《怒りの葡萄》・J.フォード監督 米・スタインベック原作・・1940年制作 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

ご訪問ありがとうございます。
懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
日記形式で書いています。
戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。


《怒りの葡萄》


こんばんは。

ジョン.フオード監督といえば西部劇..というイメージが
強いのですが、

すばらしい社会派ドラマも手がけています。

≪駅馬車≫や≪荒野の決闘≫などの西部劇の名作がどうしても

取り上げられてしまいます...

そこで、
今日は彼が撮ったすばらしい、ヒューマン.ドラマを
紹介しましょう。

≪我が谷は緑なりき≫は案外ご覧になった方が
多いのではないカと思いますので、
スタイン.ベック原作の≪怒りの葡萄≫を紹介しようと思います。

様々な、また数々の巨匠、名匠と言われる監督は
世界的視点で見れば、それこそたくさんの巨人達がいる。

しかし、半世紀を超える作品歴の偉大さは、
世界映画界を代表するといって過言ではないこの人......
ジョン.フオードが最高峰であろう。

とてもとても、単純には語り尽くせるものではないと思う。

1910年代後半の初期時代から、1940年の絶頂期を向かえ
1960年代まで活躍した。

特に絶頂期の1940年代は
送り出したスタイルの違う作品がすべて傑作という驚異的な
エネルギーを感じさせる秀逸な傑作作品だった。

≪駅馬車≫では、西部劇というより、
アクション映画の原型を作ったし、≪怒りの葡萄≫では、
ドキュメンタリーと言わないまでも
一転してリアリズム描写に徹し、
≪我が谷は緑なりき≫では、豊かな詩情を描き出した。
そして、フォードの最高作、、、
  アクション、リアリズム、詩情性の集大成とも言える
    ≪荒野の決闘≫を作り出した・
また、同年代の≪タバコ.ロード≫は全く違った
生命のパワー溢れる異様なまでの執念作品を撮った。

娯楽映画を得意なスタイルとしながらも、
思想や形式にこだわらずに、生涯がチャレンジ精神で
新たなスタイルの映画作りに燃えた
世界最高の監督である。

現在アメリカで活躍する監督たちは殆どがこの人の作った原型に
色を塗りなおしているに過ぎない。

..≪怒りの葡萄≫..のストーリー..


オクラホマ地方は毎年、ものすごい砂嵐に見舞われて、
何年も凶作続きであった。

殺人容疑で入獄していた小作人の息子
トム.ジョード(ヘンリー.フォンダ)が四年ぶりに帰ってきた。


だが、一家は新天地を求めてここを立ち去った後だった。

叔父のジョンの土地で世話になっている家族に
やっと再会。
母(ジェーン.ダーウエル)は喜び、泣いてせがれを抱きしめた。

一家はまた、新しい仕事を求めて、
二千マイルも離れた遠いカリフォルニアへと旅立つ。

オンボロの自動車に」家財道具を山のように積んで....

灼熱の砂漠地帯を横断する途中で、祖母と祖父が相次いで死んだ。

仕事を探し、やっと、豆摘みの仕事にありつくが、
浮浪者たちが襲撃してくると言う噂に、
また、次の農場を求めて旅立つ。

今度は桃もぎの仕事だった。
初めは、ひと箱につき、5セントの報酬の約束だったのに、
農場主は2セントの賃銀の引き下げを一方的に言って来た。

農民達の怒りは爆発し、ストライキが起こった。

首謀者とみなされた一家のひとり、
ケイシーが乱闘で殺されてしまう。

トムは激怒し、その乱暴者を殴りつけ、過って死なせてしまう。
トムは殺人犯として保安官に追われる羽目になる。

一家はトムを運転台に隠して、そこを脱出。
48時間も走りつづけ、国営農場に辿り付く。

しかし、ここも安住の地ではなかった。

トムの事件とは関係なく、たまたま保安官が一家のトラックの
登録ナンバーを調べに来たのを見たトムは
自分が捜索されていると勘違いして、
母親に別れを告げ、ひとり暗闇の中を何処へ行くともあてのないまま、
逃走して行くしかなかった。

母は母で、トムを頼りにしていたのに去られ、
どこへ行こうか、どうしたらいいのか...
それでも生きていかねばならない。

一家を率いて、母もまた、何処にたどり着くか
あてのない仕事を求めて移動してゆくのであった。

ーーーーー
この作品は1962年の封切りですが、
作られたのは22年前の1940年なのです。

その年のアカデミー監督賞、
助演女優賞(母役のジェーン.ダーウエルが受賞)
原作はピューリッツア賞を受賞している。
アメリカ.リアリズムの傑作である。

壊れかけたトラックに十二人もの家族が乗り込んでの長旅。
生活苦と不幸が連続する中、寡黙に耐える小作農のいち農民を
生き生きと演じたヘンリー.フォンダ。

なんと言っても、その母を演ずるダーウエルがすばらしい...
ひたむきな母性、やさしさ、忍耐、演技とは思えない自然体で
演じています。

撮影担当のグレッグ.トーランド(嵐ヶ丘、市民ケーンなど)が
思う存分、リアリズム手法を駆使して、
1930年代の農民の生活を
浮き彫りにして撮っている。

それまで、このようなアメリカの農民の生活を扱った映画は
なかったように思います。
原作もさることながら、映画として扱われ、登場した事への
衝撃が大きかったです。

生々しい映像で見れたことの衝撃です。

自然の猛威と、過酷な資本主意社会の軋轢に
押しつぶされて、さまようオクラホマ農民の姿を
克明に描いています。

出演者達の派手さは何処にもなく、
次々と起こる事件はすごくドラマテイックなのに、
ドキュメンタリーを観るような抑揚感。

私だけでなくきっと、熱くなる映画だと思います。

この映画を観て、アメリカ映画のイメージが変りましたね。
子供達のリアルな芝居にも胸を打たれます.

レンタルショップにあると思います。
ぜひ、ご覧になってください。


1940年製作...
1962年日本公開
監督  ジョン.フォード
原作  スタイン.ベック
撮影  グレッグ.トーランド
音楽  アルフレッド.ニューマン

出演  
ヘンリー.フォンダ

  ジェーン.ダーウエル

 ジョン.キャラダイン