『パリ.テキサス』・深い深い家族愛と哀愁のサントラが胸を打つ・・1984年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

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ヴイム.ヴェンダース監督


『パリ.テキサス』1984年

 監督のヴィム・ヴェンダースの名は、

映画マニアの間でこそ知られていたが、

過去作の日本公開は、まだ数少なかったせいか

知られていなかったように思う。

かくいう私もその一人。

「小津安二郎を敬愛する、ドイツ人監督」で
あることも
うんと後になって知った。

 ヴェンダース作品が日本で、

いっぱしの映画ファンと称する人たちが
彼について語るようになったのは、

『ベルリン・天使の詩』が
1988年春に公開され、
記録的なヒットになってからのような気がする。

 私はまだヴェンダースよりも、
脚本のサム・シェパードの名のほうに興味がいったくらい。

劇作家であると同時に俳優だったシェパード。
サム.シェパードに関してはまたの機会述べるとして、
『パリ、テキサス』という作品は公開当時、
全然興味を持たなかった。

脚本はサム.シェパード
L.H.キット.カーソン

子役のハンター役であるハンター.カーソンは
L.H.キット.カーソンの実の息子である。
因みに母親はカレン.ブラックです。

キャスト
トラヴイス ハリー.デイーン.スタントン

ウオルト        デイーン.ストックウエル

ハンター        ハンター.カーソン

ジェーン       ナスターシャ.キンスキー

ーーーーあらすじーーーー

 炎天下のテキサスの砂漠を、
彷徨うように男がひとり歩いていた。

喉が乾いて水を求めて入った、
ガソリンスタンドの売店で、

勝手に冷凍庫を開け、
氷を口にすると同時に男は気を失った。


 ロスアンゼルスで働くウォルトの元に、1本の電話が入った。


4年前に失踪し、とうに死んだと思っていた兄トラヴィスらしき男が、
行倒れて入院しているという内容だった。

ウォルトは兄を迎えに、

テキサスへと向かった。
飛行機とレンタカーを使ってかなりの距離だ。

 トラヴィスは何を聞いてもだんまりで
すぐに逃げ出そうとする。
やっとの思いでロスに息子がいるから一緒に帰ろうと納得させた。
過去のことは一切覚えていないようだが、息子の話には反応を示した。

しかし、飛行機でロスに向かうことは拒否した。

ウォルトは車で、ロスまでの遠い路を連れ帰るしかなかった。

 途切れ途切れに記憶を取り戻すトラヴィス。

通信販売で買ったという土地の写真を

弟に見せる。

それはパリだという。

聞くとテキサス州のパリらしい。

辺鄙な場所だ。

かつて兄弟の両親が愛し合った場所で

トラヴィスが産まれたところだという。


記憶を失ってもトラヴィスは愛する者たちとの生活を望んでいたのだろうか。。。

 ロスではウォルトの妻アンと、
トラヴィスの息子で間もなく8歳になる、
ハンターが待っていた。

トラヴィスの失踪後に、
妻ジェーンが、ハンターを

ウォルト邸の前に置き去りにしたのだそうだ。

それ以降ハンターは、
ウォルトとアンナを両親として育った。

 トラヴィスを実の父親とわかっていながらも
なかなか心を開かないハンター。

ウォルトとアンナが
ーーー幸せだった頃のトラヴィス一家を訪れた際に撮った8mmフィルムのホームムービーの映写ーーをトラヴイスに見せたことがきっかけで、
父と子の距離が縮まっていく。

