《間諜X27》・マレーネ・デートリッヒ・米 1931年度作品・ジョセフ.フオン.スタンバーグ監督 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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《間諜X27》


こんばんは。
今夜は
スタンバーグ監督、デートリッヒ主演の
《間諜X27》を取り上げます。

《間諜》とは
スパイのことです。
デートリッヒの魅力全開の
作品。当時のファンには
たまらない作品だったでしょうね。

1930年に、ドイツに渡っていたスタンバーグと出会ったデートリッヒは
彼ののメガホンで、《嘆きの天使》でデビュー。ドイツ作品。
手に手を取ってアメリカに
渡った二人は、《モロッコ》の撮影に。

そして、翌年、三本目となる本作品を撮りました。

では、早速ストーリーから。

雨の古都ウイーンのシーンから始まります。

時は第一次大戦最中、

デートリッヒ扮するのは
夜の女ーー
娼婦達にとって
こんな夜は商売にならず嫌だった。
商売に嫌気がさしたのか自殺した娼婦が
運び出されるざわめきの中
“わたしは死ぬことなんかちっとも怖くないわ”と
吐き捨てるように警官に近づいた。

ある男が女のアパートを訪ね、オーストリアの機密を探れば
大金が入るがどうだと誘ってきた。
つまり連合軍のスパイをしろということだ.
女はすぐに受話器を取って警察へ通報。
男は逮捕された.がこれはウイーン側というより、
ドイツ、オーストリア側の秘密情報局が
この女の愛国心を試したのだった。

翌日、その情報局へ呼ばれ、今までの生活から足を洗い、
間諜X27号として登録され、オーストリアの為に
活動することになった。

彼女はピアノを弾くことが好きで
いつも≪ダニューブ河の漣≫を弾いていた。
その曲はオーストリアへの、彼女の祖国への限りない愛国心の
現れであった.
(なんだか≪サウンド.オブ.ミュージック)のあの心を
思い出しますね.)
♪エーデルワイズ、エーデルワイズ~♪
間諜X27にとってはダニューブ河の漣なんですね.

情報局で初めて会った若い士官は彼女に対して
まるで淑女に接するように礼儀正しく
また、彼女の美しさに目を奪われた。

彼女は間諜となってからも表面は今まで通りの職につき
スパイ活動をしていく.
最初に接触したのはロシア側のスパイのヒンダワ将軍の秘密を
探ることだったが彼は彼女に魅力の虜になり
秘密を嗅ぎつかれ自殺する。


次ぎの相手はクラノウ中尉(ウオルター.ブレナン)である.
彼女は敵のスパイである彼に魅かれていく.彼も同じである。



ある時ロシア側に潜入し捕まり危ういところを中尉に助けられる。
お互いにスパイをしあいながらも、愛情は深まっていく二人。



そして中尉がドイツ側に捕まった時
ただ、愛した人を助けたい一心だったのに
彼女の心の変化に気づいた情報局は 
国を売ったとして、裏切ったとして彼女を
摘発し処刑されることになる。

“なにか希望は?”と聞かれ“ピアノが弾きたい”と・
思う存分ドナウ河のさざなみを弾く。
処刑場へ案内するのは情報局に
はじめて足を入れたときに会った若い士官であった.
目隠しの黒布を差し出す彼の目に浮かんでいる涙を
そっと拭いてやり
布を返すのだった。
死ぬのはちっとも怖くない彼女。
銃の前に立つ彼女を見ながら合図の太鼓を打つ士官は
どうしても納得がいかない。

“ボクには女を殺すことはできない、僕等もただの人殺しじゃないか”と叫んで
太鼓のバチを投げる。彼女は銃口の前で平然と口紅を塗る。

代わって指揮を取る士官...銃弾は銃口から飛び出た。

士官は彼女に敬礼した....ドナウ河の漣が一段とたからかに響いた。

全編に何度も何度もピアノを弾く場面が登場します。
それだけ彼女の祖国を思う気持ちが強いのですね。

J.F.スタンバーグ監督は
≪嘆きの天使≫...、ドイツの名優と共演  
≪モロッコ≫...ゲーリー.クーパーと共演と続き、
このモロッコの世界的ヒットで
映画もデートリッヒも人気を掴んだ。

しかし、この間諜X27ではデートリッヒが
共演者に支えられることなく
まさにデートリッヒ自身の演技だけで、
魅力だけで作り上げたといって良いというくらい
彼女の魅力が100パーセント出ている.

あの100万ドルのおみ足も頻繁に見られるし,
スタンバーグは主演女優以上に
彼女に惚れていると思うくらいきれいにきれいに
撮っていて、
デートリッヒは輝いている。


こういう非常下の、戦下でのスパイ活動という主題に
加えて恋も絡めて
描く作品というのはたくさんあるが、
デートリッヒ独特の姉御のような色っぽさを
惜しむことなく引き出したスタンバーグはやはり素晴らしい.

中尉に扮したウオルター.ブレナンは
後年J.フオ‐ドの≪男の敵≫でアカデミー主演男優賞を
貰っている。
同監督の≪黄色いリボン≫や、≪静かなる男≫など、
ふっくらしてからのJ.フォード映画の常連としての顔が浮かぶ。

若い頃は20世紀フオックスのスターとして
珍重されていたようだ。

毎深夜、モノクロ映画に浸り、映画の原点の面白さを
味わっております。

製作  米国 1931年度
監督  
ジョセフ.フオン.スタンバーグ
出演 
 マレーネ.デートリッヒ

ヴィクター.マクラグレン

1931年度
キネマ旬報ベストテン
第5位