Kさんでしたね。
吾々のゼミで。 あれはいつだったか……。
貴男は突然、何の予告もなしにカミングアウト(告白)なさいましたね。
青天を衝くような 青天の霹靂の思いで、
貴男のマスクが膨らんだり凹へっこんだりしてるのを
「へえー、人はマスクして喋るとこうなるのか……」
と、ポカ~ンと眺めていました。
当初何をおっしゃっているのかとんと解りませんでした。
マスクの上のお顔面を拝みますると、紅潮に埋もれた両まなこが吊り上って、おつむから湯気を噴いているように、なにやら捲くし立てていました。
ワッチューセイ?
そして、帰宅してからいつものように反芻、気づき、振り返りをしてて、やっと深く理解しました。
Kさん、貴男がそんなに長年苦しんでいたとは存じませんでした。
お元気そうに見えたのに……
そんなご病気でしたとは……。
ご愁傷様です。 南無……
そして、気づいた時からわたくしは、あらゆる医学書を読みふけり、なんとかKさんを助けてあげられないものか、と日夜をたがわず治療法を探しまくったのです。
いや、今となっては遅きに失すやも知れませんが、後手に回って、後の祭り、いや手遅れ、いや泥棒に追い銭、じゃなかった泥縄?
いや、どうも美味く言えないが、……ちょっと違う気がしないでもないが、
兎に角、(へえーウサギにツノがあるのか?)
とにかく、今さら乍らで恐縮ですが、蔓延防止の今朝、ようやっとこの案件の調査が完了しましたので、この場を借りて、対処法、治療法をここに目出度く披露させて戴きます。
そうそう、あの時、Kさんは、確かこう仰言っていましたね。
”タンセキ”
と、そう、間違いありません。「胆石」落胆の胆に化石の石。
地獄耳に千里眼を備え持つ吾がスーパーコンピュータ富岳36計のこの頭脳に記憶ミス入力などありえません。それはどこの国際法廷の場でも証言いたします。
そして、顔を歪めながら、貴男は漏らしていたのもメモリーから出力しました。
そうそう、Kさんご自身の内臓を抑えながら
「胆汁が出過ぎて胆嚢に石が出来、時々痛い」……とか。
その時、落石除去のつもりで、そんなに苦しいのなら、助けてやろうかと思い、
そこの胆石の処を、
ぶっ叩いて、石を砕いてしまってあげれば楽になるのではないだろうか?
と、思いずーと、石のあるその一点ばかりを見つめていました。
いしあるところに 道あり。
うまくその胆石に命中すれば、Kさんを救える。
スナイパーかヒットマンになったつもりで、ただ一点を狙う。
狙った獲物は逃さない。 石、石……
その目つきが野獣のように見えたのか、Kさんは慌てて、ふと、ふところを隠しましたが、
私は諦めきれません。
なんとかKさんを救いたい。
いや、その前に、気絶するかも知れんな。
いや、気絶だけで済めばいいが……。
いや、ぶっ叩いて救うよりもっと論理的に救い上げる方法は無いだろうかと方針転換して、日夜昼夜を問わず関連の医学書、文献を読み漁って、蔓延防止の今日、やっとこお目当ての当該資料を入手しましたので、ここに記録し、献上仕ります。
Kさん、読んでる?
これで、もう大丈夫だからね。
これは、医学博士・安保徹教授の「病気は自分で治す」のなかで「結石ができる理由(わけ)」の章に、
「結石ができるのはこれまでは、遺伝とか食事が問題にされてきたが、ストレスが主要因で、自律神経の交感神経が優位な状態が長時間続くと緊張し、おしっこなど排泄や水分補給がおろそかになり、コレステロールやカルシウムが溜まって、真面目で働き過ぎて低体温になり、それが結石に結び付きやすい。だから、適度に休憩取って、こまめに水分補給をすればいい。あ、ただ深酒はNG。アルコールは蒸発するから」
という事が書かれていました。
だから、Kさんこれを診て、この蔓防コロナ禍の今、猫の手を借りたい医療スタッフを胆石で煩わせることなく、ヘルスケア、セルフ・メンタルケアで、自分でできる事は自分で治す。
猫だって、自分のことは自分で治していますよ。
猫いらずを喰って苦しんでいた猫が、ニラのような草を盛んに喰って、吐き出していましたよ。あれは本能でしょうね。
人間も自然治癒、免疫の力を見直して、この時期少しでも自分でできる医療支援からやって、オールジャパンで何とか東京五輪成功させたいもの。
そうそう、日光見ずしてケッコーと言うなかれ、東京五輪見ずして病むなかれ。
Kさん、もう少しです。
頑張りましょう!
苦しんでいる人を診るとほっておけない。見守ってあげようという気持ちが湧くんです。
いやホント。
余計なお世話かもしれませんが……
独りでも多くの弱い人をすくってあげたいのです。
同じ日本人同士ですから。
「待て、そして希望を持て!」
(アレクサンドル-デュマの「モンテクリスト伯」より)
(吟)