最新作も公開された人気アクションシリーズ第9弾。

1989年。ドミニクの父ジャックはカーレーサーとして活躍していたが、最終レース後半にライバルとの激しいデッドヒートとマシントラブルによってスピンし、激突して炎上。ビットにいたドミニクの目の前で死んでしまう。

時は流れ、国際犯罪者サイファーとの壮絶な死闘から5年。
ドミニクとその妻レティは山奥の農場で、ドミニクと元恋人エレナとの間にできたリトル・ブライアンと共に静かに生活していた。
そんなある日、ドミニクを訪ねて仲間のローマンやテス達がやってくる。

彼らには等しく同じ内容の動画が送られており、それは何者かによってこれまでドミニクらに指令を下していたエージェント、Mr.ノーバディが襲われ、彼が『ある積み荷』と共に行方不明になっているという内容であった。
彼と積み荷をのせた輸送機は中南米のモンテキントに墜落しており、その映像はドミニクらファミリーの面々にしか送られていなかった。

ローマンやテスは救い出すことを決意し、レティも彼らと同行することを決めるが、かつての敵サイファーが絡んでいるとみられるこの事件にドミニクは乗り気ではなく、リトル・ブライアンと共に残ることを告げる。
しかし、その夜襲撃映像を繰り返しみていたドミニクは一瞬だが、そこにドミニクファミリーしかもっていないはずの十字架のネックレスが写り込んでいるのを発見。
血相を変えたドミニクは出発寸前のレティたちと合流し、モンテキントに向かう。

発信器を頼りに輸送機の墜落現場に辿り着いた一行は機体の頑丈なボックスの中から奇妙な丸いオブジェを見つけ出す。すると彼らを取り囲むように武装集団の襲撃を受ける。
罠だと気付き、逃げるドミニクたちだが、そんな彼らを段違いの速さで追いかけてくる影が一人。
手放したオブジェを悠々と手に取りこちらを見つめる男。それはドミニクの実弟であるジェイコブであった。

ジェイコブは車で崖からダイブすると飛んできたドローンに磁石のようなものでくっつきそのまま飛んでいく。
ドミニクは弟を追い、追手をふりきるため切り立った崖の上から車で決死のジャンプを敢行。ギリギリで向こう側に飛び移るもジェイコブの姿は既になかった。
駆けつけたFBIのマイケルに助けられ無事モンテキントから脱出したドミニクたち。その帰路でドミニクは弟ジェイコブとの因縁を語り始める。

遡って1989年。父ジャックが亡くなり、挑発されたジェイコブにかわってドミニクが相手のレーサーを殴り倒し、傷害の罪で刑務所へと収監されていく

変わって現在。
ジェイコブは某国の元首の息子オットー、更にドミニク因縁の敵サイファーと手を組んでいた。
ジェイコブが回収してきた機器は通称『アリエス』とよぱれており、二つに分かれている残りのパーツはスコットランドのエジンバラに保管されていた。
並々ならぬ兄への憎悪をみせるジェイコブの様子をみたサイファーは彼をけしかけて残りのパーツを奪いさることで兄を越えることができると煽る。

カスピ海にある秘密基地に移動してきたドミニクたちはそこで、盟友ブライアンの妻であり、ドミニクの妹であるミアと合流。
ミアはジェイコブが兄に勘当されたあとも連絡を取り合っていたが、そんな二人の因縁を終わらせるため二人の子供をブライアンに任せ、彼女はファミリーとの行動を選択したのだった

ドミニクたちは情報を収集していくうちにジェイコブが奪った『アリエス』が人工衛星を経由して全世界のコンピューターをハッキングし意のままに操ることができる危険なものであることが判明、さらにその起動には『キー』が必要ながら未だそれが行方不明であることを知る。
その最中で死んだはずのファミリーの一員であるハンが生きているのではという情報を掴む。
ジェイコブらの野望を食い止めるためファミリーは分かれて行動を開始。
レティとミアはハンが最期を遂げたとされる東京へと向かう。

