A-Select
















Song Name; Where Did Our Love Go
Artist; Stephanie Mckay





http://www.youtube.com/watch?v=NZL-MmX0xdQ







「Swingから始めませんか」





確か、そんな風に言われたのが最初だった。





見慣れない顔だと思った。
でも、懐かしい顔だと思った。




黙って弾き始める私に、彼はついてきた。




初めから知っていたかのように、呼吸が合って。
しかけると、知ってるくせに知らんふりしてウワテを取って。





「面白いヒト」





そう思った。





* * *





「今夜も、フラニーで」





そう言って、今朝、別れた。





フラニーでは今日も、何事も無かったように、またセッションを始めるだろう。





初めてのような顔をして、ぴったりの呼吸で。
周りがうっとりするような、Swingで。





すべてはSwingからだと、そんなロマンスを信じるために。





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「Autumn」からの1作目はこれ。

「Autumn」に入れた曲は、ストーリーをつけてるものも多いので、

ちょこちょこ紹介予定ですが、やっぱり最初は何となく、これ、かな。




Stephanie Mckayの中でも、「この曲はダントツに好き」と思ってます。

タイトルとこのSwing感が。




ちなみに、「フラニー」にピンと来た方。
私、その小説、結構好きです。
この曲を聴いていたら、「フラニー」という名前がぴったりな気がして登場してもらいました。




あ。それから。

基本的にストーリーはほとんど、フィクションですので(笑)。










A-Select-Autumn2












A-Select-Autumn1













【Autumn】



一年で一番美しい季節はいつかと問われたら、私は迷わず、”秋”とこたえます。



ふと目覚めた朝に少し寒さを感じた時、赤や黄色に色づいた木々を見た時、
月の淡い光が心に沁みた時、秋という季節の、深く美しい息づかいを感じるからです。



A-Selectの"Season Collection" 4作目にあたるこの「Autumn」では、
そんな秋の奥深さと美しさを感じる音楽を集めてみました。



Feel the Autumn.
Feel the Music.



心で感じる、秋と音楽を。




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1. "SERENITY" E.S.T.
秋のはじまり。木々が色づいてきた時、その静けさや奥深さを感じる時。
私はスベンソンのピアノを聴きたくなります。一つ一つの音の丁寧さが、秋を思わせるこの曲を。
まずはしっとり、秋を感じてください。




2. "What Is Your Problem?" Annekei
「Spring」にも登場した、Annekeiからの1曲。
二人の何かを掛け違えてしまった時、何がそうさせたかもわからず、
でももう、何かが決定的に違ってしまうとわかった時。
その瞬間が、実は一番、辛いのかもしれません。
秋という季節は、なぜか別れを予感させる。そんなふとした不安を、Annekeiが瑞々しく歌い上げた1曲です。




3. "Englishman In New York" Sting
Stingのこの曲はいかにもNYらしい。
私がこの曲を初めて聴いたとき、私の知るNYの空気が一瞬で蘇りました。
Jazzアレンジの中にも、確実に残るStingの世界観。ここに、彼の音楽の強さを感じます。
都会の秋を歩く時、お供させたい1曲です。




4. "Real Love" Karin( Mary J.Blige)
日曜日の朝、私以外に誰もいなかったあるカフェで、一目惚れならぬ、一聴き惚れしてしまった曲。
Karinの歌うこのバージョンが色っぽくて、実は、Mary J.Bligeが歌うのよりずっと好き(笑)。
あなたはあなたの、"Real Love"、ちゃんと探せてますか?




5. "今夜はブギー・バック(nice vocal)" 小沢健二
懐かしい曲、そんなイメージだと思います。
この曲を初めて聴いたとき、実は若干衝撃を受けました。何ともいえないこの曖昧なテイストに。
当時の衝撃が忘れられず、結局今でも良く聴いています。

曖昧な秋という季節に、何も考えずに聴きたい1曲です。




6. "When October Goes" Chihiro Yamanaka Trio
運命の出会いというのが、誰の人生にも一度や二度はあると思います。
山中千尋さんが弾くJazzは、私にとってはそんな出会い。
山中さんの曲を聴いて、それまで毛嫌いしていたJazzという領域を見てみたいと思ったし、
そう思ったからこそ、今の私の音楽性があるのだと思います。
ポイントは、Jazzらしくあり過ぎないこと。そしてそれが、今でも私がJazzに興味を抱き続ける理由です。




7. "Where Did Our Love Go?" Stephanie Mckay
しびれる曲。久しぶりにそんな曲に出会えたと、そう思いました。
Stephanie Mckayは気になっていたけど、これだ、と思う。そんな感覚。
"Where Did Our Love Go?"という言い回しもお気に入りです。




8. "Torn" Natalie Imbruglia
1998年、オーストラリアに1ヶ月滞在していた時に、毎日ラジオから流れてきた曲。
もう10年以上も大好きな曲。
歌詞の切なさとは裏腹に、何とも言えない爽やかさに、私はなぜか晴れた秋の空を感じます。
晴れた空と、涼しい風、秋の匂い。そんな休日に、流しておきたい一曲です。




