≪疑惑の影≫・ヒッチコック作品 ②夜・1943年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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   ヒッチコック作品 ②夜 ≪疑惑の影≫
   

 こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。

 

 

1941年に市民ケーンでデビュー
1953年に本作疑惑の影
1944年にガス燈
1948年にジェニーの肖像
1949年に第三の男
1950年に旅愁
1953年にナイアガラ

 

ジョセフ・コットンの出演作品の一部ですが、

 

へんな言い方だが、彼は

 

インパクトの強くない目立たない存在のスターで、オーソン・ウエルズの勧めで

 

デビュー。≪第三の男≫でも、オーソンの悪に惚れるアリダ・バリが

 

振り向いてもくれない地味な男を演じ、

 

≪ガス燈≫でも悪のシャルル・ボワイエの影に隠れてしまい

 

≪旅愁≫でも不倫の恋に身を置くもあまりインパクトなし。

 

≪ナイアガラ≫ではあっけなく殺されてしまい・・・・・

 

その存在は当時のファンからすれば大きかったようですが

 

作品から受ける印象はそんな感じの方である。

 

 

が、この≪疑惑の影≫ではその地味さが今度は逆に執拗な不気味さで

 

作品の成功に一役買ったように思います。

 

 

奇しくもヒロインのテレサ・ライトも1941年のデビュー

 

作品は偽りの花園ですが俳優としてはテレサのほうが少し先輩扱いのよう。

 

 

ミニヴアー夫人、打撃王、疑惑の影と続けざまにヒット作品に出演するという

 

ラッキーな女優さんで

 

≪ミニヴアー夫人≫も、≪打撃王≫も

 

≪疑惑の影≫もそして≪我らの生涯の最良の年≫でも

 

みんな そう あの頃のそうですアメリカのよき時代のかわいらしい、誰もが

 

好きになるそんな女性の役でそこに演技と言うより、地で行くような自然体が

 

テレサの魅力です。

 

≪疑惑の影≫でも育ちの良い利発なまだ少女の面影を残すかわいらしい

 

女性を演じています。

 

ヒッチコックは金髪の美人がお好きで殆どの作品には金髪美人が登場するが

 

テレサは栗毛色の髪。だがインテリジェンスの点で合格かな?

 

 

そう、テレサ・ライトは他の作品のヒロインとは

 

少し違う雰囲気なのである。

 

≪疑惑の影≫は平和な中流家庭のホームドラマ的要素をたっぷりと

 

盛り込み、そんな中に不気味に悪賢いオンナたらしの男が入り込んで

 

両親に気づかれないように配慮する娘の気持ちを巧みに利用する。

 

犯罪を犯して逃げてきた母の弟である男と

 

 

娘チャーリーの静かな闘いが描かれていて

 

珍しいシチュエーションの作品である。

 

   キャスト

 

 

チャーリー        テレサ・ライト 
チャールズ叔父      ジョゼフ・コットン 
グラハム         マクドナルド・ケイリー 
父ジョセフ        ヘンリー・トラヴァース 
母エマ          パトリシア・コリンジ 
ハーブ          ヒューム・クローニン 

 

☆  タイトルバックに流れる曲は♪メリー・ウイドウ♪

 

ワルツを踊っている何組ものイメージと共に・・・・

 

 

    ストーリー

 

ニューヨークの下町、下宿屋のベッドに横たわる一見紳士風の男。

 

足元にはお札が散らばっている・・・

 

大家の夫人がノックする。

 

友人と名乗る二人の男が尋ねてきたが言われたとおり留守だと答えたが

 

またやってくるだろうと言った。

 

男は窓から覗いて二人の男が張り込んでいるのを見た。

 

そして言った。”何のしっぽもつかめやしないさ”そして表へでると二人の前を

 

平然と通り越し、つける二人をまき、荒んだビル街の中に消えた。

 

葉巻をくゆらせながら、ビルの屋上から下を見下ろした。あざ笑うように。

 

そして彼は公衆電話から郵便局へかけ、カリフォルニアの姉に電報を打った。

 