ドミニクはひとり過去を思い出していた。

1989年。刑務所に入ったドミニクは修理工チームに入りリコとレオに出会う。そこでドミニクはジャックの事故の直前にジェイコブがピットで細工をしていたことを思い出す。
出所したドミニクは地元のストリートレースで名を売っていたジェイコブのもとにやってくるとジャックの死について問いただす。
開き直る彼に対して怒り心頭のドミニクはファミリーからの永久追放をかけてレースをジェイコブに挑む。凄まじいデッドヒートの末にドミニクは勝利し、ジェイコブはそのまま街を追放されていた

現在。ジャックのチームのピットクルーだったバディのもとを訪れ、ジェイコブがロンドンにいるという情報を手に入れる。

一方でローマンとテスはドイツのケルンへ行き、ハンの仲間だったショーンたちのもとを訪れる。彼らはロケットエンジンカーの実験に明け暮れており、ドミニクの使いでそのブーストを買い付けにやってきたのだった。

ロンドンに着いたドミニクはかつての仇敵であったデッカード・ショウたちの母親マクダーレンに接触。富豪でもあるオットーのパーティーに乗り込むとジェイコブと一触即発のにらみ合いを始める。
オットーの通報によりインターポールに連行されるドミニクであったが、実はインターポールに変装していたのはかつての仲間カーラの妹レイサたちでジェイコブの指紋も採取していた。

東京にいるレティたちはハンの隠れ家で武術に長けた女性エルと対面。彼女は謎の組織に命を狙われ襲撃をうけるがレティたちと協力してこれを撃破。そんな彼女たちを裏から助けていたのは他でもない亡くなったはずのハンであった。

一方、エジンバラで合流したドミニクとローマンたちは手に入れたジェイコブの指紋を使い、ジェイコブの行方を追う。
ところが反転したジェイコブはドミニク達の裏をかいて、超強力な電気磁石でラムジーのハイテクなパソコンをフリーズさせ、『アリエス』の保管場所のセキュリティを破壊し妨害を仕掛けてくる。
ローマンとテズが迎え撃ち、磁石を発するトラックを発見するが、オットーの部下達に囲まれ捕まってしまう。

その頃監視をしていたラムジーはオットーを発見、尾行していくうちにあの電磁石トラックに乗り込んでしまう。運転免許のないラムジーはドミニクの指示で慣れないまま運転しオットーを追跡。激しい追跡の最中でトラック後方に捕まっていたローマンたちも部下達を倒してトラックに乗り込むとオットー達をおう。

同じころアリエスの残りのパーツを奪い取ったジェイコブの姿を発見したドミニクは逃げる彼を追いかけ格闘戦へともちこむ。ラムジーの追跡をうけたオットーはジェイコブの救出を目論むがラムジーの車の電磁石によって車ごと捕獲され、ジェイコブを捕まえることに成功する。
難を逃れたオットーは私設軍隊を用いてジェイコブ奪還に乗り出すが、背後に控えるサイファーはその行動を冷めた目でみていた。

カスピ海の秘密基地に戻ってきたファミリー。ジェイコブを連行したドミニクは彼を幽閉する。
テズとラムジーは電磁石装置の搭載実験をはじめると東京から戻ってきたミアとレティたちはハンをファミリーに復帰させる。
感慨深いものが込み上げてくるなかでドミニクはハンとの信頼の証として熱く抱擁しあう。

監獄の中の小さな窓からはその様子をジェイコブは静かに見ていた。

ハンはドミニク達に死を偽装していた経緯を語り出す。
恋人だったジゼルの死に生きる目的を失っていたハンは彼女と行くはずだった東京で新しい生活を始めていたが、空虚な日々を送っていた。
そんな中、当時CIAのエージェントであったMr.ノーバディから接触してきて、とある科学者が開発した『アリエス』を盗み出してもらうよう依頼をしてくる。
しかしハンはそこで既に何者かによって科学者夫妻が殺され、一人娘であるエルを保護する。
そのエルこそ『アリエス』を起動させるキーワードとなるDNAの持ち主であった。

同じくハンがデッカードに命を狙われていることを知ったノーバディは一芝居うち、ハンは事故に見せかけて車を爆発させ共に爆死したように見せデッカードの目を欺き、表向きでは死を装って裏でエルを守り潜伏生活を送っていた

