『わらの女』・・ショーン.コネリーの悪役は イケる!英 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

懐かしい名画、最近の気になる映画のことを書いています。

好きなのは戦前のフランス映画です。

読まれて共感頂けたら、"いいね"を押してくださいませ。
励みになります。





みなさま、こんばんは・
ご訪問ありがとうございます。

叶夢のブログで取り上げた、イタリアの女優さんは
アリダ.バリ、ソフイア.ローレン、クラウデイア.カルデイナーレ
そして、シルバーナ.マンガーノ、アンナ.マニャーニ、マリア.ミーキ
ジュリエッタ.マシーナ、ジーナ.ロロブリジーダたちです。

ジーナ.ロロブリジーダの作品は(わらの女)を過去に投稿したのですが
削除してしまったので今夜少し補足して再投稿します。

ロロという愛称で親しまれたジーナは
典型的なラテン美人。均整の取れた見事なプロポーションと
情熱的な美貌、<夜ごとの美女>での彼女は夢 幻かという美しさでした・
当初はバンプ役が多かったのですが、上記作品と(花咲ける騎士道)で
スターとなりました。



隠れた才能としてはジャーナリストとしてのセンスがあったようで
司会なども評判が良かったようである。
ハリウッド系グラマーはピーマンが多いようですが
彼女はグラマーなスタイルと知性のバランスが取れているまさに
活きのいい女優さんだったと思います。

さて、そのしっかりとした知性に支えられた演技を見せてくれた作品が
サスペンス映画の佳品、<わらの女>である・

ショーン・コネリー、そしてイギリスの名優、ラルフ・リチャードソンを相手に
引けを取らない演技を見せてくれました

作品は、イギリスらしい雰囲気とイタリア女優の香りがミックスされた
どんでん返しのラストを持つかなり楽しめる作品です。


まずはストーリーを・






私の紹介はラストまで書きますので
トリックが分ってしまいますが、
ご了承くださいませ.

ラルフ.は英国の富豪でロンドン郊外の大邸宅に
黒人の兄弟を含む使用人と十数匹の犬と住んでいるが、
今は車椅子の生活である。

妻を無くしてからは老人の孤独から、偏屈になり、
人間にも犬にも辛く当り、口うるさい 扱いにくい老人になっていた。

住み込みの看護婦も居着つかず、甥のショーンは
伯父の為に美人の看護婦、ジーナを連れてくる。

それまでの看護婦は髭が生えたチーズ臭い女ばかりだったと
ラルフは言っていた。

どうせ今度もそんな女だろうと甥に毒舌を浴びせていたが
彼女に会った途端、伯父ラルフは彼女に好意を持った。
しかし、表向きの態度は今までどおりみんなに対するのと同じ
傲慢な態度であった。

ラルフはとてつもない遺産をチャリティに寄付するといっている。
ショーンには二万ポンドしか残さないらしい。

ジーナは今までの看護婦と違って、悪いことは悪いと率直に言い、
必要な看護は手抜きをしない気の付く女性であった。
ラルフはそれが本物かどうかを試している風なところもあった。

ショーンはジーナを自室に呼び寄せて、相談を持ちかけた。

伯父と結婚する気はないか?
もしかして遺産贈与を考えるかもしれない・・君の出方によっては・と

ジーナは”そんなつもりで私を選んだのね”と言いつつも、まんざらでもなく、
その話に拒否の態度は示さなかった。

そして見事成功の暁には100万ポンドをショーンに渡すという約束をした。

ラルフはヨットで釣りに行くと言い出し、ショーン、ジーナと共に
黒人の兄弟も連れて乗り込んだ・
マヨルカ島に寄港したヨットを映すシーンは目が覚めるようなカラー撮影で
美しい風景が展開する。空気が乾燥していて 直射日光の激しい土地だから
本当に明るくて澄んだ景色だ・

シャークと格闘するラルフに
ジーナは身体のことが気になり、見ていられずに、
ついにナイフで縄を切った。
そのやさしさにラルフは彼女に対して気を許すようになり、
何でも話すようになった。

しかし、嵐が襲い 船は大波に飲まれ、黒人の弟のほうが海に投げ出された。
浮き輪を投げて必死で救助しようとしているのを見て、
ラルフが目を向いてにんまり笑ったのをジーナは見逃さなかった。

彼女は助け上げた弟を自室に寝かせ、ラルフを批難した。
”あなたはあの様子を見て、楽しんでいたわね・あなたは怪物よ!”と怒鳴った。
ショーンは黙って聞いていた。
サデイズムの傾向にあるこの作品のラルフ扮する富豪リッチモンド。
ジャマイカの黒人の召使たちを犬みたいに酷使して喜んだり、
医者に禁じられている葉巻を吸いたいために  金持ち根性を露骨にちらつかせるあたりこの老人がまさしく本作品の主人公なのであろう。

黒人の兄に、ジーナは”あんな主人によく使えているわね、わたしはごめんだわ”
彼は、”お金のためです。故郷に仕送りをするには
ここは給金がいいのです。
あなたが出て行くと邸の空気はまた、悪くなる・・・・留まってください”と兄は礼を言って出て行った。

