≪赤線地帯≫・・・娼婦群像劇 ・溝口健二監督 ・1956年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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       (赤線地帯)

 

 

こんばんは。いつもお立ち寄りいただきましてありがとうございます。

 

若尾文子さん、、初々しい(青空娘)から一転して

 

今夜は赤線地帯・・・・東京の色街・吉原で働く売春婦。

 

この作品は

 

溝口健二監督が1923年から活躍して、

 

本作が遺作となった1956年公開作品である。

 

 

何十年ぶりに本作を鑑賞しましたが、

 

主役は誰ということなく、群像劇でもあり、グランドホテル形式の構成を

 

思い起こしました。

 

いろんな映画の構成やキャストの個性、いろんなものが入れ込まれている中で

 

溝口監督の特有の女性劇となっている。

 

売春防止法制定、1956年5月24日前後の吉原が舞台。登場する会話が

 

とてもリアルである。

 

カメラは宮川一夫

 

音楽は黛 敏郎

 

吉原・・・

 

江戸時代に江戸郊外に作られた、国が認める遊女屋が集まる遊廓(吉原遊廓)。

 

   キャスト


若尾文子     やすみ
木暮実千代    ハナエ
三益愛子     ゆめ子
京 マチ子    ミッキー
菅原謙二     栄公
川上康子     しづ子
進藤英太郎    田谷倉蔵
見明凡太朗    巡査・野々村
田中春男     より江の客  
沢村貞子     田谷辰子倉蔵の妻
加東大介     宮崎行雄
多々良純     やすみの客
十朱久雄     ニコニコ堂主人でやすみの客)
町田博子     より江
浦辺粂子     おたね 夢の里の下働き
小川虎之助    ミッキーの父で貿易商のオーナー
高堂国典     ゆめ子の義父・門脇敬作
三好栄子     ゆめ子の義母・門脇さく
入江洋祐     ゆめ子の息子・修一

 

 

   ストーリー

 

江戸時代から続く花の吉原。

 

何度も大火にあうがその度に蘇り、1957年に幕を降ろすまで

 

いろんなドラマを生んだだろうそんな

 

街の一角にある今は特殊飲食店といわれている店のひとつ

 

(夢の里)があった。

 

一人息子といつか一緒に住める!!と夢見るゆめ子、

 

汚職で入獄した父の保釈金のために身を落すきっかけとなった今は

 

一番の稼ぎ手となったやすみ、

 

失業している病弱な夫と赤子を抱えて、家計を支えるために働くもハナエ、

 

借金が返し終えたら、田舎に帰って所帯を持ちたいと願っているより江。

 

(夢の里)の経営者田谷倉蔵と妻の女将は売春禁止法案が国会を通過すれば

 

店をたたまなければならず気が気ではなかった。

 

主人田谷は、法案が通れば娼婦は監獄へ入れられるといって、

 

女たちにお前たちの味方は自分しかいないと言い聞かせなんとか

 

毎日を看過していた・

 

そんな折、出入りの栄公といお兄さんがまさにバンプ女優のような

 

粋のいいミッキーという女を連れてきた。

 

 

あっけらかんとした性格で他の娼婦の常連客に言い寄られると

 

その道の仁義もなにもなく罵倒されてもケロっとしているのだった。

 

一番の稼ぎ手のやすみはオトコからお金を巻き上げるのが得意で

 

稼いだお金を溜め込むほかみんなに利息を取って貸していた。

 

客の一人で出入りの布団屋ニコニコ堂の主人も店の売上金を惜しげもなく

 

やすみにあてがっていた。

 

正直にぞっこんになる客も居れば、逆に女たちを騙して平気な客も居て

 

どちらもどちら・・たぬきと狐の化かしあいだ。

 

新聞を読んで前借が無効になったと皆から知らされたより江。

 

押入れの中から出してきた大風呂敷包みの中身は

 

将来所帯を持つために揃えた世帯道具が満杯だった。

 

そのなじみ客の下駄屋の許へ行くように皆から勧められ、助けられて

 

飛び出していった。

 

それぞれがお餞別と言ってくれる品はそれぞれの女の個性が現れていた。

 

やすえの餞別は500円入金された貯金通帳でより江の名義で

 

作ってやったものだった。

 

いつまで続くかね・・・・・?とつぶやくミッキー・

 

ゆめ子の息子修一が訪ねてきたが若作りの派手な格好を息子に見せられないと

 

会わなかった。

 

ある雨の降る日、しず子という下働きの少女が 夢の里 に入って来た。

 

いずれは客を取らされるのだろうが、興味深く皆の動向を見つめていた。

 

ニコニコ堂が夜逃げをしたらしい。

 

やすみはにやっと笑って瞬間何かを思い浮かべていた。

 

もう一人のやすえの客で炭屋の青木はやすえを身請けして所帯を持ちたい。

 