 アンナは
ハンターを失うことになるのではと恐れた。
それでも、ジェーンから毎月息子宛に送金があることを、トラヴィスに伝える。

彼女が金を振り込んでいる銀行は、テキサス州のヒューストンにあるという。

トラヴイスは妻を探しにいく決心をした。


ウオルトに現金とクレジットカードを借りた。

 トラヴィスは中古のフォードを買った。
ハンターには
同行するかどうか自分で決めろと言った。

ママに会いたいハンターは考えるまでもなく

一緒に行きたいと言った。



今日はジェーンが振り込みに来るはずだからだと
 ヒューストンの銀行前で
彼女が現れるのを待った。

車を運転するジェーンを見付けたのは
ハンターだった。
赤い車にのったジェーンらしき女性を追った。

彼女の後を追っていくと、
ジェーンは 覗き部屋 で働いていた。

客として、部屋に入り彼女を指名した。


覗き部屋とは、客側から女性は見えるが、
向こうから客は見えない。

ハンターに会いたいならXXホテルの1520にいる。

ジェーンがハンターにに会っているのを確認した
トラヴイスは一人また旅に出るのだった。

ーーーーー

 ヴェンダースは
まずは脚本を書いて欲しいとサム.シェパードに依頼した。

 ヴェンダースは、『天国の日々』で観たシェパードの演技を、気に入っていたのだ。

その後何度か話は持ち込まれたがなかなか
具体的なところまで行かずに流れていたようだ。

 その後ふたりでで過ごしていたときに
「砂漠にいきなり現れた記憶喪失の男」

というアイディアが浮かんだらしい。

そしてそれを基に、共同で脚本を書き進めていくことになる。

 はじめは兄弟を軸とした話で、

妻を探し求めるエピソードはあったものの、
妻が見付かるかどうかは、決まっていなかった。

妻を登場させることになって、
作品の骨組みが決まった。

 トラヴィスが失踪する原因として、

色々と案は出たが、

トラヴィスが古いアルバムを頼りに、自分の謎めいた家系を辿るために、あらゆる人を至る所に訪ねていくという話になっていく。

 更にそこからまた、一転、二転。。。

途中から、L.H.キット.カーソンが加わった。


「この映画は、アメリカについて私がずっと語りたいと思ってきたことを描いています」

 ヴェンダースが完成後にそう語った.....

......物語の出発の地として、

シェパードはテキサス州を選んだ。

そこにアメリカを凝縮して、
描こうという提案だった。

ヴェンダースは3カ月掛けてテキサスを旅し、ロケハンを行った。

 主演のトラヴィスには、
ハリー・ディーン・スタントン。

シェパードは全く知らない俳優だったが、
ヴェンダースにとっては
意中のキャスティングだったらしい。

が偶然スタントンとある映画祭で巡り逢って
意気投合したシェパードは
トラヴイスのイメージ通りの役者だと
絶賛して起用したそうです。
 
 トラヴィスの妻のジェーン役には、
ナスターシャ・キンスキー。
デビュー作が、
ヴェンダースの『まわり道』。1974年当時
12歳だった。

めちゃくちゃ可愛かったですねえ。

『テス』のヒットで、
日本でも人気が出て、
「ナタキン」などという略称で呼ばれていた彼女の起用だ。

 彼女とスタントンでは、随分と歳が離れた夫婦という印象になる。

スタントンとの歳の差は
実に35歳。

親子ほど歳が離れた」2人だが、
結果的には作品の展開にはその差が
効果的であったようだ。

ところがいろんなトラブル続きで撮影は行き詰まった。

この作品のクライマックスのシーンだが、

 ヒューストンでジェーンを見つけたトラヴィスが、その後を追うと、彼女がのぞき部屋で働いていることがわかる。

客はマジックミラー越しに彼女の姿が見えるが、
彼女の方からは客が見えない。
電話越しに問いかける客に、彼女が応えるというシステムだ。

一度目は黙って帰るトラヴイス。
ハンターに ママは見つかったの と聞かれ、
ああと答えるトラヴイス。
そしてもう一度彼女を指名して会うのだ。

その中でトラヴィスは、

自らの気持ちにも対峙し、

やがて思いの丈を語ることになる。
そしてジェーンも、
客が失踪した自分の夫だと、気付く…。

 こうして本作は完成。
カンヌ映画祭での最高賞をはじめ、
世界的に高く評価され、ヴエンダースの名は
世界的に知られることとなった。

トラヴィスの失踪の原因が明らかになり、夫婦の、そして家族のこれからが提示される、
覗き部屋でのくだりは、胸がつまりましたし

ここは名場面ですよね。


トラヴィスは、

年が離れた美しいジェーンを愛しすぎて、失踪せざるを得なくなった。

そして残されたジェーンは、我が子を

どうやって育てていいかわからず

手放す他はなかった。

 ーーーー覗き部屋で何人もの男に応じてきたジェーンは、トラヴィスに言う。「どの男の声も…あなただったーーーー
 トラヴィスは、わかった。

まだジェーンのことを愛していることに気づいた。

それも狂おしいほどに。
だからこそ一緒に居るわけには、いかないのだ。

若くて美しいジェーンを愛している。
が、一度壊れてしまったものは元には戻らない。

壊れたものの正体を見つけるために
自分自身を見つめ直してから

母親と子供のところに帰る 道を

選択した......旅立った ということなんでしょうね。

絵が綺麗ですね。そしてギターの音が見事に
マッチして胸にグッと来るものがあります。

特にラストのホテルの窓を見上げるトラヴイスの
足元の緑と朝焼けのような空の暗い青と
オレンジのコントラストの見事なこと。

まさに旅する作家ヴエンダース。
人間と自然と叙情溢れる作品です。
一度は見ておくべき作品でしょうね

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