慢性的な人手不足と備品不足により経営も逼迫状態となって疲弊しているとある総合病院。
次々と止めどなく訪れる患者たちに対してもはや重症患者への対応もままならないほど体制は麻痺状態と化していた。
院長とは連絡すらとれず、給料も3日遅れている状態でも休む時間すらなく働くスタッフの間にはストレスと不満が溜まり続けていた。
外科医の秋葉や内科医の魚住などそれぞれのスタッフ個人個人も他には言えぬ苦悩とストレスを抱え、彼らの精神的ストレスも限界を越えようとしていた。
そんな中で全身に大火傷を負い瀕死状態となっていた重篤患者が弾みでベッドから転落しショック状態に陥ってしまう。
秋葉を始め、パニック状態の中で懸命に処置を行おうとするが、秋葉の指示を聞き違えた看護士立花は安定させる塩化カルシウムと間違ってショック状態を引き起こす塩化カリウムを誤って投入してしまう。
急ぎ蘇生を試みるがそのかいもなく患者はショック死してしまう。
看護婦長の塩崎は医療ミスとして報告書をあげようとするが経営難に陥ってる最中にミスを上げれば居合わせた自分達の将来すらも失うという結果を恐れる魚住たちの強い意見もあって、死んだ患者を無かったものにするための隠蔽工作を練る。
遺体を完全に鑑定できなくするために早く腐らせることを思い付いた秋葉は、誰も入らない処置室を使って患者をストーブや暖房熱を使って遺体を早く腐食させてあとかたもなくすことで証拠隠滅を図ろうとする。
一方その頃、救急搬送室には新な患者が搬送口に運ばれてきた。遺体処理していた秋葉は追い返そうとするのだが知らぬ間に患者はそこに置いたままにされていた。
急ぎ処置室へと運んだ秋葉たちだがこの患者は緑色の体液を吹き出し、次第に人間としての原型もなくなるほど肉体が溶けかかっていた。
仕方なく重篤患者と同じ処置室へと運び込み塩崎に観察を命じる。
死んだ患者を重篤患者のいる1号室へと運ぶなかで秋葉は病院の幹部である医師の赤井に出くわす。
利益優先で彼の行動を怪しむ赤井は秋葉が患者を死なせたのではと察知し問い詰める。
その頃、奇怪な症状の患者を見張っていた処置室から悲鳴が上がる。
駆けつけると床に倒れ付している塩崎と大量の液体を撒き散らしたあとがあった。
筋組織が壊死し、溶けているため逃げられるはずはないのだがベッドの間にある通気孔には明らかにあの患者が通ったかのような緑色の液体のあとがあった。
医務室で塩崎を休ませる中で秋葉は赤井や魚住らと消えた患者の行方について論議を重ねる。
一方新人看護士の安積は緊張性のため注射を苦手としており、あの火傷患者への注射もままならず患者の腕には安積による注射の失敗のあとが数多く残されていた。
そんな彼女に先輩の桐野は辛く当たる。桐野もまた火傷患者の医療事故に居合わせたひとりであり、その様子を安積は密かに覗いていた。
意識を取り戻した塩崎は職場へと戻っていくがその様子は全く生気のないものとなっていた。
おもむろに医療廃棄物ボックスを手にすると既に使用済みの注射針や注射器を手を突っ込んで取りだし、針がいくつも手を貫く中で、そのまま持っている手ごと高熱煮沸器の中に入れてしまう。
焼けただれた手をみて正気に戻ったかに見えた塩崎だったがその瞬間耳や目、口などから緑色の液体を吐き出し倒れる。
あの逃げた患者によるものと察した秋葉はすぐに彼女を隔離し、重篤患者のいる部屋へと押し込む。
緑色の体液は未知の感染症によるものだとして政府による助けを求めようとする秋葉に対し、これは今だかつてない新種のウィルスだとしてこれを機に一気にワクチンをつくり、一攫千金を狙おうと打診する赤井。
意見は分かれる中で、担ぎ込まれた塩崎は身体中から緑色の体液を吹き出し内臓が溶けてなくなってしまっていた。
立花の報告でそれを確認した秋葉らはパンデミックを防ごうと塩崎の遺体の処置について赤井と再度論議を繰り広げる。
そんな彼女のいた病室を訪れた安積は塩崎のナースキャップをみつけ拾い上げるがその背後には死んだはずの塩崎の姿があった。
見回りを終えた桐野はナースステーションの奥から聞こえる笑い声を不審に思い見るとそこには煙草をふかす安積の姿があった。
思わず叱責する桐野だったが安積がふりむくとその腕には何本もの注射器が突き刺さり、血を吹き出していた。
自らの血管を切り裂くように注射器を突き立てる安積に桐野は慌てて止めようとするがその瞬間安積は緑色の液体を桐野に吐きかけて自分はどろどろに溶けて死んでしまう。
あの液体こそが感染症の元凶である、そう語る秋葉は赤井を差し置き政府の感染症対策チームの要請をしようとする。
しかしそれを聞いていた桐野は自分も死の感染症にかかったと察知し逃げ惑うが騒ぎを聞いた秋葉が来た頃には彼女は逆さ吊りになって惨たらしい最期をとげていた。
そしてこの感染症について秋葉は院内の封鎖を提案し、ウィルスへの早急の処置を進言するがひとり赤井だけはこれに渋っていた。
やがて極限の状況中で、魚住は病院の特に赤井への不満をぶちまけ始めていた。
その魚住はとある一室に吸い込まれるように入っていく。
彼の目に見えたのはかつて自分の誤診によって命を落とした患者の姿であった。
怨みとも憐れみともつかぬ目にみいられる魚住はただ謝り、そして罪の意識を感じる他なかった。
そんな魚住の姿をみた秋葉は何も無い所で一点を見つめ泣き叫ぶ彼の目を覚まそうと近より声をかけるがその瞬間魚住の顔の穴という穴から緑色の体液を吹き出し始める。
既に魚住も感染していたのだった。
未知の感染症に侵され崩れ行くなかで魚住はこのウィルスの秘密を語り出す。
それはこのウィルスは弱った心に感染するということ。
やがてウィルスは秋葉の身にも及ぼうとしていた。
恐怖に駈られた夜が明け、脳外科医の中園がやってきたことに安堵する秋葉は院内で起こった感染症によって皆が死んでしまったことを彼女に訴えるが、彼女の目には感染を疑わせるものはなく、そこには何者かに惨殺された仲間の死体が転がっていた。
秋葉がいう赤井医師のことも分からないという中園に混乱する秋葉。
果たしてこのウィルスは現実のものだったのか?そして秋葉はみていた赤井の正体とは?