9. "Rain" Razah
私が最近注目している、Razahから。
"Rain"というタイトルだけど、私には秋の風に包まれた海が見えてくるんです。
秋の海は、すごく優しい。冷たい水が、温かくさえ感じる。
湘南育ちの私が、湘南の海のそばで聴きたいと思う、一曲です。




10. "Autumn Leaves" Bill Evans
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人なり」。
EvansのAutumn Leavesを聴くと、私はこの芭蕉の句を思い出します。
結局、留まっているものなど何も無い。
秋に舞う枯葉のように、人生がはかなく移ろうものだとするならば、その移ろいを楽しむことができるぐらい、
いつも自分に余裕を持っていたい。芭蕉のように、Evansのように、時を感じるための一曲です。




11. "My all" Jose Molina, Mariah Carey & Orchestra Sinfonica Italiana
たっぷりとしたラブソング。たまには、こういうのも、聴いておかないと(笑)。
どんなに頑張ったところで、女性なんて、所詮こんなものではないかと、

この曲を聴くといつも私は、そんな風に思ってしまいます。
"I give my all to have just one more night with you."
そして、こう言ってしまうところこそが、女性の強さかもしれないな、と。




12. "Departure Bay" Diana Krall
Diana Krallが、旦那様のElvis Costelloと、はじめて本腰を入れて作ったアルバムからの1曲。
Costelloの色が滲み出るこの曲は、私が秋に欠かさず聴く曲です。
秋の夜に、ひとり何となく、昔を思う。
楽しい思い出も、寂しい思い出も、恋しい思い出も、全部大切な思い出として残すために。
そんな夜に、聴いておきたい一曲です。




13. "11:07 Pm" Dizzy Mizz Lizzy
最後は、Dizzy Mizz Lizzyから、素敵で切ない一曲を。
これを聴いていると、色々な人の、色々な11:07Pmの物語が、見えてくる気がします。
今日のあなたの11:07Pm。どこで、何をしていますか?どんな物語を、生きていますか?




☆今回はジャケットデザイン2種類!どうしても両方とも捨てがたくて、2つ作ってもらいました☆


★ちなみに、写真とデザインを担当していただいてる、Katsura MizunoさんのFlickrページはこちらです。

 すごい素敵な写真達ばかりですよー。是非一度、ご覧ください!→ www.flickr.com/photos/kaymiz/  ★




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A-Select Producer:Asako Toma

Photo & Design:Katsura Mizuno






A-Select











Song Name; BLUE
Artist; 山根麻衣





http://www.youtube.com/watch?v=03qBqP2I4p8&feature=related





辿り着くはずもない場所に、辿り着いてしまったとき、
人はまず、戸惑い、不安を覚える。



しかしその場所は、最初から辿り着くべき場所であって、
約束されていた場所であって、だから、どこにいても
必ず、結局は辿り着いてしまう。




そして、ここが私の来るべき場所だったのだ、と
すぐにそう、思い直す。




人はいつでも怖がりで、少し寂しがりやで、だから独りでは辿り着けないと、そう思う。




でも、本当に辿り着くべき場所には、多分、人は独りで向かう。
誰と一緒でもなく、ただ、独りで。




なぜならそこは、勇気と希望を身につけたモノだけが辿り着ける場所だから。




ただ、自分だけが、辿りつくべき場所だから。






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本当は秋盤を載せたいのですが、デザインがもうちょっとかかりそうなので、

