ジャッキー・チェンの人気シリーズ『ポリスストーリー』の第4弾となる作品。

香港警察のジャッキーはCIAの依頼で国際的犯罪組織の関係者ナターシャのウクライナへの護衛および護送という簡単な任務を受けていた。

空港で彼女をCIAの関係者に渡し、晴れてバカンスを楽しもうとしていたジャッキー。
しかしその最中に自分が護衛していたはずの、ナターシャが軍服を着た集団に連行される様を目撃する。

着の身着のまま正義感から彼女の行方を追跡すると彼女はツィと呼ばれる男と落ち合い多額の現金を彼に渡す。
怪しむジャッキーは彼が運転する車に張りつき尾行を続けるのだが、たどり着いたのは雪山深くにあるロッジであった。

そこではツィが、ロシアの犯罪組織との核の起爆装置の密売取引の現場に遭遇してしまう。

交渉は決裂し、激しい銃撃戦が行われるなか、ジャッキーが呼び寄せていたマーク率いるCIAも敵の特殊部隊との銃撃戦に巻き込まれ、ツィに見つかったジャッキーはスノーモービルを運転させられ、逃亡の手助けをすることに。

そしてツィが逃げ去るといつの間にか敵に追われることとなったジャッキーはスノーボードで逃げ回った挙げ句に凍りつく湖へ落下。かろうじて命は助かるも病院へと運ばれる。

目が覚めたジャッキーの前にはロシアの連邦情報局イゴーロフが現れる。
イゴーロフから核弾頭密売の捜査の協力を依頼されたジャッキーは当局の指示でツィが逃亡したとされるオーストラリアへ密入国し捜査を続ける。

ジャッキーはツィの行方を探るため彼の友達を装い水族館で働いている彼の妹アニーを訪ねる。

入院している父親に会いに行くという彼女に同行し、オーストラリアのチャイナタウンの顔役である彼女の父親と対面すると、ジャッキーは正体を明かし、行方をくらましたツィの居場所を訪ねるが、父親もツイとは疎遠であり、情報はえられなかった。
素性騙して接近してきたジャッキーに不信感を持ったアニーは彼を追い出す。

しかし入れ替わりに医者姿に変装したツィがアニーの前に現れ、大事なものを送ったから安全なところに隠しておいてくれと頼まれるとアニーは人食いサメのエリアに届いた荷物を保管する。

水族館から出てきたアニーを尾行しようとするジャッキーだったがそこに現れたツィはジャッキーに銃を突きつける、ツイは自ら電話すると出てきたのはなんとイゴーロフであった。ツイは警察側に今回の事件の黒幕がいると告げまた行方を眩ます。

そしてジャッキーも意思とは無関係に盗聴器を仕掛ける当局に不信感を抱きつつあった。
そんな彼の滞在先を屈強なロシア人の刺客が襲う。身軽さと身体能力で彼らを撃退したもののお金もなくしたジャッキーは潜んでいたビーチ沿いでツィの父が何者かに殺害される事件を知る。さらに敵はマスコミを利用しジャッキーをその犯人に仕立てあげていた。

自らに着せられた濡れ衣をはらすために悲しみにくれているアニーのもとに現れるジャッキー。しかしメディアを見た部下たちは否応なくボスの仇とばかりに襲いかかり、ジャッキーは追い詰められるのだが、その争いを止めたのは行方をくらましていたはずのツイであった。

真実を話し始めるツイ。核弾頭の密売に関わる彼の正体はCIAにありながらロシアのKGBに身をおく二重スパイであった。
その核弾頭を売りさばこうと画策している組織の黒幕はなんとロシア警察のイゴーロフだった。

彼を倒すためツィは父の本葬パレード時を狙うが反対に敵の罠にハマり重傷を追ってしまう。
アニーは兄の伝言から起爆装置を警察に持ち込もうとするがそこにもイゴーロフたちが襲いかかる。

ジャッキーとイゴーロフとの世界の命運をにぎる壮絶な争奪戦が始まる…

ジャッキーの代表作でもある『ポリスストーリー』シリーズの第四弾。

本作は一応は第一作から続く本流ではあるが前シリーズと違い、ある意味ポリスストーリーらしさは薄くなっている。

どちらかというとシリアスな格闘アクションよりもコミカルで大味なアクションが増え、刑事というよりはジャッキーの007のような感覚がする。

そして本作における一番の違和感は前作からの関わりの肝であるマギー・チャンら主要人物が出ていないこと。
彼女の存在を消しているので舞台はポリスストーリーでありながら何か違う感覚がするのである

アクション面においては前半で今回も飛行するヘリの足にスノボジャンプで飛び付き、その後凍りつく湖へダイブなど危険なスタントも敢行。ここでジャッキーはあわやヘリの羽に首チョンパする危機もあって相変わらずの破天荒さは健在ぶり。

ただ今回は格闘アクションにおいては残念ながら敵役が出落ちのインパクトだけで弱い。
今回の格闘アクションのミソは恐らく2m級の巨大外国人と小柄なジャッキーとのインパクト対決だろうが、相手が鈍すぎるためジャッキーのスピードについていけず思いきり消化不良。そして、格闘路線が軽薄化するにしたがってジャッキーの小道具を使ったスラプスティックな格闘シーンが増え、中盤でのギャングとの戦いでは見事なまでの脚立を使ったアクロバティックな格闘アクションが見もの。

さらにクライマックスではネイサン・ジョーンズもいる2m級の外国人軍団相手に水中でファイト。人食いサメを交えた水中格闘は彼らの鈍さを踏まえてのある意味アイデア勝利ともいえる。歴代シリーズのヒリヒリするようなガチンコさは無いものの娯楽としての格闘シーンとしては随一のものとなった。

本作はその舞台スケールこそでかくなったが前作や第一作が傑作だったためか何かしらのパワーダウン感は否めない。
アクションにおいても同様で、ミシェル・ヨーみたいな劇的な起爆剤や悪役側もジャッキーを危機に陥れるようなアクの強い人(『3』のユン・ワーや『2』のアパアパなど)がいないため、マンネリ打破のために苦心する様が分かる。
かつてのカンフーアクションの定番だった小道具、椅子カンフーを進化させた脚立カンフーや、あえて個性であるジャッキーのスピードを殺して、巨漢のロシア人相手に酸素ボンベと人食いサメの攻防戦、パレードでの高下駄カンフーなどはアイデアマンであるジャッキーの際足るものだろう。

刑事アクションという色はだいぶ薄れ、ハリウッド進出を見図ったようなスパイアクションみたくなった本作は、『レッドブロンクス』でヒットをつかんだジャッキーをハリウッドのメイキングスターとして確立させるため、『レッド~』に続くハリウッド公開作品第二弾とされた。

香港返還という社会的事情も考え、単なるシリーズの続編アクションという意味合いではなく、ジャッキー自身のハリウッド進出三度目の正直となるための綿密な作品選び計画のひとつだったと考えると、本作品の楽しみ方は香港での『3』とは違った見え方であり面白味が感じられることだろう。

評価…★★★
(マンネリ打破のための苦労がアクションにも見え隠れする。もちろん今回もジャッキーは裸一貫で頑張ってますよ(笑))

関連記事
自ら代表作といいきるジャッキー渾身の刑事アクションシリーズ第一弾


一年かけて作ったシリーズ史上最高峰の格闘アクションをほこる続編


ミシェル・ヨー参戦。ジャッキーのワンマン色ではない唯一の作品