そこには更なるおぞましい惨劇の真実が隠されていた…
おどろおどろしい空気感と息詰まるような閉塞感が話題をよんだジャパニーズサスペンスホラーの名作。
本作はリングのハリウッドリメイク『ザ・リング』にヒットをうけて次に続く世界の市場を見据えた作品を作ろうと仕上げた『Jホラーシアター』シリーズの第一弾作品。
同時上映となった『予言』とのコラボキャンペーンでも話題となった作品である。
元々は『世にも奇妙な物語』で語られた『急患』というエピソードをもとにしており、これを更に洗練させて作り上げた。
結果仕上がったのは全体的に不気味な空気の漂う日本らしいホラーであった。
まず全体的に照明は暗めにしており、陰湿な空気をずっと漂わせ作品自体の雰囲気から一癖ある感じになっているのがポイント。
これにより昔の怪談のようなジメッとした恐怖感を促進させる。
題材もキャッチーな未知の感染症によるもので羅患すればたちまち緑色の体液を吹き出して肉体が溶けて死ぬというショッキングな設定がそそられる。
ただハリウッドと違ってなるべく直接的な恐怖描写を避けるのがジャパニーズホラーらしい趣向である。
例えば最初に感染症患者が運ばれて診察するシーンで台詞に『人間が笑っている顔がそのまま溶けて崩れたような感じ』という表現があるが、ハリウッドならばそれを特殊メイクによって表現してしまうだろう。
しかしここではあえて言葉だけで観客に想像させる領域をもたせている。
何より本作の怖さを確立させているのが個性的な俳優陣による競演。
主役の佐藤浩市をはじめとし、高嶋政伸、南果歩、星野真里、真木よう子、木村多江など個性的かつ演技派な面々ばかりでドラマ性の高さもいうまでもない。
そんな中で、一際異彩を放つのが佐野史郎の存在。
ずっと蒼白い感じで現れ、現実なのか幽霊なのか幽鬼のように出現し、当代きっての不気味さを演じきっている。
元々怖い演技は得意とするところだが、彼の正体が分かるクライマックスは戦慄ものである。
王道なジャパニーズホラー調であるとはいえ、やはり気になるのは犠牲者の表現。
直接的な描写こそ少ないかもだが塩崎がゲロゲロと液体を放つシーンや魚住が感染し、断末魔を迎えるシーンなどは
なかなかに衝撃的。
手や腕に注射針が何本も刺さっているという先端恐怖症は気絶必至のショックシーンもなかなかにエグい。
魚住は断末魔、顔が蒼白くなりながら口からは緑色のスライムみたいなのを吐き出しながら悪態ついて死んでいくという内容は何となく荒んだ今のご時世にぴったりな内容である。
そんな演技派たちを集め、閉鎖された病院で繰り広げるホラーサスペンスは結構見応えがあったりする。
残酷描写も少なめとはいったものの、人が溶けるという題材ということもあり、かなり攻めた内容のシーンもある。
穴から液体を吹き出し、溶けていくということから全部ではないものの手首だけが溶けて崩れ
落ちるという表現がいい。
ジャパニーズホラーらしい奥行きある空気感と人間が溶けてなくなるという恐怖要素がうまく反応しており、原作の出来こそ分からないが、陰惨で陰湿なジャパニーズホラーの味はたっぷり出ている作品だろう。
ただ惜しいのは展開が難しすぎたこと。
後半からのあの描写は何となく今まで上手く流れていたものが一挙にグジャっとした感じにしており、結局これは感染症なのかそれとも夢オチなのかぼやけてしまった分、判りづらくなったのは残念ではある。
それこそ邦画ならではの観客に想像させる終わり方なのだろうが、きちんとした結果を求めるハリウッドスタイルにはあまりそぐわない気がする。
本作もバイオホラーなのか単なるショッカー作品なのかで随分見方は変わってしまうと思われるので。
ハリウッドへのチャレンジ作としては多少難しい作りにしすぎた感はあるが、演技派俳優たちによる恐怖演出とその空気感はジャパニーズホラーとしてはかなり見応えはある作品といえるだろう。
残酷度…★★★
評価…★★★★
(直接的な残酷描写は少なめだけどそれでもあまりある個性派俳優たちの恐怖演技で仕上げているのは流石。)
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