こんばんは。
アクションとホラー映画をこよなく愛する映画フリークいわしでございます。
不定期にお送りしております私いわしの個人的目線と鑑賞の記憶から論じます『いわしの映画独論』シリーズ。
今回は日本のアクションについて語りたいと思います。

まず現在の印象といいますか、一般的に邦画を代表するアクションジャンルといえばまず思い浮かぶのは『時代劇アクション』ではないでしょうか?
実は日本の時代劇アクションはその『殺陣』が世界的に評価されています。
同じ剣劇ならばアクションの本場である香港でもソードアクションはありますが、日本のソードアクションは名だたる著名人のファンも多いです。

なぜか…これには日本独自の味が隠されています。
それは『間』という感覚。大味なハリウッドやとにかく詰め込んだ印象のカンフーアクションに比べ、日本の時代劇には静と動といった時間的な間、相手との距離を測る間、沈黙という間など独特の感覚を要する作品が多いです。
緩急を時間や空間で表現するアクションというのは邦画アクション独自の特徴といえます。

しかし反面、それが仇となり世界的なアクションの潮流にも遅れてしまうということにもなり、いまだ日本のアクション作品が世界的にメジャーになっていけない土壌がそこにあるのです。

邦画における現代的なアクションは1950年代頃から本格的に作られ始めました。
これまでの邦画の現代的アクションの主役は『柔道』であり、いわゆる『空手』は暴力的すぎるという理由から、専らその当時の柔道ものでは悪役扱いでイメージも悪いものでした。
その流れを変えたのが波島進主演の『飛燕空手打ち』シリーズでした。
当時はプロレスで力道山がブレイクしたこともあって、彼の必殺技である『空手チョップ』が大ブームとなっていて、この空手打ちも空手チョップをイメージしたものでした。

一躍注目された空手映画はその後も手を変え品を変えつつシリーズ化し、『流星空手打ち』では主演がなんとあの高倉健
昭和の大ヒーローも空手チョップで大暴れしていたのでした。

そんな状況の中、邦画界を震撼させる一人のスターの作品が日本公開されます。
それがブルース・リーの『燃えよドラゴン』でした。
彼の作品はジミーウォング並みだった邦画アクションのレベルを根底から覆し、リーのアクションに日本の若者たちはみんな虜になっていったのでした。

そんなアクションといえば時代劇と任侠のガラパゴス状態であった邦画アクション界の将来に危機感を抱き、将来邦画アクションをワールドレベルにしようと考えていた二人の日本のアクションスターが動き出すのでした。


まず一人目は、世界のサニー千葉こと

『千葉真一』

です。
彼は大学時器械体操の選手でしたが、腰の負傷により選手を断念。併せて習得していた空手の経験をもとに様々な映画やテレビドラマで活躍します。
『キイハンター』『地獄拳』シリーズでアクション俳優としての立場を確立した彼は、将来のアクション界を担う日本出身のアクションスター養成校を作り上げます。
それが『ジャパンアクションクラブ』通称『JAC』です。
JACの功績は邦画界でも大きく、千葉自身のアクション哲学を体現したような作品を次々発表し、市民権を得ます。
最初にして最高の邦画アクション女優志穂美悦子や今やハリウッドでも活躍する真田広之などのアイドル性の高さと多額の資金で、彼らの作品は壮大なスケールのものが多く、千葉は日本にいながらハリウッドを意識した作品作りを目指しているようでした。
JACのアクションの特徴は破天荒なスタントアクションで個々では人命軽視甚だしい香港レディースアクションもびっくりの危険スタントを作品内で見せていて、集団では綿密な殺陣指導の下スペクタクル感溢れるアクションを得意としていました。
演技学校としても力を入れていて、JACがのちに倒産した後も、伊原剛志唐沢寿明堤真一らも元JAC出身のアクションを披露していますね。


