ここ豊洲公園の緑の芝生に、未明までしとしと降っていた梅雨の走りと思われる五月雨も、今日は数千人のウォーカー達が勇躍集まってくるというので、彼らに場を明け渡すかのようにして何処かへ立ち去った模様。
日の出とともに、青い空に白混じりの雲、そしてウォーターフロントに浮かぶビル群と水平線上に横たわる長い橋が姿を現した。
どこからともなく続々人がここにやって来る。
この雰囲気は……、そうあの運動会のような活気を帯びた、とても言葉に表しようのないすがすがしく昂ぶったあの空気だ。
さらに新葉新緑の薫風に加えて海からの潮風が、ここに集う人々の血を騒がせる、まるでお祭りのような獺祭(だっさい)か潮騒か。
いよいよ今日はここで「ジャパンウォーク」が行われる。
それは「東京2020オリンピック・パラリンピック応援イベント」と称して障害のある方々も参加できる比較的安全なコース設定になっていて、コースはショートコース4km~ロングコース14kmといずれも豊洲公園がスタート&ゴールになっている。
これまで参加した大会と違って障がいのある方に優しいのが特徴でボランティアも含めた誘導員が多数配置されているし、多目的トイレも随所に見られるコース取り。それに完歩証がここでは点字付のゴール証とユニークだ。
オリンピックは「より速く、より高く、より強く」だがパラリンピックは、「より多くの障がいを乗り越えて」というように今の時代、ダイバーシティ(多様性)を楽しむことも認められている。
ウォーキングという速さを競う種目ではなく健康に重点を置いた有酸素運動がまさにそれにピッタリなのだ。
それも自然の中で楽しみながら。無理なく誰でもできる。
ここで潮風を想起させる昨日5/19のシャシンを貼ります。五感で雰囲気を味わってください。
これが豊洲です。
こういう広大なスペースがあるから車椅子の方々も自由に参加できるという大会環境が整っている。それも特徴の一つです。
さて、受付も終えてもう間もなく出発の時間になりました。
先頭は車椅子の女の子で障がいのある方から順次各コースへと散っていきます。
いってらっしゃい。いい笑顔ですね。
潮の香を含んだ吹き抜ける五月の風が心地いいので快適なウォーキングができそうですね。
汗をかいてもサッと拭き取ってくれるような頼もしい薫風の援軍です。
そうして序盤、吾が脚の馴らし運転をしていると、おや前方に車椅子の親子らしき姿が。
ここは多少の上り坂になっているようでどうやら苦戦している様子。
困っているようなら手助けもするが、よく見ているとどうやら自主トレで鍛えさせているようなのでここは余計な事をせず、車椅子についての勉強をさせてもらいましょう。
こんにちは。(中略~打ち解けてから)この大会を何で知りましたか?
--新聞で見て良さそうだったからこの子に教えたら出たいと言うので。あと友人にも教えたらこれは10kmコースだけど友人は4kmコースに参加しています。
ここではこの子を仮に光一クン(仮名)として歩を進めていきます。
光一君の眼鏡の奥の瞳を見ると、知的なクールさと共に人間的快活さが漂っていました。
ああ、光一クンはお母さんとの愛の絆を汗の思い出として焼き付けておきたいのだなと悟っているように思えました。
と、同時に自分の可能性を試す挑戦者の目でもありました。
がんばれ光一クン! 困ったときはいつでも言ってくれよ。そばに待機しているからな。
いや、それよりも一緒にウォーキングを愉しもうじゃないか。
ん。それにしてもここはどこらへんだろ?
道路標示板が幕がかかってるということは、ここは未だ竣工前、移転前の豊洲新市場か。
落成したらここはこんなにのんびりとウォーキングできないだろうな。
きっとトラックやら人でごった返すに違いない。
ここは多少上り坂になっているな。それでも光一クンは休まず一気に坂上まで漕いだ。漕いだというか両輪の輪っかを腕と手、指で廻して前進した。歩くより大変そうだ。腕の筋肉が要るな。
ほうー、坂の上の雲はこんな眺めなのか……。
車椅子だと地表に近い分だけ照り返しが強くて暑い。が水分補給もほどほどにしないと多機能トイレの場所は限られている。
それでもやっぱり健康づくり体力づくりをお母さんと一緒に苦労したい。
泣かせるじゃないか光一クン。よっしゃ、いい想い出づくりに一役かってやろうじゃないか。
歩道の縁石にタイヤが引っかかってバックしそうになったら後ろから支えてやるから心配いらんぞ。
そうして市場前を過ぎて富士見橋を渡る。
あれはレインボーブリッジかな。
ここで2kmを過ぎたぐらいかな。
東雲運河か。
そして有明一帯へ
有明テニスの森とかは東京五輪に備えて急ピッチで工事中なので窺い知ることは出来ません。
が、パナソニックセンター東京ではあたたかい歓迎のおもてなしで、
ここの目玉、見どころは何でしょう?と尋ねたら、「トーチです」
トーチ?
これかな?
あはははお客さん、ご冗談でしょう。
いや、これは失礼。
近年のオリンピックで使用したトーチが集められている。
すると今度の東京五輪2020もこれらを基に斬新なデザインを編み出すというわけか。
いや、ひょっとするともう決まっているかも知れないな。
そして広々としたコースを辿っていくと
わっ、これはなんともハッピースマイルでおもてなしの美人誘導ボランティアさんかな。元気だか勇気が体中に漲るようだ。
もう、ここでは東京五輪2020の受け入れ準備は万全といったところか。
ここらでスタートから全行程半分の5km付近。
東雲と書いてしののめ。
ところで光一クンはどうしてるかな?
こんなに長距離を手動車椅子で歩いたことがなく、どうやら両指にマメができて、どうしようかと悩んでいた。
もう疲れたし、指は痛いし……。
もう棄権しようかどうしようか逡巡している様子。
いい見晴らしだね。
来てよかったね。
そして先を見つめてから言った。
一言「やる」
そうだよな。
二本の足で歩いても足にマメができて歩きづらい思いをしたことがあるが、光一クンの言うように途中で休んだりやめたら余計辛くなるな、確かに。
よし、じゃバンドエイド持ってるからこれを巻いて最後まで完歩しよう。
ゴクン。水分補給してから覚悟を決めたようだ。
よし、もう一息だ。やるぞ。
東雲運河にかかる木遣り橋
ここまでくればゴールはもう近いぞ。がんばれ光一クン!
やったぁ~
やったね、光一クン。見事10km車椅子で完歩。
体操の池谷選手からもお褒めの言葉をかけてもらい、ちびっこからもすごいなとー羨望されて、やや表情が和らぐ光一クン。
お疲れ様でした。
大会関係者の皆様もお疲れ様でした。
またひとつ乗り越えられた。ありがとう。 (了)



























