破天荒なスタントアクションと格闘シーンで人気のジャッキー・チェンの刑事アクションシリーズ第三弾。
中国への返還間近の香港。香港警察は東南アジアの麻薬シンジケートのボス、チャイバの逮捕のため中国公安当局と協力体制をとっていた。
度重なる会議の末その打開策として香港警察より組織への潜入捜査が打診される。
危険極まりない任務ゆえに適任者として選ばれたのは正義感と責任感に厚いチェン刑事であった。署長とビル警部は自ら彼が志願するように彼を呼びだした先で潜入捜査の相談が聞き漏れるように仕向ける。
安全な配属先への転属を勧めるなかでチェンはその潜入捜査の任務に見事乗って思惑通り、彼は自ら麻薬組織への潜入捜査任務を請け負うのだった。
極秘任務のため恋人のメイにも昇進のための秘密訓練と嘘をつき、本土へと渡ったチェンは中国公安局へと赴き、その任務の詳細を受ける。
公安からは女性部長であるヤンが担当となり、チェンはチャイバの組織への潜入のため、現在強制収容所に捕まっている組織のNo.2のパンサーの脱獄を手助けをする任務を負う。
ラムという偽名を使い、計画通りパンサー脱獄の作戦は遂行されると、仲間たちはヤンの射撃によって動けなくしたところで、逃げるパンサーをチェンが手助けし、なんとか追いかけてくる公安の手から彼を逃がすことに成功する。
チェンの腕をみたパンサーは彼を仲間に誘い、合流。
まずパンサーが訪れたのは残された仲間たちが息を潜めている隠れアジトであった。
パンサーの帰還を喜ぶ仲間たち。
しかしその中でパンサーは自分を公安に売った裏切り者をチェンの目の前で粛清するのだった。
香港での新しい仕事の前にパンサーの提案でラムの故郷へ行く事になったチェンは戸惑いながらも設定された村へと向かうと彼を慕う村の子供が。
潜入捜査のため公安局はその村の人間をもラムの親戚として作り上げ、更にはラムの妹マーとしてヤン部長が、そして母親役でビル警部が扮装しチェンをバックアップしていた。
更にヤンはチェンと共に潜入捜査するためパンサーたちと行動を共にする。
そんな中地元の仲介人との話し合いの途中でヤンとは別の公安局員たちがパンサーたちをみつけ、捕まえにかかる。
スタンガンを片手に感電させられたチェンたちは逮捕されかかるが、ヤンがそこで奇襲し逃げることに成功。
さらにヤンは地元の公安部長とひと芝居うち、公安局員を殺害したとして追及を逃れるためにパンサーたちの仲間の組み込んでもらう。
パンサーの仲間となったチェンとヤンは彼の紹介によっていよいよ組織の黒幕であるチャイバと面通しすることになる。
彼のアジトでは目の前で女性たちに新型の麻薬の実験が行われ、裏切り者が制裁されており、その遺体すら犯罪の道具として利用されている状況であった。
高ぶる正義感を抑えつつ、パンサーによってチャイバに紹介される二人。
しかしチャイバは彼らを潜入捜査官として殺害を命じる。
一瞬の隙をついて格闘する二人。
しかしそれは用心深いチャイバのテストであった。
晴れて部下として認められた二人は次なる取引への参加することを命じられるのだった。
チャイバたちがやってきたのは東南アジアの麻薬の三角地帯と呼ばれる場所。
麻薬を牛耳る将軍たちのもとで作られた麻薬を売るための取引を決める会合であった。
しかし競争相手たちはチャイバが資金を払っていないことを理由にして、彼の取り分を失くし奪っていた。
激昂したチャイバは銃器を乱射し、競合相手たちを虐殺。
連れていたヤンの防弾チョッキには爆弾が仕掛けられており、外で構えていたチェンたちも否応なしに激しい銃撃戦に巻き込まれていく。
軍隊並みの武装で取引所を破壊したチャイバに対して将軍たちは早急の支払いの約束をさせ、その場は治めるのだが、そのあまりにも残忍なやり口にチェンとヤンは改めてチャイバ逮捕への決意を固めるのだった。
チャイバが取引の支払いできなかった理由、それはマレーシア当局に逮捕された妻であった。
彼らの活動源となる資金は妻がその口座パスワードを知っており、チャイバはそのパスワードを欲しがっていた。
しかし冷酷な彼の性格を知る妻は彼との直接面会以外では弁護士ですら話し合いに応じない頑なな姿勢を保っていた。
マレーシアへと渡った二人はパンサーから大通りの様子を覚えるように告げられる。
チャイバからも念を押され、その実情こそ教えられなかったものの裁判所前も指定されたことにより、チャイバは妻の護送を襲撃しようとしていることを察する。
計画が実施されるまで待機となったチェンとヤン。
しかしその背後には海外ツアーでガイドをしているメイの姿が…
観光客との写真のなかにチェンの姿を見つけあわてふためくメイ、しかも女性と顔を寄せあっているところであった。
メイの姿に気づいたチェンはヤンと共に何とか誤魔化そうとするが、浮気していると勘違いしたメイは騒ぎだす。
バレれば命の危険にさらされるチェンは何とか説得をし、メイもパンサーに気づかれないように演技して誤魔化すのだが、エレベーター内でそのことを喋ってしまい、パンサーの仲間にバレてしまう。
チェンが警官と知ったパンサーはメイを人質にしてチェンたちを拘束するのだった。
チャイバが目論んでいたのは死刑判決が下された妻を護送車から奪回であった。
