『京化粧』・中井貴一さんの父君のことも スター ② 佐田啓二さん・・1961年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

懐かしい名画、最近の気になる映画のことを書いています。

好きなのは戦前のフランス映画です。

読まれて共感頂けたら、"いいね"を押してくださいませ。
励みになります。

 ≪京化粧≫
中井貴一さんの作品を投稿したついでに

 

父君  黄金期の松竹の大スター 

 

 

 佐田啓二さんにスポットをあててみようと思います。

 

今年は日本の女優さんシリーズもぼちぼち続けますが

 

男優さんも取り上げていきたいと思います。

 

佐田啓二さんの出演されている 叶夢の投稿作品としては、過去に

 

(喜びも悲しみも幾年月)や(日本の悲劇)、

 

(永遠の人)(彼岸花)(本日休診)(秋日和)(お早う)などを取り上げまし

 

た。

 

先日放送の(ぴったんこかんかん)に佐々木蔵之助さんと出演なさった

 

中井さんがご両親の馴れ初めや、ご自分の名前の由来などを話されているときに

 

一緒に出演なさっていた富士真奈美さんがおっしゃった。

 

゛お父様 二枚目でいらしたわねー。ヘヤースタイルもステキで

 

あなたも前髪をこう  パラぱらっと垂らしたらいいのに  ゛

 

すると貴一さんすかさず  ゛父とはカラーも違うし、全然違う役者目指していま

 

すので゛  と言う風なことをおっしゃていた。

 

なるほど 佐田さんのカラーは木下監督の(喜びも悲しみも幾年月)や、

 

(永遠の人)などは誠実、固い、律儀といったイメージだし、

 

小津監督の(秋刀魚の味)では少し

 

ラフだけれどやはりおおらかな妻の岡田茉莉子さんに頭の上がらない恐妻家

 

を・・・とこんな役柄は貴一さんも共通したキャラがあるかもしれない・

 

大庭秀雄監督の(女舞)では岡田茉莉子を相手に

 

能楽宗家の若太夫で冷ややかな男を演じ

 

同じ大庭監督の(京化粧)では花街の女の不思議な魅力に取り付かれ

 

惚れても惚れてはくれぬ女との別れに踏み切れぬ 男を演じている。

 

この当時の女性映画路線は絶対松竹の独壇場だったかもしれない。

 

がこういった映画で観客の心を掴む二枚目としてやはり佐田啓二の人気は

 

圧倒的だった。こういった女性泣かせの役どころは貴一さん向きではないな。

 

この頃松竹三羽烏の二代目が佐田啓二、高橋貞二、鶴田浩二。

 

しかし彼を世に知らしめた圧倒的な作品はハリウッド作品からヒントを得た

 

岸恵子さんと共演の(君の名は)であろう。

 

こういった作品のしっとりとした雰囲気やすれ違いや運命に翻弄される恋愛ドラマ

 

は今では時代も違うし、

 

やはり貴一さんのカラーではないかもしれない。

 

まあということですが、鑑賞した少ない貴一さんの作品に比べ

 

たんと鑑賞している佐田啓二さんの作品を取り上げて見ます。

 

大庭秀雄という監督は余ほど着物美人がお好きらしい.

 

松竹で女性をそれも和服姿の主人公の映画を数多く撮っている。

 

決して芸術作品というものではないが、

 

興行成績は良かったのではないでしょうか・

 

≪京化粧≫

 

製作  松竹  1961年作
監督  大庭秀雄

出演  
藤村園    山本富士子 

山岡     佐田啓二 

小菊     岩下志麻 
 
吉弥     千之赫子 

おたか    浪花千栄子 

おつや    清川虹子 

宮田     川津祐介 

田村     藤山寛美     

 

この配役  贅沢、豪華ですよね。
   
お茶屋で、酔っ払いに絡まれていたところを

 

偶然助ける形になった事が縁で知り合った男と芸者.

 

男は女に興味を持ち始めるが、女は商売で近づいたのかどうか..したたかそうに

 

は映るが、、

 

知り合ってまもなく二人は一夜を共にする。

 

男は女を芸者稼業から身を引かせたくて

 

お金を工面しようとする。

 

女の名はおそのという.

 

別居はしているが母親を抱えているし、パトロンがいるようだ.

 

”人を騙すちゅうことはつらいことやなあー”

 

”騙したり騙されたり、うちらの商売はそういうもんや”

 

という芸者たちの会話からすると、

 

やはりお商売と割り切って男はんと接しているように思える。

 

同じ芸者でも、雪国に見る駒子の純情さはない。

 

男は作家か?もの書きのようだ。

 

付き合い始めてからも、男は女との間に

 

埋められない溝のようなものを感じてはいる。

 

女は男のーー普通の感情というものは理解できず、

 

男が一途になることさえ理解できない。

 

どっぷりとその世界の水に浸たりきっていて、

 

何かを感じながらもそれがどう違うかがわからないし、

 

どうする術も知らない。

 

妹分の小雪は(岩下志麻)それが、わかるゆえおそののことを

 

心配する。

 

群がる男たちも京のお茶屋の遊びに長けた海千山千ばかりなので

 

女たちもそれに染まっていきそれしか知らなくなる。

 

結局、男も、その狐と狸とのばか試合のような世界に

 

巻き込まれる形になり、

 

男は女に騙されたことになってしまう。

 

それでも、男はまだ女を引こうとしている.

 

女は自分で自分が分からないという意識はある.

 

今までとは違う何かが...

 

しかし、自分の置かれた立場ーーだんなさんというひともあり、

 

まとまな感情、付き合いの出来る筈もないが、だんだん

 

人を好きになることがどんなことかじわじわ分かってくるが

 

美しさゆえ、自分ではどうにもならない状況に

 

追い込まれていく。

 

なんとも不幸な身の上である.

 

最後は男は踏みにじられ、踏みにじられても、本当の

 

おそのがどういう人間なのかがわかりたくて執拗に

 

突き詰める。

 

そのときには女も自分の生きかたが

 

間違っていたことに気付くが

 

ぬきさしならぬ状況下になっていた。

 

結局、世界の違う人間だと

 

思い知らされ、京を去っていくことになる。

 

”君は最初から僕を騙すつもりだったのか?”

 

ー...無言...”あんたはんがそう思いやすんやったら

 

そう思うとくれやすうちは...”言っても取りかえしの

 

つかないことは分かっている。やっと人の心が分かった今

 

自分自身の定めというものを恨めしく思うおそのであった.

 

男と女とお金と、貧乏とそれだけの世界に

 

生きてきたおそのにとってそれ以上の教養、つましさなど

 

求めても土台無理な話なのかも知れない  だが

 

美しさゆえの運命といえばそれまでだが あまりに哀しい。

 

こんな世界にいても、純な小雪には人の心がわかる。

 

哀しい女たちの世界。

 

そしてこういった一流スターのお相手となれば

 

男性スターも一流でなければ・・松竹大船の独特の世界ですね。

 

しかし、この頃の女優さん、

 

こういう映画で必ず求められる日舞.

 

皆さん、その道も極められていて美しい舞姿ですね!

 

岡田茉莉子、有馬稲子、岩下志麻、山本富士子などなど

 

いろいろ女性映画を観て来たが

 

しっかりとした舞いを見せてくれました。

 

安心してみていられる。

 

このショット   貴一さんにちょっと近い雰囲気ですね。