そちらに滞在したいので木曜日にはそちらに着くだろう。姪のチャーリーに

 

よろしくと。

 

ここでこの男は自分の都合ばかりを考える世間を舐めた

 

ずるがしこい男であることが観客にはわかった。

 

カリフォルニア州のサンタ・ローザの町に住むニュートン一家は

 

平和な家庭だった。

 

長女のチャーリーは家庭をもっといきいきとした雰囲気にしたい。

 

平和だが退屈で退屈で何かをもてあましたような毎日がたまらなかった。

 

寝食を共にするだけの家族、バラバラの家族に思えて仕方がなかった。

 

彼女は思いついた。

 

洗練された母の弟のチャーリー叔父に来てもらいたいと。

 

彼なら家の中に生き生きとした風を送り込んでくれるに違いない。

 

チャーリーは叔父チャールズに憧れていた。

 

以心伝心とはあるもので叔父に電報を打とうと思った矢先に

 

当の叔父がやって来るという。彼女は飛び上がって喜んだ。

 

父は真面目な銀行員、

 

 

母はにぎやかな料理好きの典型的な主婦

 

妹アンは生意気で本ばかり読んでいてどきっとするような視点で

 

ものを見るところがある。

 

弟のジョージは楽天家。

 

この家に夕飯時に決まって来訪する銀行の後輩でハーブ君がいる。

 

父と彼は推理小説愛好家・・・というよりも殺し方、殺人の方法をいつも

 

考えていて、相手をやり負かそうと知恵比べをする趣味で

 

ふたりは家族といつも別世界にいる。

 

が、である。現実に悩んでいる彼と彼女にはぞくっとくることもあるのである。

 

 

妹アンはただただ読書の邪魔をされたくない。

 

さて、チャーリーは頭が良く大学もいい成績で卒業するなど

 

一家は地元でも評判の愛される家庭なのである。

 

当のチャーリー叔父は列車でやってきた。

 

モクモクと上がる黒い煙は悪魔の到来を告げるように・・

 

列車の中でも人に顔を見られないように

 

注意深くしていて、とても怪しい挙動である。

 

迎えに出たチャーリーが列車を降りた彼が一瞬であったが


完全にびっこを引いて病人に見え、違和感を感じた最初であった。

 


父とアンとジョージは極めて冷静に観察しているが

 

母とチャーリーは悦びのあまり舞い上がっていた。

 

特に母にとってはチャールズは末の弟で早くに別れていて数十年ぶりの

 

再会であったのでうれしさもひとしおであった。

 

彼を歓待した。

 

土産は父には腕時計、母にはミンクの襟巻き、当のチャーリーには

 

エメラルドの指輪、身分不相応な贈り物に惑いつつも・・・・

 

指輪には薄くだが彫った誰だかのイニシャルの痕跡があった。

 

食卓を囲んでいるときにメリー・ウイドウの一節を母親が口ずさみます。

 

それから娘が歌い、みんなが歌い・・この曲の題名はなんだっけ??

 

なぜか叔父はごまかそうとして♪青くドナウ・・だとしかし

 

娘はちがうちがうメリー・・・と言ったとたんに叔父はグラスをわざと

 

ひっくり返して水をこぼしはぐらかす。

 

未亡人・・ウイドウという言葉を言わせないために。

 

朝食の前に広げた新聞に家族に見せたくない記事を見つけたのか

 

チャールズ叔父はその紙面に小細工をしてそこだけ

 

抜いてポケットに仕舞った。

 

が、足りない紙面がポケットに無造作に突っ込んであるのを見つけた

 

チャーリー。二度目の不信感だった。

 

 

そして、チャールズ叔父は父ジョセフの勤める銀行に口座を開設し

 

4万ドルを預けた。

 

寄付もしたようで街では彼は講演を頼まれるほどのイイ人となった。

 

それからのある日、

 

ジャック・グラハムとサンダースという二人の男がニュートン家を訪れて来た。

 

彼等は政府の調査員として米国の中流家庭の調査に来たとのふれこみだった。

 

チャーリー叔父は彼等が刑事であろうことを疑い、二人に会わないよう

 