そうハンが語り終えると、オットー達の部隊が基地を強襲し、ファミリーを制圧。ジェイコブは解放され残りのアリエスのパーツとエルを確保し、連行していく。
去り際、詰め寄るドミニクにジェイコブは彼も知らなかった父ジャックの死の真相を語り出す。

実はジャックは多額の借金を抱えており、敵チームより八百長を持ちかけられていた。それを知っていたジェイコブはジャックの依頼で車に細工をさせたのであった。
その話を聞いたドミニクは必ずジェイコブの野望を止めると宣言する。

ジェイコブが去り、一瞬の隙をついたファミリーの面々は反撃を開始。脱出を図るのだが、ドミニクはファミリーを逃がすため、ひとり部隊と戦うも基地が崩壊してドミニクは敵もろともカスピ海の冷たい海のそこに放り出されてしまう。
薄れゆく意識の中で、ドミニクの脳裏には悲しげな顔をする父、誰よりもファミリーを愛していた父と自分とのレースに敗北し無念の表情を浮かべるジェイコブ……

気がついたドミニクのそばにはレティが寄り添っていた。
ドミニクらは『アリエス』の起動を防ぐためにショーン達が研究していたロケットエンジンカーで宇宙にいき、オットーたちが打ち上げた人工衛星を破壊する案を遂行に移す。

完成したアリエスとエルを手に入れたオットー達は装甲トラックで移動を開始、
彼らは衛星が軌道にのり次第『アリエス』を発動させ、全国にあるハイテクな武器を手中におさめることを狙っていた。
彼らの野望を砕くため、ドミニクたちは電磁石を車に搭載して装甲トラックを追い、ハンとミアがトラックに乗り込みエルを助け出す作戦を遂行する。

エルが脱出したことに気づいたジェイコブはドミニク達の前に立ちはだかろうとするが、オットーはそんな彼を裏切り、サイファーと組んで彼を殺そうと刺客を仕向ける
激走するトラックの上で格闘するジェイコブは敵もろとも吹き飛ばされそうになるがその危機を救ったのは他でもないドミニク達であった。

一方、衛星信号遮断のためロケットエンジンを駆って宇宙に打ち上げられたローマンとテズだったが、トラブルが起こり、信号を止めることができなくなる。
決死の覚悟を決めた二人は車ごと衛星に突っ込んで直接衛星を破壊しようとする

そしてジェイコブを逃がし、オットーと無人戦闘機を駆るサイファーを追うドミニクたち。
巨大な装甲トラックを倒さんとする彼らだが、規格外の巨大さを誇るトラックにはなかなか倒すことができない。
そこに逃がしたはずのジェイコブが再び現れ、ドミニクに協力してオットーたちに反旗を翻す。

一大ファミリーとして互いの因縁を越え立ち向かうドミニクたち。
果たしてファミリーは仇敵から世界的な危機をすくうことができるのだろうか…


最終章に向けて最新作も公開されたばかりの人気カーアクションシリーズ第9弾。

シリーズ第一作から数えて20年あまり。シリーズの大黒柱のひとりだったブライアン役のポール・ウォーカーの逝去というアクシデントがありながらもそのカーアクションに止まらない規格外のアクションエンターテイメントシリーズとしてヒットを重ねてきた。

そのシリーズもなんと9作目。増え続けるキャラクターと比例するかのように予想を越えるようなアクションと展開を余儀なくされ続けたが、その最終章に向けての前段階、ベースとなるのが本作となる。

しかし本作はスピンオフとなる『ワイルドスピードスーパーコンボ』の製作もあり、ポール・ウォーカー亡きあとの顔役になりつつあったホブスことドウェイン・ジョンソン(ロック様)が抜け、後期シリーズの目玉になっていたデッカードことジェイソン・ステイサムがほとんどカメオ出演程度という状況。
スター俳優が多い中でもアクションの要的なポジションがいないことによる穴は大きい。

