『紀ノ川 』・銀幕の女優さん19 司葉子さん ・お嬢さん女優を脱皮した作品 1966年 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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日本の女優さん19
司葉子さん
.≪紀ノ川≫作品

司葉子さんで浮かぶのは
吐夢でも紹介しましたが
(小早川家の秋)で
原節子さんの義妹
(秋日和)で原節子さんの
娘役が浮かびます。
静かで、優雅で都会的な美人という印象でしたね。けれど
ツンとしたところがなく、親しみやすそうな超美人です。

森繁久弥、小林桂樹、加東大介、三木のり平、有島一郎さんレギュラーの社長漫遊記シリーズの女性レギュラーとして、花を添える印象が強かった。

が、作品を整理してみると、(年代順不同です)
1954年頃デビュー。
成瀬巳喜男監督の
(鰯雲)、(乱れ雲)、(ひき逃げ)
黒澤明監督では
(用心棒)、

小林正樹監督の
(上意討ち.拝領妻始末)
中村登監督の
(紀ノ川)
40代になると
市川崑監督の
(獄門島)、(女王蜂)
2000年位迄の映画生活で
7、80本の作品に出演され
その後テレビを経て、舞台出演となっていった。

元々、星由里子さんや、酒井和歌子さんへと受け継がれていく清く正しく美しくという
お嬢さんイメージの女優さんでしたが、
お色気が薄い分
(上意討ち〜)や
(紀ノ川)の役どころは
ヒロインにぴたりとはまり
双方数々の賞を独占しました。

ということで、(上意討ち〜)は後日とりあげということで今日は改めて
女優さんシリーズとしましては代表作ですので(紀ノ川)を再投稿します。
✳️⭐️







≪紀ノ川≫行く河の流れは、絶えずして、しかももとの水にあらず....

明治、大正、昭和と3代にわたり、紀ノ川のように
強くたくましく、美しく生き抜いたヒロイン 
花 と娘文緒 と孫娘華 の物語である。有吉佐和子原作。

女性映画を撮らせて天下一品の中村 登監督作品である。
が、これは女性ものでも、恋愛ものではない。

女性を紀ノ川にたとえ、伝統主義者であった有吉佐和子が
≪家≫というものが家族の柱であった花の時代から、
その≪家≫を否定した考え、行動に生きた娘文緒、
そして孫の 華がまた家 というものの存在に気付くまでの女性の
生き方の縦糸としてしっかりと描いたものである。






紀本花(司葉子)の婚礼は、紀ノ川にその嫁入り道具を
五艘の舟が運ぶ豪華でゆったりとしたものだった。
22歳の花は若くして村長となった旧家の長男敬作(田村高廣)へ嫁ぐ。

日露戦争を狭む大きな歴史の中で、花は由緒ある 家 を
守り、紀ノ川の治水に生涯をかける夫を助け、
4人の子を産み、育て、その家というものが
長女 文緒(岩下志麻)によってことごとく
反発、否定される。
それでも死すまでその生き方への信念は変わることはない。
形は変わっても、変わった形で自分たちの中に脈打っていることを
晩年に悟る娘文緒。

そして孫の華(有川由紀)は

 

 

海外生活を経て、家とは何だろうと
思い始め、無性におばあさんのことが知りたくなり、
自分の中で新しい形の家 というものの重要さを悟る。

とまあーこの3人の女性の生き方である。

女の命のたくましさは、流れ行く水のように、
自然に逆らわない所にある。
川の持つ浸食性は自然に逆らわないからだとある。

自然を支配(男性だと思う)するためにはまず、
自然に従順でなければならない。
ここが大事なんだと思いました。

こうした水の力が女の生命力なのだと言いたいのだろう。

つまり、この映画、小説に登場する男性はみんな生命力に
乏しく、花の夫、義弟(丹波哲郎)、長男、文緒の夫、しかりである。

大河は弱い川、支流を集めて大河となる。
大河はまさに花や、文緒や、華であり、支流ー弱い川はまさに
この男達そのものなのだ。

花は一見従順で控えめであるが、
その強さは家を守るという使命感であり、その為には弱い夫や義弟
の生命を飲み込んで、たくましく生きる。

それはポジェテイヴということではなく、
あくまでも家を守るという受身の中でのたくましさである。
 
文緒は大正のモガの典型的タイプであり
戦後のヌーベルバーグのような生き方である。

体制や規制に反発し、旧家というものに反発する。
しかし自分の娘が育って過去を振り返った時に
母の偉大さを認める。

そして、その娘華はその母をも反発して
成長するといった戦後派の娘である。

冒頭に書いたように川はずーっと(女として)絶えず流れーー
受け継がれていくが、
元の水ー(つまり花と文緒と華が違うように)にあらず、
女の形、思想も変わっていく。

外側からみれば女というものに
変わりなく見えるのでしょうが?

母親)や女性を海や川に例えるということは
こういうことなのでしょう。

有吉さんが生きてらしたら華の娘世代のその又娘世代を
伝統を重んじる彼女がどういう風に捉えたか?

読むことができたらなーと思わずにはいられません。

”花”の信念と芯の強さは
犬の遠吠えのような性格の”文緒”では
太刀打ちできません。
むしろ、反発したが受け入れて新しいものの中に
伝統をみつけるという華のほうが
文緒より真の意味の強い女性となっっていったし、

だからいまも女性の中に伝統を大事に思う女性が
しっかりいるのだと思いますね。


司葉子は22歳から60歳までを演じきり
とくに旧家の娘らしい着物姿や歳を召してからの着姿も素敵で、
ああいう風にゆったりと着物がきこなせればいいなあーと
思いました。

単なる大河ドラマとしてではなく、
女性と家の関わり、夫に対して妻がどうあるべきカの
お手本にもなるでしょう!

製作 松竹  1965年度作
監督 中村 登
原作 有吉佐和子
出演 花  司 葉子
   文緒 岩下志麻
   華  有川由紀
   敬作 田村高廣
   義弟 丹波哲郎
  大祖母 東山千栄子
 
1966年度のキネマ旬報ベストテン
             第3位
 
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