『遙かなる山の呼び声』・日本の女優さん15 倍賞千恵子さん ・1980年度作品 山田洋次監督 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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倍賞千恵子さん












日本の女優さん15
倍賞千恵子さん
(遙かなる山の呼び声)

この邦題は....
ハリウッド作品(シェーン)の主題歌の題名と同じ。

ということは
かの作品からヒントを得たのかな?

夫を亡くし、北海道の大地に
暮らす母と息子。
その前に現れる凶状持ちの男とのドラマを
描いている。

倍賞さん、大好きな❤️女優さんです。
歌手倍賞千恵子さんとしても
ファンであります!

(男はつらいよ)のさくらがあまりにもイメージ化されてますが、
とにかく山田洋次監督との縁が深い。
何十年に渡って、7.8割がたの作品のヒロインを演じているようですね。

SKDの出身で、
スタイルの良さ、庶民的な美しさで映画松竹から引き抜かれた人。

ちょこっとの出演だけど
(幸せの黄色いハンカチ)は
印象深かったが、
主役作品としては
(遙かなるーー)でしょう。

この作品であらゆる賞を総なめにしている。
高倉健さんと並んで落ち着くのはやはりこの方ですよね。

山田洋次監督の清張作品
(霧の旗)の桐子役も
印象的でしたし、
初期の頃の
(下町の太陽)も
庶民派倍賞さんのカラーが
よく出ていた佳品だと思います。
(家族)もヨカった、
(駅)も良かった。

最近思うのですが、
女優さんシリーズを書いていて、気づいたのは
倍賞さんが
一番年相応な美しさ、自然な美しさで、拝見していて
いい年の取り方なさってるなと感じます。

さて、(シェーン)の日本版
(遙かなる山の呼び声)の

ストーリーを

山田洋次監督
1980年度作品

田島耕作 高倉健
風見民子 倍賞千恵子
風見武志 吉岡秀隆
近藤 渥美 清
勝男 武田鉄矢
虻田太郎 ハナ 肇

風見民子(倍賞千恵子)は
小学生の息子武志(吉岡秀隆)と
北海道の中標津の酪農地帯の
一角にひっそりと暮らしていた。
ある暴風雨の夜、一人の男(高倉健)が、雨風がしのげればどこでもいいので泊めてほしいと民子の家を訪ねてきた。民子は気味が悪いと思いながらも男を物置小屋に泊まらせた。その夜
牛が産気づいてしまったが、
男が出産を手伝ってくれた。

翌朝、男は礼を言い立ち去るが、民子の息子が礼金を持って男を追いかけた。

お金を受け取るときに
武志は
父親を亡くしたこと男に話した。何ヶ月か経ち、

その男がまた民子のもとへやってきた。
男は田島と名乗った。農作業夫として働かせて欲しいと民子に頼んだ。

民子は一人息子の武志を育てながら、夫が開拓した駱農場を女手一つで守ってきた。

民子は田島をしかたなく雇い入れた。

民子は田島に警戒心を顕にした。

ある日、民子に好意を寄せている虻田太郎(ハナ肇)がやってきて民子に言い寄り
乱暴しようとした。
田島は虻田に水をかけて追い返したが、すぐに
兄弟を引き連れ
仕返しにやって来た。
虻田兄弟と決闘をしたが、
全員簡単に打ちのめされてしまった。
虻田は頼もしい田島に惚れ込み、逆に田島を兄貴と慕うようになった。
民子は農場での作業中に
腰を痛めて入院した。
その間、武志は田島にすっかり懐いてしまい、生き生きとした息子の姿を見るにつけ、また、虻田兄弟に慕われる田島のまっすぐな性格を見るうちに、田島に対する民子の気持ちに変化が起きるのに時間はかからなかった。

函館から訪ねてきた兄に
田島はしばらく民子の農場に居るつもりだと告げた。田島の中に
この農場に落ち着きたい気持ちが芽生えていた。


仕事にもなれたある時、
草競馬に興じ、民子とも
いつしか心を通わせるようになったが、
いつしか警察の手が
近づいて来たのを知る田島。


田島は凶状持ちであった。明日はここを去ろうと、過去の罪を民子に話すのであった。

田島は借金を苦に自殺した妻の葬式の席で、妻を
ののしった高利貸しを
殴り殺してしまったのだった。警察の捜査から逃げて2年になるという。
それを聞いた民子は衝撃を受けた。その夜、牛が急病になり、獣医を呼んだが、一番大事な牛が危ないという辛い状況の中で、民子は「行かないで!と田島にしがみついた。

夜明けには牛の手術も終わり落ち着いたが
程なく警察の車がやって来た。呆然と立ち尽くす民子。「おじちゃん!と泣きながら追いかける武志。
シェーン、カム バック!ですね。

田島に傷害致死として刑が確定した。

美幌駅に列車が停車した。
その車中に
刑務所へ護送される田島が
乗っていた。

虻田は民子を田島の斜め向かいに座らせ、田島に聞かせるように民子に大きな声で話しかける。
民子は酪農を畳んで、
武志と中標津の町で暮らしながら田島を待っている と。

そして民子に渡された黄色のハンカチで、涙を拭きながら車窓に顔を向ける田島であった。嬉しさと有り難さと
ほろ苦さとでおそらく
むねいっぱいの田島健さん。、

シェーンに登場する夫人は
夫が健在であったが、
束の間、
ほのかな恋心をシェーンに
抱いた。言葉にならない思いが、表情だけで全編に溢れていた。

本作品の民子は未亡人となってから歯を食いしばって生きて来ただろうその裏にある
女の寂しさがあの夜、ほとばしり出て、田島にしがみついた。

健さんと千恵子さんだから
恋とか愛とかの俗っぽいものではない
一人の寂しい男と
一人の寂しい女が磁石のように引きあった。そんな
いじらしい静かな熱情かなあ。いいですねえ。

朴訥な男と
ひたむきな女の出会い。
見終わった後の清々しさを
感じた一本でした。