『流れる』・ 日本の女優18 山田五十鈴さん・至芸とはこの女優の為にある言葉・・成瀬巳喜男監督 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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至芸とはこの方の為にある言葉

日本の女優さん18
山田五十鈴さん

こんばんは。
作品(流れる)を選びました。
(祇園の姉妹)は後日とりあげます。
京の祇園 対 東は柳橋界隈です。

まず、しげい【至芸】とは、どういう意味か?
きわめつくした最高の芸。芸の極致。と辞書にある。

至芸とはこの方の為にある言葉ってことが、数々の作品を鑑賞すれば
ーーわかりますーー流れるーーは、その最たるもの。

日本映画界が育てた 宝 と評される女優、山田五十鈴さん。

2012年に 95歳で亡くなられましたが、13歳で日活に入社、デビューして85才まで
現役で活躍された。

昭和11年(1936)の
溝口健二作品の(浪華悲歌)と(祇園の姉妹)ですでに演技開眼、早くも名優と言われた。
18.9歳だと思います。
最近、鑑賞しましたが
納得です。

(国士無双)、(盤嶽の一生)
(鶴八鶴次郎)、(新妻鏡)
(婦系図)、(歌行灯)

この方の場合、戦前の活躍が第一次とするなら、
1950年代の第二次は
絶頂期で
その頃の作品はといえば、
(女優)、(現代人)、
(縮図)、(たけくらべ)、
(猫と庄造と二人のおんな)
(流れる)、(蜘蛛巣城)
(東京暮色)、(どん底)、
(ぼんち)、(もず)、
(用心棒)と
これらの作品の間に
無数の出演作品が網羅する。

それぞれに受賞作品とつく。
だが、まだ少女の(祇園の姉妹)が絶品だと言われる所以は
この作品の五十鈴さんの京都弁が完璧、見事なものだったという話は有名で
あれだけ完璧に関西弁をあやつる女優は五十鈴さんと浪花千栄子の他にはいないと言わせしめた。
脇役の芸達者はたくさんおられるが、美貌と至芸と三味線と舞
どれをとっても一級の女優さんは彼女の他にはいない。

2000年のキネマ旬報の(20世紀の映画スター女優編で
日本女優の6位、同じくキネ旬の「読者が選んだ20世紀の映画スター女優」では第5位、2014年のオールタイム・ベスト 日本映画男優・女優 では日本女優4位となっています。

ひところの女優さんたちが
最も尊敬しまた、目指した女優が山田五十鈴でしょう。

そして、第三次が舞台でしょう。彼女は確か10歳位で
清元の名取になっているはず。
舞台では三味線も、大活躍、
のども大活躍でした。

山田五十鈴は杉村春子、水谷八重子と共に舞台の三大女優と言われました。

今日、取り上げます
成瀬巳喜男監督の
(流れる)は
芸者の置屋のおかみの役ですが、至芸とはこんなもんだ⁉️と
納得のお芝居を見せてくれます。
こういった役柄を演じられる女優さんはもう出てこないでしょう。


(流れる)


豪華な配役を。
山田五十鈴
田中絹代
高峰秀子
杉村春子
岡田茉莉子
そして戦前活躍された往年の大女優ーー栗島すみ子

原作がまた、わたくしの大好きな 幸田文さんなんです。

柳橋界隈の花街を舞台に
芸者置屋て働くお手伝いさん(田中絹代)の目を通して、そこに働くおんなたちの悲喜劇を描く。

大川端に程近い東京の花街。
昭和30年代、着物に下駄ばき
トランクを下げ
芸者置屋 つたの家 に、職業紹介所から女中梨花(田中絹代)がやってきた。夫は一昨年、子供も昨年死んだという梨花は、女将つた奴
(山田五十鈴)へのあいさつも無事に済み、お春と名をつけられて住込むことになった。