ジーナは港で船を降りた。
その間にも、ジーナとショーンはラルフの目を盗んで会っていた。

ラルフはジーナに会いに出かけてきて、結婚を申し込んだ。
自分に対して正直な気持ちをぶつけるこの女性を
愛してしまったのだ。

遺言書を書き換えると言い出したラルフ。
その書類をロンドンに着いたら弁護士に渡して承認してから出ないと
もらう資格は認められないと聞いたジーナであった。

ラルフとジーナは無事に結婚式を挙げ、ラルフは素直になった。

音楽をこよなく愛す、特にベートベンが好きで
ラルフは邸中に音楽が流れるように
至る所にスピーカーが取り付けられてある。

ハネムーンも終わり、ロンドンへ向かう自船に乗り込んだ二人の前に
ショーンも途中から乗り込んだ。

ジーナがふたりの船室に行くと、ラルフはラジオから流れるベートーベンに
指揮をとるほど元気になっていたが薬を与えると、
ラルフはジーナに言った。”今、この放送の演奏をテープに録音していたんだ・・・”と・

翌朝、気分よく朝食の用意をして、ラルフに声をかけに行くと
彼は目を開けたまま息絶えていた。
見れば呼びベルのスイッチが切られてあった。

動転したジーナはショーンの部屋に行き、事の経緯を告げると、
”まずい、今死なれては遺産が認証されないから、受け取れない。生きていることにするんだ”

ショーンとジーナは彼に衣服を着せ、車椅子に乗せ、船から下ろし、
車へと・・・・
もちろん使用人や乗組員は見ている。

ジーナは言われるままにするも気が気ではなかった。

そして、邸に帰ってから死んだことにしたのであった。

生きていたようなラルフをみんなが見ていたのである。

しかし、検死の結果、前の日の食物しか胃に残っていなかった為に
ジーナが尋問を受ける羽目になり、
事の成り行きから、ジーナは真実を暴露した・
しかし、ショーンは”何を言うんだ、生きていた伯父をみんなが見ているんだ!”

そしてショーンはジーナに不利な証言をし、彼女は殺人の容疑者として
逮捕された。

裁判でも彼女の立場は不利で結局有罪となった。

ショーンに逢わせてくれというジーナに面会に行ったショーンは

ここで初めてジーナに真実を教えてやった。

ジーナは知らなかったことだが、初めから彼女を利用するつもりで
伯父の家に連れてきたこと。

君が有罪となった後は財産を受け取る権利はボクさ!”というショーンに
ジーナは”そういうことだったのね。わたしは遺産をもし、譲り受けたら
あなたと半分づつ、それともあなたに全部でもと・・・信じていたわ・”

”いや、全部ボクのものさ・・・

   遺言書の承認を得る必要があるといったのは嘘さ!
英国では、二人が認めればそれでO.kなんだ。

だが、君が伯父を殺したという状況を作らなければならなかった。
だから、ロンドンへ行くという設定をしたんだ!”

邸に帰ったショーンは伯父の机に座り、葉巻をくわえた・・

すると、スピーカーから伯父の一番好きだった曲が流れ出した。

慌てた彼は、伯父の寝室に走った。
イスを回転させてこちらを向いたのは刑事。
そして黒人の兄のほうが立っていた。

”ラルフ氏は船の中ですでに死んでいたのが真相でしょう!”

”何を言う・生きて帰った伯父をみんなが見ているではないか!”

”いや、死んでいた。この人(黒人の兄)が死んだラルフを見ていたんだ。

”私は奥様がご主人さまの部屋を飛び出した後に入ったんです。

       ご主人様は亡くなっておいででした。”

”・・・・・??”
慌てるショーン。

刑事は”こんなものがありましたよ”と言って、テープレコーダーを指した。

黒人は”このテープを聞いて、お前・・と言うのが奥様だと思って、
隠していたんです。
奥様は優しい方だった・そんな人がご主人様を殺すのはよくよくの
事だろうと・・・”

そのテープには・・”わしの毒を盛ったのはオマエだろう。分っている。
だからわしは最後の力を振り絞ってここに録音しておく。
わしを殺したのはオマエだ!”


ショーンは取り乱し、そのテープを引き抜きちぎろうと慌てた。

”オマエとはあの女だ!”・・・・

”では、何故、あなたが取り乱すのですか?”

ショーンは部屋を飛び出した・・が、そこで車椅子を仕舞おうと立っていた
黒人はイスを押した。

ショーンはイスに押されて、階段からマッ逆さまに転がり落ちていった。

伯父が仇打ちをしたのだろう・・・。

ジーナは庭に出て、向こうを見た。
数十匹の犬達が彼女めがけて尻尾を振りながら集まってくるのだった。

その後ろにはにこやかな黒人の兄弟が・・・


★、ショーン・コネリーはこの年<ゴールドフインガー>に出演、翌年には
<サンダーボール作戦>に出演するのですが、
<わらの女>を見る限り、ショーンの悪役ははまってます!!
新境地開拓の為の頭脳明晰な悪役に挑んだ作品です。

ジーナはこの作品では南国の情熱的な役ではなく静かな演技の
地味な役でしたがやはりその美しさは格別です・

作品としてはラルフの出演場面はイギリス色濃厚であるが
ショーンとジーナの場面はどうしてもジーナ色になり
南国的という妙な感もありますが、
これは、イギリス作品ということもあり、
イギリスの観客は役者ラルフがどういった演技をするかに関心があると思うので
どうしても部屋の作りや船内のインテリアはイギリスゴシック風です・
ラルフに相当気を使っているように見受けられました。
だから、ショーンとロロの場面は南国ムードになっていて、
明暗のコントラストを強めた意図もあったのかなあ。

トリックと、ラストの構成はヒッチコックの≪ダイヤルMを回せ≫を
思わせるものですが、映画スタイルとしては新しい形を生み出した作品だと思います。

監督  ベイジル・.ディアデン
音楽  ビクター・ヤング
衣装  クリスチャン・ディオール
  1964年度英国作品