『お嬢さん乾杯!』・原節子さん、関口宏さんの父君(佐野周二さん④)と共演作・1949年 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

ご訪問ありがとうございます。
懐かしい名画、最近の気になる映画のことを

日記形式で書いています。

戦前のフランス映画が大好きです。

あなたはどんな映画がお好みですか??

 

(お嬢さん乾杯!)

 

こんばんは。

 

いつもご訪問いただきましてありがとうございます。

 

さて、銀幕の女優、34~③ 原節子さんですが、

 

今夜は共演の佐野周二さん④も

 

一緒にスポットを充ててみましょう。

 

いつも重くて暗い作品が多い木下恵介作品。

 

が、今日紹介する<お嬢さん乾杯>は、

 

お腹の底から笑えて、戦後のご時世に

 

元気をばら撒いた作品。1949年度作品

 

 

 出演は

 

戦後、銀座裏あたりで、自動車修理工場を

 

経営する羽振りのいい男に佐野周二。

 

 学習院出のもと華族のお嬢さんに 原 節子。

 

 若い修理工に 佐田啓二。

 

 歯切れのいい東京弁(?)を操る佐野がざあーます言葉の

 

原節子とお見合いをして目出度くゴールインするまでを

 

 ユーモラスに、

 

そして、見合いから始まった、当時としては、

 

 恋愛の新しいパターンを、

 

 二人の芸達者な演技が笑わせるというちょっと

 

面白い作品です。

 

なんでもないストーリーの中に時代とマッチした

 

 センスが光り、当時は大ヒットした作品です。

 

 

    ストーリー

 

 自動車修理工場の経営者佐野のところに見合い話が持ち込まれる。

 

 相手は元華族の学習院出でのお嬢さん。

 

 身分が違うと彼は一旦は断るが、内心ウキウキ。

 

いつも行くカフェのマダムは姉さん代わりのようなご婦人である。

 

そこで見合いをすることになった。

 

 落ち着かない彼に、マダムは落ち着き払ってからかう。

 

 今更、羽織はかまでもあるまいと、作業着で来たが、

 

マダムはせめて背広ぐらい着なさいよという。

 

イスに座って待つが、落ち着かない。

 

 壁に飾ってある裸婦の絵を外す佐野。

 

お嬢さんはやってきた。

 

まあ飛び切りの眩しいほどの美人である。

 

 原節子はうつむいてまともに顔を見ない。

 

 佐野もお嬢さんも、うつむいて

 

紹介者にばかり話し掛ける。

 

 家に帰った佐野はうれしいのとやるせないのとで

 

 ギターを奏で夢見ごこち。

 

つまり、一目ぼれしたが、あまりの美しいお嬢さんに、

 

どうせだめだとため息をつく。

 

 弟のように可愛がっている修理工の佐田に

 

”俺は生まれてはじめてみたよ。

 

まるで天上の美女だ。”

 

 ”そんなに美人なのか??”

 

 ”俺はもう生きているのが嫌になっちまった。

 

     世界が違うよ。女房になんてバチガ当るよ.”

 

紹介者がやってきた。

 

”どうだ?”

 

 ”どうせ断られるに決まってるさ”

 

 ”先方に聞いてみなくちゃわからんさ”

 

佐田には水商売の恋人がいて結婚するというが、

 

 佐野は商売が気に入らんと反対している。

 

お嬢さんのお宅からお付き合いをするという返事がきて、

 

デイトをすることに。

 

 嬉しくてオートバイで街をぐるぐる乗り回し、弟分を乗せ、

 

また一周。ルンルン気分の佐野。

 

 焼け跡から立ち直ろうとする街の風景がたっぷりと映されますね。

 

さて、マダムのところへ。

 

”おめでとう"と言う言葉に、

 

”おれはまだ、返事しちゃあいないんだぜ。”

 

 ”でも、おかしな話だなあ、どうして俺みたいなものに

 

O.Kしたんだろなあ”

 

かくして、お邸に伺うことに...