早速使いに出された近くの食料品屋の親爺は、払いが悪い
つたのやのお手伝いと知って良い顔をしない。
家に戻ると、つた奴と腹違いの姉、鬼子母神のおとよ(賀原夏子)が借金の催促に坐り込んでいる。
この家も抵当に入っているんだと教えてくれた芸妓染香(杉村春子)も、おとよに借金がある。
おとよは、つた奴に旦那を世話して借金棒引きの腹だが、つた奴は乗り気でない。
数日後、喧嘩して出た芸者なみ江の叔父鋸山(宮口精二)が、
姪をタネにゆすりに来る。
つた奴は留守だったが梨花たちは震え上る。その頃、つた奴はおとよと歌舞伎座へ出かけていたが、目的は鉄鋼会社社長村松を紹介すると知り、嫌で
遇然出会った昔の同僚で今は水野家の女将になっている
お浜(栗島すみ子)と先に帰ってしまう。

鋸山から三十万払えとの手紙がきた。
おとよも怒鳴り込んできた。

つた奴は遂にお浜を訪ね、別れた旦那花山に、お浜の甥で花山の秘書をしている佐伯を経て詫を入れる。
翌日、花山からとお浜が十万届けて来たが
鋸山に半分はとられてしまう。

騒ぎの最中、つた奴の妹米子(中北千枝子)の前の亭主の
高木(加東大介)が、子供不二子の病気見舞いに来たが
金だけ置いて逃げるように去る。

お浜がこの家を買取り旅館にするとおとよから聞いたつた奴は真疑をただしにお浜を訪ねるが
冗談だと笑うお浜にホッとしたつた奴。
加えて今夜七時、花山と合うことになった。

つた奴の娘勝代はブラブラしているのは恥しいからお友達の家でミシンの下請けでもするという。
つた奴は勝代を叱りつけた。

花山との約束の料亭三田に赴いたつた奴。
だが花山は急用で来れないとかわりに佐伯という男(仲谷昇)がやって来た。
すべてを察したつた奴が
家に戻ると、また鋸山が来ている。

巡査を呼んだが参考人として彼女も留置場へ。お浜と佐伯の働きで一晩で帰されたものの、家を買って貰いたいというつた奴に、お浜は実は先日の十万は手切金の意味だと言う。

ここらで私も男とは縁を切るわと淋しく笑うつた奴。
おとよの目算は見事に外れたが、佐伯と戻って来た鋸山はなみ江の荷物をまとめて
逃げるように帰っていった。
結局、つたの家に残るのはつた奴、勝代に梨花の三人。
しかし、
つた奴母娘に出て貰ってあんたに任せて小料理屋をというお浜の話も梨花は断わった。
秋風の吹く頃
勝代と口論の末オン出た染香が詫を入れてきた。

こちらも新規まきなおしと
ほほ笑むつた奴、
二階では勝代が内職のミシンを踏んでいる。
郷里へ戻ろうと決心した梨花は、つた奴と染香の三味線で踊る仕込み子たちの姿をいつ迄も眺めていた。




この映画の中の山田五十鈴には、彼女の最もよい部分が現れている。その他の女優も
最高にいい部分が引き出されているように思います。「稲妻」の高峰秀子、「あにいもうと」の京マチ子、「めし」の原節子も、ハマリ役というんでしょうか、小津作品の彼女とは違う
独特の良さがにじみ出ていた。この映画の中に出てくる杉村春子も、脇役とはいえ しっかり輝いている。
おそらく杉村にとっては、小津の「麦秋」の演技とならんで最良の演技であったと思います。

  これだけの豪華なメンバーですが、
映画「流れる」は山田五十鈴のための映画ですね。
  彼女がこの映画の中心にいる、
  彼女の父は新劇の俳優さん、母が芸者さん。幼い頃から芸の仕込があって清元の名取も母娘一緒にとったとか、だから

芸者さんの演技がリアルなんですね。凛としたたたずまい、仕草。
何気ない仕草や手先の動きが
なんとも美しい。
  そして、この作品を格調高くしたのが
女将お浜を演じた栗島すみ子さん。すごくいいんです。
彼女の出演で映画に奥行が出ていますよね。山田五十鈴と田中絹代ではなく、山田五十鈴と栗島すみ子が柱の作品ですね。

お母さまが芸妓さんだったらしく、血は争えないもの、生まれつき備わったシナ というものが自然と身についているのかもしれない。