ジェット・リーのデビュー作として空前の大ヒットとなったカンフー映画をリブートしたスペクタクルアクション。

1912年。辛亥革命後の中国。清朝倒れた後中国は戦乱の過度期になり、各地で軍閥による反乱が相次いでいた。
ここ河南省でも困窮する民を尻目に軍閥による戦争が続発。死屍累々の山に少林寺の僧たちが祈りを捧げる横で登封城を逐われた霍龍の軍勢は多大な犠牲を払いながら少林寺へと駆け込んでくる。

少林寺に駆け込んだ霍龍を追って曹蛮率いる軍勢が雪崩込んでくるが、浄能率いる少林寺僧たちは霍龍を守るため彼らと対峙する。
館主である方丈は衆生救済を掲げ曹蛮を牽制するのだがそこに軍の総指揮である候杰が現れる。

霍龍は城と財産の眠る地図を明け渡し、候杰に命乞いするのだが、候杰は方丈の目の前で霍龍を背後から射殺。更に少林寺の看板に『武の総本山恐るるに足らず』という落書きをして挑発する。
いきり立つ浄空らを前に傲慢さを露にする候杰はすぐに霍龍を撃たなかった曹蛮に己の甘さを説くのだった。

その後凱旋する候杰の前に総指揮の宋虎将軍が現れる。
前線に出ず、戦争後の利益分配だけに現れる彼を曹蛮もそして内心候杰も快くは思ってはいなかったが、戦火を上げた候杰の活躍に宋は喜び、勢いに任せて自身の息子と候杰の幼い長女勝男の婚約の儀を始めようと言い出す。
動揺する候杰を尻目に宋は意気揚々と凱旋するのだった。

その頃貧困に喘ぐ民の様子を気にかける浄海と浄空は民を救おうと仲間同士で昔の義賊を真似て、軍部から米を盗み出し、密かに民に分け与える。
喜ぶ姿に満足した彼らは逐一義賊行動を繰り返すのだった。

数日後。宋の息子と勝男の婚約の儀の当日。
候杰はある思いを抱いていた。
宋が戦火をあげて直ぐに利益のことを言わないのは利益を独占使用としているのではないか?そして自身の命を狙っているのではないか?と。
候杰は殺られる前に殺ることにし、曹蛮に宋の暗殺計画を画策し手配させる。
宋にとって妹でもある妻の顔夕から止めるように言われるも、候杰の決心は揺らぐことなく、せめて子供の前で殺さないようにと言うしかなかった。

いざ会食となり、無事婚約の契約を交わす二人。平和で和やかな空気の中、宋は意外にも戦争で得た利益をそのまま候杰に譲り渡すと言い出す。想定外の事に動揺するなかで宋は現役を退くと共に後に息子が候杰の跡を継げば自ずと財産は手に入るとし未来を託すように親愛の情を現すのだが、部下の持ってきた電報により状況は一変する。

そこには候杰の裏切りを示す内容が書かれてあった。
激昂と共に嘆く宋に候杰は銃弾を撃ち込むがそれと同時に候杰が知らない刺客たちが襲いかかる。
そう曹蛮が候杰を裏切り、全てを奪おうと画策していたのだった。

刺客ソルントの襲撃を受けて、顔夕は傷を負い殺されそうになるも通りがかった浄海らに助けられ少林寺に運び込まれる。
そして一人逃げる勝男だったが刺客の操る馬車にはねられて瀕死の状態に。
深手を負いながらも候杰は勝男を抱えて逃げるがソルントたちの激しい追跡によって崖下に転落。虫の息の勝男を救ってもらうようかつて愚弄し、蔑んだ少林寺に助けを求める。

しかし必死の治療の甲斐もなく勝男は息を引き取り、顔夕はそれを候杰のせいだと責め立てる。慟哭する候杰は勝男の死を受け入れることができず暴れまわるが浄能らによって治められ気絶するのだった。

勝男の死に加え、全てを失って脱け殻のようになった候杰はさ迷い猪の罠に嵌まって落とし穴に落ちてしまう。
そこに顔を出してきたのは少林寺の御飯番をしている悟道という男であった。
穴の中で自身の行いを見つめ直す候杰は徐々に虚無感に見舞われるのだった。

その頃行方不明となっている候杰に対して、実権を握った曹蛮は賞金をかけて彼をお尋ね者にしていた。更に欧米列強の鉄道敷布計画を強力な武器と引き換えに後押しし、反対する派閥や候杰の一派を次々に粛清していく。

数日後。穴から出た候杰は寺を去った顔夕の代わりに亡くなった勝男の遺体処理を悟道から勧められる。火葬にし遺骨を胸にした候杰は決心したかのように自らの髪を切り、坊主となって少林寺の門の前に膝まずき、出家して仏門へと入門することを請うのだった。

傲慢な候杰を知る浄能たちは彼の入門に難色を示すのだが、方丈は彼の真に悟りを開く道も近いことを感じ入門を許可。候杰は悟道にならって子供の僧たちと共に難民たちの世話をし、少林寺の教えを学ぶことで徐々に悟りに目覚めていく。
その姿に浄能たちも彼を認め始め、一緒に武術の鍛練に加え学び始めるのであった。
やがて仏格を認められた候杰は新たに『浄覚』と名乗り少林寺僧として衆生を救う使命を背負う。

