




これで一件落着と思われたが、新たに参謀本部情報部長として赴任したピカール中佐は

別なルートから調査し、エステラージという名の少佐がドイツ大使館の諜報員と

連絡を取っていることを嗅ぎ出した。


ピカール中佐は密かに再調査を進め、その筆跡を入手して以前の鑑定人に

見せたところ、エステラージと、疑わしき人物のメモが同一人物のものと答えた。


ドレフエスの無実を確信したピカールはその結果を上層部に上げたが、

陸軍大臣以下軍首脳は軍事裁判の権威を守るため司法にまで手を伸ばし

事実の発覚を握りつぶした。

 

  

                                                       (法廷のゾラ)

                      

 



度重なる裁判の途中で、

ドレフエス有罪の証拠を捏造した疑いのある軍人(ピカール中佐の身近にいた人物だった)が

 



自殺をしたことから再審の声が高まり、その結果、ドレフエスは5年に渡る

悪魔島の禁固を解かれ、再審のためフランスへ戻った。

しかし、これもまた阻止され、ドレフエスは絶望の淵に立たされたのである。



が、政府内の共和派がドレフエス救済に動きだし、恩赦によって出獄。

 

なおも
身の潔白を証明しようとしたが、そのころには事件の的が、

    国家における軍部の地位の問題とすり替わり、政教分離の問題となっていった。

   フランス共和政党 対

    王 党(反ユダヤ主義、軍部、カトリック教会)の戦いに焦点が変わってきたわけです。

そういうことで世界を騒がせる事件となったのです。


ドレフエスは、逮捕から10年を経てやっと無罪となる。


というのが大まかな事件の経緯です。

 

この結果フランスの共和制が守られた。

まず、ポランスキー監督の作品は、軍部内の動き、捏造、軍関係者の人物を徹底して描いている。


ピカール中佐を押さえつける人間、邪魔をする人間、司法も軍部につく。

   

一番身近にいる肥満体の部下がカギを握る。

 




エミール・ゾラについて

パリの屋根裏に画家で親友のセザンヌと暮らすゾラは早く貧乏暮らしから抜け出したい。

 



パリの胃袋、居酒屋など出版していたが、まだそれほど豊かではなかった。


田舎から出てきたナナを救ったことから彼女をモデルにした小説  ナナ を発表した。

 



低俗だとけなされながらも小説は売れに売れてゾラの生活は豊かになった。


セザンヌは 芸術家は貧乏でなければならないと言って、ゾラの元を出てゆく。

 




常日頃から軍や政府を批判しまくっていたゾラだから、警察からも目をつけられていた。


叩かれれば叩かれるほど燃えるゾラは ルーゴン・マッカール叢書を発表。


一流作家として富と名声得て、文豪の名声を得る。


そんな折、世界を騒がしているドレフエス事件を耳にする。

ドレフェス夫人のたっての依頼で彼は調査された書類に目を通し、憤り、

我 弾劾す という公開状を新聞に投稿。

 

      

当然逮捕され、禁固一年を明日言い渡されるであろう時にイギリスに亡命するのです。

一年後、ドレフエスは無罪となり、パリに帰ってきたゾラは

 

明日、ドレフエスが晴れて軍部に復帰するという式典の前夜、

書斎で一酸化炭素中毒で絶命ました。

 

ドレフエスと会えることはできなかったのです。

 




ウイリアム・デイタール監督の『ゾラの生涯』は後半ほとんど

このドレフエス事件を描いています。

ゾラの見たドレフエス家族の苦難が描かれ、ギアナ沖の島に幽閉された悲運を強調した

ヒューマニズム映画となっている。

ゾラには当時人気絶頂だったポール・ムニが演じている。

ドレフエスを演じたジョセフ・ソンダーガードは怖いまでの役作りで、悪魔島での彼は死霊のごときであった。

 

                    



ポランスキー作品のピカール中佐を演じたジャン・デユシャルダンはどこかショーン・コネリーを

思わせる雰囲気があり親しみを覚えます。

貫禄ある軍人ぶり。

 

     

ドレフエス役のルイ・ガレルの渋さ。

孤独と怒りの演技。


また、先にも書いたピカールの部下でカギを握る太っちょのアンリ少佐役の

グレゴリー・ガドウボウは大胆でこずるそうで正に適役でした。

ポランスキー作品常連の夫人エマニュエル・セニエは

個性強いマダムでピカール中佐の愛人役。適役でした、

いつもどんな役を演じても品の無さが消えず、

あまり好きになれない。



ー------特筆すべきは今回改めて頭の中で繋がったのですが、

フランスのこの事件を取材したハンガリーの記者 テオドール・ヘルツルが

ユダヤ国家建設を願うシオニズムの提唱者となり、イスラエル建国につながるきっかけとなったことです。


ひとつのことから一つのことを調べていくといろんな事実に出くわすという面白さはたまらないですね。 

   

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