子役出身のアクションスター、ルイス・ファンが本格派のカンフーをみせるアクション作品。
清朝末期の中国。
南方の海を中心に暴れる海賊の頭領である蔡炎は英国商船の襲撃を狙うが、反対に英国軍の罠にあい、返り討ちにあってしまう。
敗走する蔡炎に駆け寄る腹心の徐昭であったが、その徐昭こそが蔡炎を裏切り、海賊の頭領の座を狙っていた張本人であった。
徐昭は英国軍人スティーブンと手を組み、蔡炎の座を奪う引き換えに国宝の密輸の手助けをする約束を交わしていたのである。
不意を突かれ深手を負った蔡炎は徐昭との戦いの末に崖から落下して行方不明となってしまう。
その頃南方の集落である三唐では南少林一派の方丈、彗遠がこの地に根城となる寺を建立すべく、布教活動をしていた。
鍛えた少林寺の技をみせ、日銭を稼ぐ弟子たち。かつて彗遠の弟子だったが還俗した智章はそんな彼らの自己犠牲的な精神がうんざりしており、寺の建立は無理だと彗遠たちに訴える。
そんなある日。彗遠たちは川辺に打ち上げられていた蔡炎を発見する。
重傷を負いながらも一命を取り留めていた蔡炎は彗遠たちが根城とする寺院で介抱され、治療をうける。
やがて目が覚めた蔡炎は彗遠たちの姿に驚き焦るのだが、そんな蔡炎の手を取り何かを察した彗遠は困惑する彼に自分の弟子になるよう勧める。
なし崩し的に弟子にされてしまった蔡炎は彗遠より仏名として『智清』と名づけられ、兄弟子たちとの布教や托鉢活動に同行させられる。
何度か脱走も企てる智清だが、その度に目の前にはいつの間にか彗遠が現れ、彼の行った行動についての良心や正義感について語られる。
そんな彗遠を智清は困惑しながらもどこかに引っ掛かるものを感じ出す。
一方、蔡炎を倒し頭領の座を奪った徐昭はスティーブンと組み国宝である『至尊宝印』を強奪すると宣言。
蔡炎の配下だった蒼月は、徐昭の企みに反旗を翻すが既に蔡炎の部下たちの殆どは徐昭についていた。
裏切り者とされた蒼月は徐昭に命を狙われ、唯一ついてきた仲間の犠牲を払いながらも逃げ出すのだが、刺客に追われてしまう。
村にやってきて身を隠す蒼月を追って、追いかけてきた刺客たちは村人たちを人質にとって彼女の命を差し出すよう迫る。
居合わせた彗遠たちは彼らに改心を求めるのだが、人質を殺そうとした彼らに彗遠たちは拳法を駆使して戦い、彼らを撃退する。
その争いのなかで智清は隠れていた蒼月を発見する。
彼女から徐昭の企みを聞いた智清は印鑑を奪い、自ら頭領の座に帰り着くためにあえて彗遠らに蒼月の口からその計画を話すよう仕向ける。
蒼月から知らされたことに宝を奪回するか静観するか兄弟子たちの意見は分かれ、彗遠は智清にその選択権を委ねるのだった。
印を取り戻したい智清の意見により、多勢に無勢な徐昭たちの海賊とスティーブンの軍兵たちが待ち受ける海賊船にあえて奇襲攻撃を仕掛ける智清たち。
徐昭から奪いとった印は実は彼らが来ることを想定して作っていた偽物であった。
たちまち囲まれる彗遠らであったが、それでも無双の強さをみせ、徐昭が手落とした本物の至尊宝印を智清は奪い取り高笑いを浮かべる。
しかしそこをスティーブンの銃口が狙いを定める。
智清を狙った銃撃の前に彗遠は自ら盾となって彼を守ると、呆然とする智清たちを早く逃がすよう智章たちに促す。
辛くも脱出に成功した智清たちであったが、その船のなかで致命傷をおっていた彗遠は智清が元から海賊であったことを知っていた上で助けていたことを弟子たちの前で告白。
そして智清には善良なる心があり、それを恐れるあまりに悪を演じているに過ぎないと諭し、兄弟子たちと共に南少林を盛り立ててくれと残し息絶える。
そして智清に想いを寄せ、致命傷を負いながらも彼を守るために戦った蒼月もまた智清の腕のなかで静かに息を引き取る。
二人を荼毘にふせ、それぞれに想いを果てる智清たち。