借金が15万円のこっているというやすえの言葉を信じて

 

数日後用意してきたがやすえはうそをついてまた10万円という額を

 

無心した。

 

 

男は金を用意してきて今から新婚旅行へ行くから用意しろと言う。

 

だがその気のないやすえはとうとう本音を吐きオトコを怒らせ

 

首を絞められ危うく殺されかけた。

 

男は会社の金を横領してもう高飛びするしかなかったのだった。

 

こうして少なくとも二人の男の人生を狂わせてしまったやすえだが・・・・

 

 

ミッキーに客が来た。

 

会うとそれは神戸からやってきた父親だった・

 

貿易商を営む富豪であった。

 

が、その昔女遊びで母親を哀しませ、

 

ぐれたミッキーは家に寄り付かなかったのだった。

 

一年前の母の死の報せと再婚の話を同時に聞かされ、まして

 

兄妹の縁談のため娼婦を辞めて家に帰ってくれと迎えに来たのだったが、

 

はっきりと父親に断ったのだった。

 

 

ゆめ子はよる年波で年増の娼婦も引退のときが来ているのだが

 

お金もなく身動きとれず田舎へ息子修一を訪ねるが

 

修一は東京で働いていると爺さまの話。

 

東京の工場へ修一を訪ねて一緒に暮らそうというが

 

息子にしてみれば産むだけ産んで放りっぱなしだった母と一緒に暮らす気

 

なんぞありはしない。

 

これっきりにしてくれ電話もしてくれるなと冷たく突き放されたのだった。

 

より江がよれよれになって帰ってきた。

 

嫁に・・とは名ばかりで女中よりもひどい扱いをされ、疲れた・・・と

 

帰ってきた。意外に早かったわねとミッキーやハナ江は気持ちよく迎えた。

 

 

ミッキーのおごりで、無心に天丼をたべるしず子。

 

九州の飯塚から出てきたというまだ十代の娘。

 

炭鉱の落盤事故で怪我をして入院した父親へ仕送るするために娼婦の道を

 

選んだという。ゆめ子にも

 

食事をしようと誘うガ様子が変だ。

 

突然、修一の名を呼びながら唄いだした。発狂したのだ。

 

ゆめ子が精神病院に送られる頃、ラジオは法案の四度目の決議流れを報じていた。

 

そして今日も夢の里には、何ごともなかったように、

 

ネオンの下で客呼びの声が聞える。やすみの姿が見えない。

 

彼女のなじみ客だった貸ぶとん屋ニコニコ堂主人の夜逃の後の店を

 

買いとって女主人に収まってかいがいしく働いていた。

 

夢の里への付け届けや挨拶にもそつがなく繁盛の兆しだ。

 

お金のご用立ても致しますのでと皆にも付け届けをしていそいそ帰っていった。

 

そしてやすみに代って、下働きだったしず子が、

 

女将に化粧を念入りにしてもらっていた。

 

若い子に化粧をするのは気持ちいいねえ・・と女将は上機嫌だ。

 

客に声をかけることの出来ないしず子にミッキーは私を見てなさい!

 

としず子の世話を焼くのだった・

 

威勢よく客呼びするミッキーの蔭で

 

初店の盛装をこらして、しず子は柱の陰から半分顔を覗かせ

 

指で”ちょっと”とか細い声を発するのだった・

 

娼婦のひとりひとりが抱える問題と人生ドラマを描きながらも

 

この時代の社会情勢をリアルに描き、

 

娼婦ひとりひとりの個性も面白くまたそれを演ずる女優さんも

 

適材適所の役どころでさすが・・古さを感じない。

 

ゆめ子が老いた娼婦を恥じながらも弱さを見せ始め、狂っていく様は

 

米映画の(欲望という名の電車)を髣髴とさせるし、

 

ラストのしず子の娼婦デビューシーンは

 

米映画の(イヴの総て)のラストシーンと重なるし。

 

毎夜お金の勘定をして札束を大きな缶に入れ抱いて寝るというやすえは

 

  映画(がめつい奴)のお鹿婆さんを連想させる・

 

ちなみにこのお鹿ばあさんは三益愛子が演じていたと記憶するが。

 

ともあれこの作品には意地悪な人物は出てこない。

 

同監督の(祇園囃子)も木暮さんと若尾さんの祇園の中での様子がリアルに描かれ

 

優しい木暮さん、愛らしい若尾さん

 

どちらも監督は同情するわけでもなくありのままを描いている。

 

 

こうやって見ていくと松竹大船映画の女性作品は品良くそれなりの

 

価値観は当然持っているが綺麗な作品が多い。

 

大映は女性の汚さ、貪欲さ、ずるさなどを飾ることなく描いた作品が多いのに

 

気づく。

 

京さん若尾さんなどの作品は

 

そういったものも多いが見ていて頷けるから見事だ。

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