 

そしてお邸には、

 

 祖父夫婦、両親と兄夫婦、その子供と姉とぞろぞろと...。

 

”おじちゃま、いらっしゃい”と。子供たち。

 

”やすこの母でございます、やす子の姉でございます”と

 

 ぞろぞろとご丁寧な挨拶でどうも、テンポがあわない。

 

 祖父夫妻はなぜか沈んでいる。

 

 結局、没落華族で、羽振りの良い佐野さんに白羽の矢が

 

立ったのであろうか?

 

 庶民の男にお嬢さんを嫁がせるのが忍びないようだ。

 

お客様にピアノを弾いて差し上げたらと祖母は言ったが、

 

もうここにはピアノもない。

 

 金目のものはすべて売られてしまっている・

 

 お嬢さんは卑屈になるでもないが、

 

はっきりとしない。

 

デート...

 

 

お嬢さんには以前、恋人が居たらしいが、戦死したらしい。

 

 恐らく教養もあった相手だろう。

 

 佐野には 商売をこれまでに盛り上げた手腕はあるが

 

教養というようなものには縁が遠かった。

 

だが、気風だけはだれにも負けない。

 

 江戸っ子弁丸出しの佐野と山の手の、、というより

 

 ご華族様の話し方が奇妙な取りあわせでおかしく、笑わせるのである。

 

 原さんも 尾結構、お嬢サンなのにドジで

 

 デートの後で送ってもらった佐野の前で、

 

 門の階段に上がり、裏門を押すが開かない。

 

 身体ごとどーんと押して入って蹴つまづいて転んだ。

 

    ”アイタッ..!”

 

すると姉が向こうから開けようとしていて、

 

お姉さまは 痛いほどおでこを打ってしまった。

 

”まあ、どうなさったの?”とお嬢さん。

 

”どうなさたって..あなた...!”とあねはおでこを押さえて..

 

思わず吹き出しました!

 

そういった原さんのコメデイー振りがとても新鮮で

 

面白いのです。

 

やはり、察したとおり邸は抵当に入っていた。

 

まあはっきり言えば、僕との結婚はそういうことだったのか。

 

どうもおかしいと思った。

 

お嬢さんはお金のためでなく、僕を好きになって結婚してくれるなら

 

百万や二百万の金ぐらい、、、

 

 邸を取り戻す事ぐらい何でもありません

 

 と交際を続けることにした。

 

お嬢さんはお芝居も音楽会でも居眠りをしている佐野に

 

呆れ顔だったが、

 

バレーを観にいくと、佐野はぽろぽろと涙を流しているのを見て、ちょっとこころ惹かれる。

 

そっと見るお嬢さん。

 

 今度はボクシング,あのころは拳闘ですか。

 

お嬢さんはわれを忘れて握りこぶしでフックだパンチだと

 

一生懸命!!

 

びっくりしてみる佐野に、ハッと気付いてうつむく原さんが

 

可愛いんですよ。

 

 最初は抵抗があったが、彼の生活環境に

 

次第に親しみを感じ、段々と佐野に惹かれていく。

 

お誕生日に邸に招かれる前に、彼はお嬢さんに

 

 ピアノをプレゼントした。

 

 楽しそうに弾くお嬢さんに満足した。

 

お礼にーー土佐節ーーを歌う佐野に家族はびっくりするし、

 

おじょうさんは恥ずかしい思いをするが、お友達は

 

 すっかり喜んだ。

 

そしてそういった人情や下町の気風に次第に馴染んでいく

 

 お嬢さんでした.

 

”僕は死ぬほどお嬢さんを愛してしまった..!

 

”申し訳ございません。あたくしの努力が足りないんですわ!”

 

 ”あなたは努力しないと僕を愛してくれないんですか!と。

 

まるで次元の違う言葉が返ってくる....

 

が...土佐のーーー高知の...のうたが

 

頭から離れないお嬢さん。。

 

お嬢さんの気持ちがはっきりとしない。

 

やけになった佐野が田舎へ帰ることになるが、

 

もう一度会おうとカフェにやってきたお嬢さんに、

 

マダムは

 

 ”あんな良い男はほかを捜したっていやしないよ。

 

   そりゃあ、あなた方みたいに

 

    お上品じゃないかもしれませんよ。

 

デモね,男の値打ちは心いき でしょうが。

 

 華族さまだかなんだか知らないけど、

 

     あんたは馬鹿だよ!"と言う言葉に

 

  お嬢さんは、
            

        ”あたくし,あの方が好きです。”

 

    ”そんなお上品じゃ惚れた事にはならないよ。
 

惚れたと言ってなぜ、強く抱きしめてやらないんですよ。”

 

   ”あのー、あのー、あたくし、惚れております!”