そこで本作よりテコ入れで加入したのがロック様同様にWWE出身のスーパースター、ジョン・シナ。
WWEでもロック様が映画界に進出し、プロレス界から身を引いていた時期に次期スターダムに駆け上がったジョン・シナはその映画界での道のりもロック様と似た感じである。
鍛えぬかれた肉体はロック様同様に見応えがあり、しかも主人公の実の弟役という重要ポジション。そして敵対関係から共闘というまさにロック様のホブスと見事にトレースした展開は彼の抜けた大きな穴を埋めれたかに思えた。

しかし、インパクトでいえばジョン・シナではロック様には届かない印象は拭えない。
ヴィン・ディーゼルとのガチンコ肉弾戦も思ったほど少なく、クライマックスでは敵の格闘家系と電車の上で少しレスリングを行ったくらいでアクションスターとしての見せ場はあまり多くはない。

一方でカーアクションばかりだったドミニクファミリーの面々はみんないつの間にか格闘術をたしなんでいるようで、それぞれに格闘シーンとしての見せ場も用意されている。
とみにファミリーの女性用格闘要員となったレティ役のミシェル・ロドリゲスは東京のシーンでの立ち回りは格闘女優さながら。
そしてドミニクの妹でブライアンの妻となったミアもしっかりと格闘術をこなし、ドミニクファミリーは格闘系でもパワーアップしている。

前前作で空から降ってきて、前作では氷河の上を爆走するなど、カーアクションにおいてはまさに想像の上を行く破天荒ぶりをみせるシリーズであるが、本作でついに宇宙までいく究極の展開が実現。そして迫力のカーチェイスシーンでは磁石を使ったアイデア勝負なカーアクションが見もの。
磁力を使って障害物をつけては磁力の反発を使って敵もろとも吹き飛ばすというのは映像的にもかなりのインパクトであった。その最高値といえるのが巨大装甲トラックを車の磁石で引っくり返すクライマックスシーン。
ここでのヴィン・ディーゼルとジョン・シナの強力タッグはその絵のインパクトはバッチリ。

しかしストーリーや展開的には前作には及ばない物足りなさが残るわけであるが、そこで目玉として挿入されたのが、ファミリーであるハンの復活である。

死んだはずのキャラクターが実は生きていましたという展開はある意味禁じ手であり、6作目でレティで体感済みである。
これをハンが再度行ったことによって、ファミリーは死んだように思えて実は後程復活するのいうパターンが定着してしまった感はある。
事実最新作でもとある死んだはずのキャラクターが復活しているようでこれはシリーズの定番の見所として継続していくことだろう。

全体的にみると規格外のド派手アクションは行き着くとこまで行ってちょっと息切れを感じるくらいまでやり尽くした感は感じる。
この後の最終章サーガでこの肥大化しすぎたカーアクションをどうみせていくかがポイントだろう。

格闘アクションとしては目玉となるような格闘シーンのマッチアップがすかされてしまっただけに残念な印象。ロック様対ヴィン・ディーゼルのガチンコさをジョン・シナには期待していただけに勿体ない感じがする。
そして復活組も含めて増殖しまくるファミリーが格闘アクションをそこそこにこなせるようになるとそれぞれの見せ場にも困るところ。
『エクスペンダブルズ』シリーズでシリーズが進むごとに古参のメンバーの見せ場がみるみるうちに減っていたが、『ワイルドスピード』シリーズも同じ轍を踏むのか、タイプの似たものが多いだけに危惧されるところである。

シリーズを通じての楽しみとすれば、過去シリーズに登場したキャラクターたちが復活し、カメオながらも出演しているとこだろうか。
これはシリーズを踏破してなければなかなか気づきにくいとこだが、シリーズを愛しているくらいのマニアならばこうした演出はグッとくるはずである。

そしてシリーズ通じて評価の高いサントラは今回もなかなかのカッコよさ。
ヒップホップ好きならば迷わず買いであろう内容の中にはデジタルロックの雄であるザ・プロディジーの名曲も。
アクションとしてはハリウッドらしい荒唐無稽さの醍醐味ともいえる内容で娯楽性は間違いなく高い作品。
より評価と課題を重ねつつ、最終章サーガに向けての期待も高まるばかりである


評価…★★★
(期待の高いジョン・シナは微妙なところ。肉弾戦が乏しくなってしまったか?)

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