恋人を人質にとられたチェンはヤンと協力してチャイバの妻を護送車から救いだすが、メイとの人質交換をチャイバにせまる。
怪我を負いながらもメイは助け出されるが、非道のチャイバに怒りを爆発させるチェンは執念で逃亡を図る彼を追跡する。
ヤンもパンサーたちと格闘の末、チェンと共に命懸けの追跡をする。
暴走する列車に不時着したチャイバのヘリをめがけ必死で追うチェンとヤン。
果たして二人は凶悪なチャイバを逮捕することはできるのか…
ジャッキー・チェンの人気シリーズである『ポリスストーリー』の第三弾となる作品。
ジャッキー・チェンの代表作である『ポリスストーリー』はそのシリーズ作品は10作近くにのぼるが、いわゆる香港警察に所属する命知らずの熱血漢であるチェン・カイクーを主人公とする作品はこの『3』までである。
そのため実際はこの作品までを『ポリスストーリー三部作』とよぶことも。
ちなみに4作めと謳われている『ファイナル・プロジェクト』は主人公の名前はジャッキーとなり、署長役でトン・ピョウが続演している以外は出演陣は一新されている。
『ニューポリスストーリー』や『新ポリス・ストーリー』、『~レジェンド』、『~リボーン』は日本の配給特有の括りもので主人公や世界観は全くの別物である。
『ポリス・ストーリー』シリーズの特徴はよくも悪くもジャッキーのワンマンアクションで貫く姿勢で、彼だからこその危険すぎるスタントや莫大な予算を使った特効がその最たるものであるが、評価は高かったもののマンネリとの声もあった続編『九龍の眼』を経て、続編を製作するにあたり、まず第一とされたのはジャッキーオンリーにしないこと。
そこで起用されたのが稀有なアクション女優でありながら結婚引退していたミシェル・ヨーであった。
離婚して最初の復帰作となるミシェル・ヨーは本作品で以前よりも更に過激なアクションとその華麗で力強いマーシャルアーツを復活させ、ジャッキーにも負けない危険なスタントにも挑戦。
クライマックスでの暴走する列車にバイクで飛び移るスタントはなんと自ら演じきったほか、追走する車のボンネットに落下するところはNGシーンではジャッキーがつかまえきれずヨーは地面に落下してアスファルトを転げ回るという衝撃的シーンまである。
シリーズの売りである危険スタントに関してはジャッキーも更にマレーシアで、飛び回るヘリから下がる梯子へ決死のジャンプ。その後は掴まったまま空中を飛び回るというデスウィッシュスタントを敢行。
クライマックスの列車でのシーンでは羽が回るヘリに接触し怪我をするというNGシーンまである。
ストーリー的にはこれまで香港内だったものが国際シンジケートが相手になり、その舞台も中国本土から香港、タイ、マレーシアと壮大なものに。
マレーシアではチャイバのモデルとなっていた本物の組織から警告がきたらしくその撮影は厳戒態勢で行われたとされている。
肝となるアクションであるが、今回はジャッキーだけでなくミシェル・ヨーという二枚看板があり、格闘シーンにおいては見応えたっぷり。いわゆる強敵との一騎討ちというのはないものの集団戦における二人の格闘はさすがの一言。
力強いジャッキーの格闘と華やかで舞うようなヨーの格闘の対比もあってアクション自体のボリュームはアップしたといえる。
惜しむらくは注目されるのがスタントアクションが多く、格闘アクションにおいてはそこまで重要視されていないところ。
クライマックスでの列車の上での戦いも部下にケネス・ローがいるものの目立っていない。
これはミシェル・ヨーも一緒でユン・ワーとの対決があるものの時間は短く、期待したほどの絡みはない。
そして前作まではコメディ要素も十分であったが、本作もコメディシーンはあるものの内容的にはシリアス寄り。
ドリアン畑に落ちてお尻に刺さっていたがるというジャッキーらしいコメディもあるが、ミシェルに関しては基本はまじめ。
妹役ということでジャッキーとの絡みはあるが、笑いとしては動員ではなさそう
こうしたシリアス寄りな展開にスパイス的にコメディ要素役となるのがメイ役のマギー・チャンの存在。
ヤンとの浮気を疑ってチェンをハラハラさせるトラブルメーカーは案の定今回も悪党の手に落ちてチェンを危険なめに負わせてしまう。
前二作と比べるとスケールは大きくなったもののアクション的にもガジェットの比重が高まり、少し大味にはなった。
それでも基本である身体をはったアクションは基軸であり、その激しさは今回も観客の信頼を裏切らない仕上がりといえる。
ただワンマンを避ける目的であったミシェル・ヨーの存在があまりにも強すぎたためか、頑張っているはずのジャッキーが少しインパクトが薄く感じてしまうのは本末転倒なところ。
ヨーはこの作品での役が高評価をうけ、なんとスピンオフ作品として独り立ちしてしまっていて、ジャッキーがなんと特別ゲスト出演するという状況となっている。
ジャッキーのすごさもさることながら、ミシェル・ヨーの鉄人ぶりにさすがは『世界最強アクション女優』の称号にふさわしいと再確認させられる作品である。
評価…★★★★
(女ジャッキーなんてとんでもない、ミシェルの超人ぶりは唯一無二の存在です)
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