試験会場で時短で回答する方法

 

この種の問題は、法律の専門知識が問われるため、中学生には少し難しいかもしれません。しかし、問題文をよく読み、ポイントを押さえれば、正解にたどり着くヒントを見つけられます。

時短で回答するコツ

  1. 問題文の「キーワード」を見つける:

    • 確定判決の効力」: 一度裁判で決まったこと(判決)が、その後どう影響するかを問われています。

    • 請求異議の訴え」: 判決が出た後で、「いや、やっぱりおかしい」と主張するための裁判のことです。

    • 事実審の口頭弁論終結前」: 裁判が終わる前、ということです。

    • 判例の趣旨に照らし」: 裁判所が過去に出した判決(判例)の考え方に合っているかを聞いています。

  2. 選択肢の共通点と違いを探す:

    • どの選択肢も「〜〜が確定した場合、〜〜は、その後に提起した請求異議の訴えにおいて、〜〜を主張することができる(またはできない)」という形になっています。

    • 違いは、「何を」「いつ」主張しようとしているか、そしてそれが「できる」のか「できない」のか、です。

  3. 「原則」と「例外」を意識する:

    • 一度確定した判決は、基本的に覆すことはできません。これが**「確定判決の効力」の原則**です。

    • しかし、例外的に「請求異議の訴え」で覆せる場合もあります。それは、前の裁判では言えなかった新しい事情がある場合です。

  4. 特に注目すべきポイント:

    • 事実審の口頭弁論終結前に相殺適状にあった…」という部分(選択肢2)

    • 「当該貸金返還請求訴訟の提起前に完成した当該貸金返還請求訴訟に係る貸金債権の消滅時効を援用して…」という部分(選択肢3)

    これらは、前の裁判で主張できたはずなのにしなかったことを、後から主張しようとしているケースです。このような場合は、原則として認められません。なぜなら、前の裁判をちゃんと見ていなかったことになってしまうからです。

  5. 「新しい事情」に着目する:

    • 選択肢1の「建物買取請求権」や選択肢4の「詐欺による取消権」は、判決が出た後に初めて主張できるようになった、あるいは判決とは別の問題として考えることができる、というニュアンスがあります。

    • 選択肢5は、白地手形(金額などが書かれていない手形)の補充という、前の裁判とは異なる状況を想定しています。


 

問題文の解説

 

この問題は、民事訴訟法という法律の「確定判決の既判力(きはんりょく)」という考え方について問われています。

 

 

 

確定判決の既判力とは?

 

一度裁判で「AさんはBさんに100万円を払う」という判決が出てそれが確定すると、その判決の内容は「もう揺るがない真実」として扱われます。これを既判力と言います。

つまり、Aさんが「やっぱり100万円は払いたくない!」と後から別の裁判を起こしても、特別な事情がない限り、その主張は認められません。裁判を何度も繰り返しては、社会が混乱してしまいますよね。

 

請求異議の訴えとは?

 

既判力があるからといって、どんな時でも判決が絶対かというと、そうではありません。

例えば、判決が出た後に、実はもうお金を払っていたことが判明した、というような新しい事情が出てきた場合、その判決通りに強制執行(財産を差し押さえたりすること)されるのはおかしいですよね。

このような、判決が出た後に新しく発生した事情」や「前の裁判では主張できなかった、または主張する必要がなかった事情」を理由に、「この判決通りに強制執行されるのはおかしい!」と主張できるのが「請求異議の訴えです。

 

各選択肢の解説

 

では、それぞれの選択肢がなぜ正しいのか、間違っているのかを見ていきましょう。

  1. 「建物買取請求権を行使し、その効果を異議の事由として主張することができる。」

  2. 「当該貸金返還請求訴訟の事実審の口頭弁論終結前に相殺適状にあった貸主に対する債権を自働債権とし、当該貸金返還請求訴訟に係る貸金債権を受働債権とする相殺の意思表示をし、その効果を異議の事由として主張することができない。」

    • これは正しいです。「事実審の口頭弁論終結前」というのは、「前の裁判が終わる前」という意味です。つまり、前の裁判の時にすでに相殺(お互いの借金をチャラにすること)できたはずなのに、それを主張しなかった場合、後から「やっぱり相殺したい」と請求異議の訴えで主張することはできません。これは、既判力の原則(前の裁判で決まったことは動かせない)に沿った考え方です。

  3. 「当該貸金返還請求訴訟の提起前に完成した当該貸金返還請求訴訟に係る貸金債権の消滅時効を援用して、その時効による消滅を異議の事由として主張することができない。」

    • これは間違っています消滅時効」というのは、長い期間権利を行使しなかったために、その権利が消滅してしまうことです。そして、「時効が完成した」ということを裁判で主張することを「時効の援用(えんよう)と言います。判決が出た後に、実はその借金の時効が裁判が始まる前にすでに完成していたのに、そのことを前の裁判で言わなかったとしても、後から請求異議の訴えで時効を主張することはできます。なぜなら、時効は判決とは別に、法律で定められた権利の消滅原因だからです。

  4. 「当該売買契約につき詐欺による取消権を行使し、その効果を異議の事由として主張することができる。」

    • これは間違っています。詐欺による取消権は、その売買契約自体を無かったことにする権利です。この取消権は、売買契約に基づく訴訟の中で主張すべきことです。判決が確定した後に「やっぱり詐欺でした」と後出しで主張することは、前の裁判で十分に議論しなかったことになり、既判力の考え方に反します。

  5. 「当該白地部分を補充して振出人に対し手形上の権利の存在を主張することができる。」

    • これは間違っています。白地手形(金額などが書かれていない手形)の訴訟で、白地部分が補充されずに請求が棄却された(認められなかった)場合、その判決には「この手形ではお金を請求できない」という既判力が生じます。その後、同じ手形を補充して再度請求することは、前の判決の既判力に反するため、認められません。

 

正しい選択肢

 

以上の解説から、正しいものは1と2になります。


この問題は、法律を専門的に学ぶ人でも間違えやすい難しい問題です。大切なのは、**一度裁判で決まったことは原則として動かせない(既判力)**けれど、**例外的に後から主張できる場合もある(請求異議の訴え)**という考え方です。そして、その例外が認められるのは、前の裁判では主張できなかった、または主張する必要がなかった「新しい事情」に限られる、と覚えておくと良いでしょう。