二人の死をもって智清は蔡炎としての心をすて、少林寺の智清として戦うことを誓うのだった。
その頃、村落には印を奪われた徐昭たちが強襲し、村人たちを人質にして智清たちを三日以内に呼び出すよう宣告する。
己の宿敵と運命に決着をつけるため戦いに挑む智清。そして師の仇と南少林寺の誇りのために智清と共に戦うことを決意する兄弟子たち。
圧倒的不利な状況のなか智清らは徐昭が待ち受ける集落場へやってくるのだが…
本格派カンフーアクションスター、ルイス・ファンがみせる王道カンフーアクション作品。
『葉問』シリーズやマニアックなところでは実写版『力王』の主演で知る人ぞ知るアクションスター、ルイス・ファン。
名前は知らなくても顔とアクションに関してはみたことがあるという方もいるだろう。
そんな彼はカンフースターでありスタントマン出身で、ひげ面で太っちょなファン・ムイサンを父親にもち、幼い頃から本格的なカンフーを習得してきた生粋の二世代アクションスターである。
ちなみにファン・ムイサンはその体格からサモハンのダブルを務めたり、体格の大きな俳優の格闘シーンの吹き替えを担当するなど結構ポテンシャル高い俳優である。
そんな父親をもつファンは子どもの頃から本格的なカンフーを習得してきた生粋の二世代アクションスターで、ジェット・リーやドニー・イェンらとも肩を並べるポテンシャルの持ち主。テレビシリーズや日本未公開作品が多いが、そこまで知られてないながらも目の肥えたアクションスターファンにはお馴染みなかたもいるのでないだろうか?
本作はストーリー上は悪者だった主人公が仇敵となる部下に裏切られ、重傷を負ったのちに少林寺に拾われて修行の最中で改心し、真の敵に立ち向かっていくという流れなのだが、このプロットはよくよくみるとアンディ・ラウ主演でジャッキー・チェンも特別出演した『新・少林寺』の設定とよく似ている。
本作も『新・少林寺』ほど濃厚ではないが、部下の裏切り、少林寺僧たちの自己犠牲の戦い様、主人公の改心というドラマ性はちゃんと描かれていてなおかつトータルの時間も70分ほどと短め。
言うなれば『新・少林寺』での描き方で余計なサイドストーリーを思いきり排除したスリムな感じだろうか。
出てくる僧も主人公ふくめ5名とこじんまりしていてまさに『新・少林寺』の縮小版という感じに見えなくもない。
とはいえ劣化している感じではなく、ちゃんとその筋道通りにドラマもちゃんと描いているところは評価したいとこである。
アクション的には主人公のルイス・ファンをはじめ、ラスボスにはこれまた実力派で『新・少林寺』にも出演していたション・シンシン(熊欣欣)が起用されており、この二人の一騎討ちがメイン。
そして少林寺の僧たちも結構レベルの高い格闘シーンを見せていて、海賊の部下たちを相手にみせる太極拳の技や硬気功の技などワイヤーの補助こそあるが、意外に見応えある。
クライマックスではようやく本気印のルイス・ファン対ション・シンシン戦が見れるもののこれが完全決着ではないのが惜しいところ。
ラストが仏教らしい教訓で終わらせているのは評価がわかれそうなところである。
本編自体のトータルランニングが短いので、サクッと見易いところではあるが、意外に主軸に関してはドラマが深掘りされていてそれなりの引き込みはある。
ただ主人公たちに味方する人物たちのバックボーンが描き足りていないと思われるところもあって、出演する俳優陣こそ知名度は低いもののもっと継ぎ足してもよかったのではと感じるところ。
題名にある金剛拳は特にこれという表現はないが、数多ある少林寺亜流作品としてはなかなか秀作な作品ではないだろうか
評価…★★★★
(ドラマもタイトにアクションもコンパクトに。それでもそこまで劣化した印象はないのは評価したいところ)
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