≪雲切獄門帳≫・銀幕のスター男優 ⑰・東映城のもう一人の御大市川右太衛門さん  | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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     ≪雲切獄門帳≫

 

原作は吉川英治の(雲霧閻魔帳)

 

困った人たちを黙って見逃せねえ!

 

そのうえ持って生れた怪力。

 

義賊を働く男が、たったひとりのわが娘をたずねて、旅から旅、

 

苦闘につぐ苦闘を重ねる二十年を描いた波瀾万丈の人情活劇で珠玉の名品である。

 

こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。

 

今夜は雲切さんの外伝みたいな作品をとりあげます。

 

この作品は雲霧でなくて雲切なんです。

 

雲切仁左衛門   市川右太衛門 

 

高梨小藤次    笠智衆 

 

高梨外記     沢村精四郎 

 

おこう      三島ゆり子 

 

ゆき       本間千代子 

 

佐渡幸      西村晃 

 

お竜       浦里はるみ 

 

藤田兵部     有馬宏治 

 

藤田市之進    河原崎長一郎 

 

信乃       鳳八千代 

 

岡っ引き勘蔵   原健策 

 

夜叉権       吉田義夫 

 

大吉        堺駿二 

 

   お話

 

義賊雲切仁左衛門が、

 

質屋の佐渡幸の家でこそ泥たちを前に大見得を切った。

 

どんな条件でもどんなものでも盗めると。

 

それではと佐渡幸は江戸城にある洋時計を盗めといった。

 

忍びこんで盗んだものの時計の調べが逃げる屋根裏で鳴り響き

 

仕方なく時計をそこに捨て庭に飛び出たところをお縄になってしまった。

 

捕われたのは嘉永五年秋のことである。

 

吟味与力高梨小藤次から市中引き回しの上磔獄門を言い渡された雲切は

 

吟味の途中で、お白州の隣で邸の普請が行なわれていて梁が倒れ下敷きなった

 

老大工を助けるため縄を解いてもらった。

 

男たちが何人もかかって持ち上げることが出来ない梁を、

 

仁左衛門は並はずれの怪力で救った。

 

雲切は隣牢の大吉から、

 

因業金貸夜叉権の娘おこうが父無し子を生んだという話を聞いた。

 

二年前に夜叉権の家に押入った時、

 

夜叉権には当て身で気絶させたが、娘おこうが声を上げて叫ぶため

 

黙らせるためにはずみでおこうに手をつけてしまった。

 

そのおこうが子を産んでいたのだった。

 

夜叉権は産後の肥立ちの悪いおこうを赤子ともども蔵に閉じ込めるという

 

冷たい仕打ちをしているという。

 

我が子見たさに牢番を買収し脱獄、

 

夜叉権の家の蔵に忍び入った雲切が会ったのは冷たくなっていたおこうだった。

 

 

我が子ゆきを奪い質屋の佐渡幸に預けた金50両を貰いに行ったが

 

やるのやらないので揉めているうちに

 

小藤次が召し取りに追ってきた・

 

仁左衛門は何とか追っ手を逃れゆきをつれて薬売りに身をやつし

 

江戸を離れた。

 

旅の途中、一ツ橋家の家臣だという藤田兵部が連れの息子市之進が腹を壊して

 

苦しんでいるのを助けた。その時に、市之進の右手に、娘ゆきの右手と同じようなホクロがある事を

 

知ってその奇縁に驚いた。

 

このほくろは一生の縁があるという兵部の言葉に

 

またいつかどこかで会ううかもしれないと藤田親子と別れた。

 

雲切を追う小藤次と息子の外記。

 

雲切を逃したと言うことでお役御免となっていた。

 

出会った仁左衛門と争ううちに

 

ゆきと外記は、谷底へ転落した。

 

ゆきは偶然谷底にいた佐渡幸に拾われた。

 

佐渡幸もあれから悪辣な商売でお縄になり二年の島暮らしを終え、江戸ところ払い

 

を余儀なくされ夫婦であちこちをさまよっていた。

 

それから九年、

 

別れ別れになった親子はひょんなところで出会うことになる。

 

仁左衛門は旅籠へ急いでいると火事で騒ぎになっているところに出くわし

 

逃げ遅れた11歳の娘を救う。

 

その時に目をやられ、幸い半月もすれば治るだろうということで

 

焼けた旅籠の女将信乃共々近江屋という旅籠に厄介になった。

 