もう一人は和製ドラゴンこと

『倉田保昭』

です。

彼は香港のショウブラザーズに招かれ、そのすさまじい格闘レベルから日本人俳優としては最も香港で認められたアクションスターでした。現在もその影響力は絶大で今なお現役で香港映画で出演するなどの超人ぶりを発揮してします。
彼が日本に戻ったきっかけは『闘えドラゴン』『Gmen75』という二つのテレビドラマシリーズでのブレイクでした。
もともとは倉田自身の日本での活動拠点として『倉田プロモーション』は創設されたのですがいつからか香港系のアクション俳優を目指す若手俳優たちの入門口という感じになっていきました。
倉田プロのアクションの特徴は個々のアクションスキルの高さの追求です。
香港では現場にいる人間は誰もがアクション出来るような環境であったことから、倉田プロも主演はもとよりヒロイン、敵、雑魚、ちょい役に至るまで結構なアクションスキルや格闘スキルをもちます。
ただアクションに特化しているためか倉田自身もはじめ演技という点では大きく水をあけられている感じもします。

二人とも将来の邦画アクション界を見据えての活動ですが、その方針は全く違う方向性でした。
千葉は集団アクションとスタントアクションを主とした作品を得意とし、倉田は個人の格闘スキル活かした作品を主としていました。
二極化したアクションの方向性ですがその二つの方向性のいずれかに添えなければ日本でのアクション作品の主演は厳しい時代でした。
あるものは選択のなさに絶望し、本場香港に渡ってスターを目指したり、ハリウッドに渡米しアメリカンドリームを追いかけて行った者もいました。

そんな双方向な二つのプロモーションの特徴ですが、意外なところで二つのアクションの融合がおこりこれが日本独自のアクションジャンルとして注目されています。

それが『特撮ヒーローアクション』と呼ばれるジャンルです。
現在も若手俳優たちの登竜門として確立しているこのジャンルは、崖からのジャンプや爆破といったJAC風のスタントアクションと、怪獣や怪人とヒーローたちによる徒手空拳の倉田プロ風の格闘アクションが見事に融合した稀有なアクションジャンルです。
世界的にも人気なこのジャンルは、長年邦画アクションの起爆剤として注目されてきましたがようやくハリウッドが目を向け始めました。
しかしそれでもまだまだ日本から世界へと羽ばたいたアクションスターはいないのです。

特撮アクションという土壌が活かせぬまま、邦画アクション界はこれまでも期待すべき新星を次々と輩出してきました。

まずは『和製シュワルツェネッガー』とよばれた

松田勝


ギャグアクション漫画の実写化『押忍空手部』の主演で注目された彼は、強面の面構えと空手やキックボクシング出身という恵まれた体躯をいかして東映Vシネマ中心に本格的な格闘アクション作品に出演してきましたが、大ブレイクとまではいきませんでした。

そしてデビューがヴァン・ダムと共演というキャプテン・サワダこと

澤田謙也

は自身がプロモーションや企画も兼ねる多才ぶりで、得意の空手で香港でジャッキー・チェンと戦ったり、日本ではあの魔裟斗と対決したりと香港風のアクションにも対応できる万能さがありましたが倉田ほどのインパクトにはまだまだのようです。

現在も活躍するマルチな格闘スキルに精通する

『虎牙光輝』

もアクションのスキルはピカイチでハリウッドでの活躍が期待されるひとりですが、オリジナル作品などなかなかアクションマニア好みの作品が多く、もったいないスターです。


彼らは、個々のスキルに至ってはアジアやハリウッドで活躍するアクションスターたちと何ら見劣りするところはなく、閉鎖的な邦画アクション界の時代的な被害者です。
再評価が高まりつつある邦画アクションの今、もっと再注目してほしい面々ですね。

それでは最後にこれからの邦画アクションに新風を巻き起こしそうな個人的に注目の俳優を紹介してこの項は締めたいと思います。

いわしが邦画界で注目するアクションスターそれは

『TAK(坂口拓)』

です。

最近では人気漫画の実写化『キングダム』への出演、武術指導でも注目されていますが、武術に対する探究心はすさまじく企画やプロデュースも携わるマルチな才能の持ち主。
一時期引退していましたが、引退前での見栄えする格闘センスから復帰後は実戦格闘術『ゼロレンジコンバット』を駆使し、鬼気迫る迫力と格闘センスを見せ、心酔するドニー・イェンどころかブルース・リーのように世界的にゼロレンジコンバット普及に努めている彼。
ハリウッドでの活躍も期待されるところです。

いかがでしたでしょうか?
注目され始めてきた邦画アクション界、これまでの歴史をみているとブレイクを祈ってやみませんね。
次回はまた違ったお題で語りたいと思いますお楽しみに。
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