ひとまず、Special続きで。




この曲がすごい好きです。





最近の心境に、ちょっぴり近いので。とりあえず、紹介。











A-Select











Song Name :Marry Me ?
Artist name: Dreams Come True





http://www.youtube.com/watch?v=3iAS3-yFkkU





目覚めるとコーヒーの匂いがした。





きっとまた、オーガニックコーヒーを入れているんだろう。

そんな風に思いながら少し目を開ける。





うしろ姿が見える。
白いシャツにジーンズを履いた、私の大好きなうしろ姿。
いつもの鼻歌を歌って、パンケーキを焼くうしろ姿。





私はそして、また安堵に包まれる。
安堵に包まれ、また、うとうとする。





* * *





私はずっと一人で生きてきた。





人並みに恋はしたし、離れたくないと思ったことは何度もある。
でも、結局誰かと一緒に生きていくと言うことを私は選べなかった。





怖かった。ただ、怖かったのだ。




誰かと一緒にいることの幸せ、そんな幸せはそのうち消えてなくなって

私はいつか干からびた魚のようになってしまう。





そして水を欲してしまう。
一人で、自由気ままに泳ぐための水を。




誰かと一緒に生きることを選ぼうとするたびに、その恐怖と私は戦って、
結局いつも、負けていた。




彼に会うまでは。




* * *




「毎朝、一緒にコーヒーを飲まないか。」




昨日、彼はそう言った。



「君のために入れると、本当に美味しいコーヒーができるんだ。
 だから、これからは毎朝、僕と一緒にコーヒーを飲まないか。」




そう言って、彼は彼がとても選びそうな、ブルーのコーヒーカップと
彼がとても選びそうな、小さなダイヤの指輪をテーブルの上に置いた。




* * *




私は彼の入れたコーヒーの匂いがとても好きだ。




できれば毎日、この匂いに包まれて目覚めたい。
本気でそう思う。




これからの人生をとか、一生一緒にとか、そんな風に言われたら、
私がまた、恐怖と戦う事を彼は知っている。




一緒にコーヒーを飲まないか。




だから彼はそんな風に言ったのだ。

だから私はこんな風に包まれているのだ。




私は彼のコーヒーの匂いが好きだ。
毎日、この匂いに包まれたい。
心からそう思った。




だから、私から。




Hey, Sweetie. Marry me ?





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このストーリーをアップした後、「女子は、こんなプロポーズが好みなのか?」と、

何人かの男の子の友達に言われて、ちょっぴり話題になったのでご紹介です(笑)。





こんなまどろっこしいのを好む女子は少ないと思いますけど(笑)、

言いたいのはそこじゃなくて、って感じで。





まあ、こういう事に、正解はないものですから。


















A-Select-ラフマニノフ










Song Name : Piano Concerto No.2 in c-minor Op.18 
composer name: Sergey Vasilievich Rakhmaninov



■第1楽章:Nobuyuki Tsujii

http://www.youtube.com/watch?v=ZcSASogJXRA&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=yBfJxdjjxK0&feature=related


■第2楽章:Noriko Ogawa
http://www.youtube.com/watch?v=sqwVHE_qDZQ

http://www.youtube.com/watch?v=SEk3rVlitFA&feature=related


■第3楽章:Junko Nisikawa

http://www.youtube.com/watch?v=s1pBt_t8FGo




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「僕は、ラフマニノフが好きなんだ。」




そんな名前の作曲家がいることすら知らなかった。
クラシックには興味もなかったし、知っている音楽家なんて、ショパン、ベートーベン、バッハ。
それぐらいだったけれど。




* * *





ラフマニノフピアノ協奏曲第2番。
初夏のサントリーホールで、彼が一番好きだったピアノ協奏曲を聴いている。
1楽章の喧騒。ダイナミックなテーマが展開される。





私は目をつむった。
隣には、彼がいる。
ここに来た時だけは、そう思うようにしている。
ここでラフマニノフを聴く時だけは、過去に戻って。





澄んだ2楽章。
私が一番好きなフルートとピアノの澄んだメロディが始まった。




今日は、ここに来る時によく待ち合わせした全日空ホテルのラウンジに行った。
ラウンジでは、よく二人でワインを飲んだ。
私はお酒が弱いけれど、二人で楽しめるからワインだけはとても好きだった。




裏のKIHACHI CAFEではよくお茶をした。
季節が変わっていくのを、静かに感じる二人のお気に入りのカフェだった。




旬香亭の小皿料理もよく食べた。
美しい食べ物と美しいお皿が気に入ったと言う私を、何度も誘ってくれた。



あの日も、ラフマニノフを聴きにくるはずだった。
二人の好きなラフマニノフを。


私はいつものようにラウンジで待っていた。
寒い冬に、暖かい場所から帰ってくる彼を待っていた。
必ず帰ってくると、そう信じて待っていたけれど。





* * *




彼が一番好きだった3楽章が始まる。
ピアノの力強さと切ないメロディの両方が交じり合う3楽章。
それはまるで、彼のようだった。



きっと、隣で聴いている。目をつぶりながらそう思った。
彼がここに来ないはずがない。

あんなに好きだったのだから。




あの日もきっと、空の上で聴いていたはずで、
きっと今も、隣で、聴いているはずなのだから。





だから今日だけは、二人の好きだったラフマニノフを。



今日だけは、私の隣で。

私達の好きだったラフマニノフを。





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せっかく、何名かの方に、読者になっていただいので(ありがとうございます!)、

季節CDとは関係ないものの、mixiで、評判の良かったストーリーを、

<Special>版として、いくつか紹介していこうと思います。




1作目は、ラフマニノフのピアノコンチェルト2番。

これは、mixiの読者の方がすごく気に入ってくれたストーリーです。




このラフマニノフのピアノコンチェルト2番は、私がピアノコンチェルトの中で、ダントツに好きな曲です。

どの作曲家のどの曲よりも、私はラフマニノフのこれが、一番好き。

そして中でも、2楽章が一番好きです。




サントリーホールにも、何度もこのコンチェルトを聴きに行っています。

このストーリーも、いつだったか、サントリーホールに行ったときに、ふと思い浮かんだお話です。




YouTubeに落ちていた、時の人、辻井さんの1楽章も載せてみました。

是非、全楽章、聴いてみてください☆