外から辻占いの声ガ聞こえてくる。

 

それが娘ゆきであることを知る由もない。

 

佐渡幸に拾われたゆきはこき使われ博打に使うお金を稼がせているのだった。

 

そしてここにいる岡っ引きの勘蔵が信乃に惚れていて焼けた旅籠を立て直す

 

金を近江屋を通して貸していた。むろん信乃はそんなことは知らなかったが

 

下心のある勘蔵のやり方に、仁左衛門が事を明らかにし、信乃を救った。

 

藤田親子が日光へ向かう途中でこの旅籠に寄り

 

ゆきに偶然会った。ほくろで気づいたのだった。

 

ゆきを連れて親を訪ねるとそこに居た親は佐渡幸であり、

 

不審に思った藤田は佐渡幸を問い詰め白状させた。

 

藤田は二百両の金を佐渡幸に渡しゆきを貰い受けた。

 

佐渡幸は逗留している盲目の男が仁左衛門だと言うことに気づいていて

 

それを勘蔵に密告した。

 

捕り方に囲まれた仁左衛門は争っているうちに取れた眼帯の向こうに

 

祭りの提灯の灯りがはっきりと見えるのだった。

 

仁左衛門はなんとか逃げ切った。

 

おゆきは江戸へ向かう途中でまたもや佐渡幸の企みで

 

掴まってしまった。

 

それからさらに七年後、

 

慶応四年、鳥羽伏見の戦いで幕軍はー敗地にまみれた。

 

仁左衛門はおこうの墓の前にいた。

 

年老いた小藤次が寺男に訊ねた。

 

今のお方はどなたか?と。

 

今は春木屋という大店の主となっていた。

 

鉄砲洲の外人居留地に納める品物を一手に扱っている大店のご主人様ですと

 

寺男は答えた。今でいう貿易商ですな。

 

その住まいはハイカラな洋館で中のしつらいも凝ったものだ。

 

そこへ何も知らずに忍び込んだ大吉であったが、

 

刀を突きつけて気づいた仁左衛門は大吉にやさしい言葉をかけた。

 

今は罪滅ぼしに年寄りや困っている人々を拾い上げて面倒見ているという。

 

仁左衛門は大吉からおゆきが佐渡幸によって芸者に売られたということを

 

聞かされた。

 

おゆきは花香と名乗っていた。

 

そしてゆきは、幕府を護ろうとして、傷を負って倒れている

 

市之進と再会し看病するという運命の奇縁に相遇した。

 

小藤次はいまだ仁左衛門を追っていて春木屋を訪ねた。

 

シラをきって追い返したが仁左衛門は遠くから頭を下げるのだった。

 

 

市之進の鉄砲傷は化膿して破傷風になってしまった。

 

薬をもとめに居留地御用達商人春木屋へ行くゆきであった。

 

手のほくろにゆきと気づいたが名乗ることはしなかった仁左衛門。

 

 

この頃江戸市中は官軍が荷車の下敷になった佐渡幸を

 

雲霧は迷いに迷ってもちまえの怪力で救った。

 

それを眺めていた小藤次の目に人間の善意と涙が光った。

 

仁左衛門は小藤次に会う前にゆきを尋ね親娘の名乗りをあげ抱き合うのだった。

 

自首して出た雲切に小藤次はもう仁左衛門を許していると告げた。

 

 

雲切は水戸へ向かうゆきと市之進のあとを追うのだった。

 

親子の情愛を描いた見応えのある作品です。

 

ゆき役はあの当時、吉永小百合さんと人気を二分していた

 

本間千代子さん、懐かしいですね。

 

 

東映城の御大のひとり市川右太衛門さんですが多分主役としての作品は

 

このあたりが最後ではないでしょうか。

 

 

旗本退屈男の華やかな時代劇。

 

知恵蔵さんの渋さと比ぶれば市川御大はやはり華やかさでしょう。

 

この作品は吉川英治の原作ですが

 

宮本武蔵や鳴門秘帖などと同じロードムービーです。

 

佐々木康監督は親子の細かい情愛を丁寧に描き、

 

悪人は悪人の非道を容赦なく描いた。

 

見所は盲目になった仁左衛門が捕り方に囲まれ暴れまくる殺陣のシーンでしょう。

 

東映映画はチャンバラ映画という概念は捨てました。

 

こんないい映画があったんですねえ・

 

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