その頃、難民たちの間では働き手である男たちが報酬につられ仕事に出たっきり帰ってこないという事件が多発する。
状況を聞いた浄覚は森の奥で多くの死体を埋めようとしている現場を見つける。
それは曹蛮が鉄道敷布を隠れ蓑に財宝を掘りあて列強に売り込んでいると同時にその口封じとして工夫たちを虐殺し埋めようとしていた事実であった。

浄覚が一喝し残された民を逃がすが、未だ曹蛮のアジトには多くの工夫が残っていた。
更にこれがきっかけで候杰が少林寺に匿われていることが曹蛮に知られる。

大軍勢を率いて少林寺にやってくる曹蛮。浄覚は自らが囮となって囚われている工夫たちの救出を浄能らに提案する。
残忍な曹蛮は顔夕を人質にし浄覚の目の前で水責めにするなど浄覚の心を揺さぶるが、その隙に浄空らが奇襲攻撃し、工夫たちや浄覚、顔夕を救い出すことに成功するが、深手をおった浄能は全員を逃がすため盾となり死亡する。

もはや曹蛮の少林寺への総攻撃は避けられない状況であった。
浄覚は悟道に民の避難と顔夕のための指導者を託し、自らは曹蛮を改心させるために大軍勢を迎え撃つ。
曹蛮軍が雪崩れ込み、少林寺僧たちとの死闘が繰り広げられる中、列強の軍勢が全ての証拠をなくすため曹蛮たちもろとも容赦ない砲撃で少林寺を破壊していく。
その中で対峙した浄覚と曹蛮。
戦いながら改心を説く浄覚に曹蛮は抵抗するがそんな二人を列強の爆撃が容赦なく襲いかかる。果たして二人の対決の行方は。そして死闘の行方は…

アンディ・ラウら香港映画界の重鎮たちによって新たな解釈で描かれた『少林寺』のリメイク版。

本物の少林寺僧や武術チャンピオンたちが出演し、本物の少林拳の凄みと集団アクションの迫力で大ヒットとなった『少林寺』。
本作の主演となったジェット・リーは一躍時の人となり今やハリウッドでも名だたる格闘スターとなった。

本作はおよそ30年ぶりとなるリメイク作品である。
元の作品がいわゆる少林寺のアクション、超人的な身体能力や特徴的な拳法を主体とした娯楽性の高いものであったが、現代では様々な作品で少林寺に関する作品やカンフーが描かれたこともあってアクションというよりは少林寺に生きる人間の死生観、哲学を前面に押し出しておりドラマ性が濃くなっている。

それを象徴するかのように主役となったのは香港映画でもベテランのアクションスターでもあるアンディ・ラウ。
前作が少年の成長物語だった内容に対し、彼の役は傲慢で残忍な軍閥の将軍。そんな彼が裏切りや愛する家族との別れを通じて悟りを開くという内容。
物語の節々に人生観を考えさせるような言葉や出来事が起こり、自己犠牲や虚無感といった事で仏に仕える者の生きざま、人間としてどう生きるべきかというのを表しているようである。

こうして見ると非常に難しそうにも見えるが、もちろん哲学的なことだけでなく、『少林寺』オリジナルにも負けないアクションも健在。

主演であるアンディ・ラウは武術指導であるコリー・ユンの師事で少林拳の基礎であり極意でもある『七星拳』を学び、劇中でも少年僧と共に見事な演武をみせ、クライマックスでは20歳以上年下のニコラス・ツェーと激しい格闘シーンを見せるなど当時50前とは思えない身体能力でアクションシーンを演じた。

他にも実力派のウー・ジンや実際に少林寺の門弟で師範をしていたシン・ユー、武術指導としても名高い熊欣欣らも壮絶な格闘シーンを見せている。
特にクライマックスのシン・ユー対熊欣欣の壮絶さは語り草。
他にもオリジナルの『少林寺』で師父を演じたユエ・ハイが最高座主の方丈を演じ、クライマックスに壮絶な戦いを見せており、現役さながらの無双ぶりを発揮。

そんな中で特に注目なのは敵役ニコラス・ツェーとジャッキー・チェンの存在。
ニコラス・ツェーは自身の経歴的にも珍しい残虐非道な悪役を演じ、元々のテコンドーの素養を活かした足技を見せている。

ジャッキーは今回は特別出演枠ではあるが、主人公を導く重要な役どころであり、カンフーはできないとしながらも厨房人らしい動きと物を使ったいつものジャッキーらしいユニークな格闘シーンを見せてくれている。

本作がアクション面でオリジナルと最も違うのは本物の爆破などを活かしたダイナミックなスペクタクルアクションである。
このために作られた少林寺のセットを実際に砲撃し、その多大な爆発シーン全て本物。
爆風で飛ばされる様も本物である。この甚大な破壊シーンが後の切ないラストをより際立たせる役目も担っている。

クライマックスはとにかく死亡フラグが立ちまくり、いかに壮絶に散るかみたいな感じで多少やり過ぎにも思えアンディ・ラウが命を賭して改心をしつこく説くのもかなりドラマ性に偏重している感じでアクションが薄まってる感もあるが、そもそもがアクションは味付けの一つに過ぎず、作品を通じて人生観を問うのが本作の最大テーマともいえよう。

ラストに流れる雪の降る少林寺と絶景とアンディ・ラウの歌声。横に流れる歌詞もだがそれなしで聴いていても本作を最後まで観ていたらふと涙が出てしまいそうになるほどアクションだけでなく楽しめ考えさせられる深い作品である。

評価…★★★★★
(豪華な出演者に負けず、濃厚なドラマとアクションはオリジナルとはまた違う魅力に溢れています。)


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