 

といって、田舎へ帰る佐野を追って上野駅へと急ぐ

 

 お嬢さんでありました・

 

 もう、とっても温かくなるし、木下恵介独特の

 

 ユーモアは(破れ太鼓)という作品でお分かりと

 

思います。

 

 出てくる善意の人たち、

 

 華族であろうがなんであろうが、同じ人間だ、

 

うぶだがまっすぐな佐野はお嬢さんをやすこさんとは

 

決して言わずに”お嬢さん,お嬢さん!”というところが

 

 とてもほほえましい。

 

とにかく原さん扮するお嬢さんの顔の表情の変化が楽しい作品。

 

”エッ?  まああー、ウフ!”と七変化の表情。

 

ひとりピアノを弾くお嬢さん    ...♪土佐ーーの高知の...♪

 

可愛いんですよね。

 

( 晩春)や(東京物語)と違ったユーモラス(本人は真面目  

 

と思っている役)な面をうんとさらけだした...

 

ヒットしたのはそういったお嬢さんにあこがれ、

 

 親しみを感じた観客が多かったということにもなろう。

 

★..お嬢さんが言った言葉が印象的。

 

 

 

     ”わたくし..私一人のことでしたら、たとえどんな貧乏でも

 

苦ではございませんの。お金のないことなど

 

 なんでもございませんわ。

 

どんなオシゴトだってしますわ。

 

ただ、年老いた祖母の先行きの事を考えますと...

 

いわば,私はあなたに助けていただく事になるんですのネ。”

 

新藤兼人さんってこんなこジャレタご本をお書きになられたんですね。

 

どんな女優さんでもそうなんでしょうが、相手役の男優さんのカラーで

 

女優さんの印象が演技と関係ないところで、全然変わって見えることが

 

多々ありますよね。今回もそう。佐野さんという飄々とした男性の前で

 

原さんは気負うことなく気を許して自然体の女性になっている。

 

そこが今回の原さんの魅力でしょうね。

 

さて、

 

佐野周二さんーーーーは、ご存知のように関口宏さんの父君で

 

一代目松竹三羽烏のひとりです。

 

ひょうひょうとしておっとりとした個性ですが

 

そんな中にも、意外とはっきりものを言うそんな役柄が多い方です

 

ね。

 

松竹の俳優募集に応募して、1000人のの中からたった一人合格したそうで

 

松竹に入社。

 

大船撮影所1期生となる。

 

ラッキーなデビューで

 

立教大学の先輩上原謙とともに、即 

 

幹部スター候補生として、主役格で使われた。

 

1937年、島津保次郎監督の(婚約三羽烏)で、

 

上原謙、佐分利信と共演し、(松竹三羽烏)が誕生した。

 

名実共に松竹を背負って立つ存在となったのである。

 

その後、人気絶頂だった頃に

 

何度も戦争に召集されるが、

 

その合間に、

 

野村浩将監督、李香蘭主演の(蘇州の夜)、

 

小津安二郎監督の(父ありき)などの作品に出演するなど、人気を保った。

 

戦後になっても二枚目スターとして活躍し、

 

飄々としたキャラクターに人気も高く

 

木下惠介監督の(お嬢さん乾杯!)、

 

(カルメン故郷に帰る)などユーモラスな役も演じた。

 

小津安二郎の(風の中の牝鶏)では田中絹代と共演。

 

子供の医療費のために一度だけ売春した妻に対して、怒りに苦しむが、

 

愛情を取り戻していく帰還兵を演じ違った一面を見せてくれた。

 

その後成瀬巳喜男との出会いで『驟雨』に出演することになるり

 

演技派俳優として世に認められた。

 

1965年以降は活躍を舞台に移し、やさしい温厚な父親役を数多く

 

演じてお茶の間に親しまれたのである。

 

やっぱり佐野さんの作品では(お嬢さん乾杯!)がいちばん

 

好きですね。