避けていた。

 

ところが母は模範家庭の取材と言うことですっかりその気になり

 

勝手に引き受け事を運んだからややこしくなった。

 

うっかりしたところを写真に撮られたので怒ってフィルムを奪ったが、

 

そのただならぬ様子に傍らにいたチャーリーは怪しんだ。

 

三度目の不信感。

 

その夜、グラハムに好感を持ったチャーリーは誘われた食事に付き合った。

 

その時に彼等が、叔父をある殺人事件の容疑者として、

 

その確証を握りに東部の警察から派遣されて来た刑事であると告白された。

 

協力を求められたが、叔父を信用しているチャーリーは、

 

彼の申し出を固く断った。

 

だが叔父が破り棄てた新聞の記事にも疑いを持っていた彼女は、

 

早速図書館へ行き当日の新聞の綴込みを調べた。

 

 

金持ちの未亡人を次々に殺害して金を奪った犯人が西部へ逃亡した形跡があり、

 

二人の容疑者を追っているとあった。

 

そして最後の被害者の名前が、

 

叔父から土産にもらった指輪の裏に刻まれている頭文字と符合しているので、

 

もはや叔父の犯罪を認めないではいられなかった。

 

チャーリーは家族の名誉を守るために、

 

叔父が捕縛される前に家からいやこの街から出てもらおうとと決心した。

 

ここ地元で逮捕されてはならないのだった。

 

相変わらずにメリー・ウイドウを口ずさむ母に耳を覆いたくなるチャーリー。

 

 

叔父に対して自分が総てを知っていると匂わせたり、

 

証拠となるべき指輪を示して退去を迫ったが、

 

叔父は平気な顔で滞在を続けるのであった。

 

そして逆に自分の身の安全を計るために、

 

事実を知っているチャーリーを殺そうとして、

 

外階段の手すりに細工したりまた、

 

排気ガズを充満させたガレージに

 

彼女を閉じこめたが、

 

幸いにもやって来たハーブに発見され彼女は命拾いをした。

 

やがて叔父は急に自ら出発すると言い出した。

 

彼は母の婦人会の仲間で金持ちの未亡人と親しくなり、

 

密かに他所へ行く予定だったのだ。

 

出発の日叔父を見送りに列車内に入ったチャーリーの手を

 

叔父はしっかり握り列車から降ろそうとしなかった。

 

列車が動き出しても離さず、”君は知りすぎた、死んでもらわねばならない”と

 

彼女を車から突落して殺そうと計った。

 

しかし列車から落ちて、すり抜けるようにやって来た他の列車に

 

轢かれたのは叔父チャールズのほうだった。

 

サンタ・ローザの教会で、彼の葬式が行なわれた時、

 

チャーリーとグラハムは二人だけが知っている事実を胸に秘めて参列していた。

 

事件を知るものはいない。ましてチャールズ叔父が殺人犯だとは今は

 

誰も知らない。奥からは叔父を称える声が聞こえてきた。

 

 

 

この作品は最初から何か秘密めいた紳士然とした男の登場ですぐに

 

殺人事件の犯人とわかる。そしてああ今から平和な家庭に

 

この男が入り込んで厄介ごとが巻き起こることを匂わせるオープニングだ。

 

そして殺人の場面はない。

 

家族の側にいて、明るい話題を投げながら叔父と姪だけにわかる動作、表情

 

会話でストーリーは進む。

 

こんな家庭を利用してうまく住み込んで逃げおおせようと舐めてかかった

 

チャールズだが、どっこい姪のチャーリーはずば抜けたおりこうさんだったのが

 

叔父の計算違い。

 

それとやさしい家族思いの彼女が家族に知られないように苦しみながらも

 

叔父に自分の意志を知らせ抜こうとするところがなんともいじらしい・

 

だから観客はハラハラするのだが。

 

 

随所に散りばめられた伏線、

 

世の中を知り尽くし、嘗め尽くした男と

 

世間知らずだが、物事の骨格を見過ごさないチャーリーとの静かな闘いが

 

この作品の面白さだろう。

 

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