問題の解説:商行為に関する規律

https://www.moj.go.jp/content/000073967.pdf#page=9.00

 

 

この問題は、会社同士の取引(商行為)に関するルールについて聞いています。特に、「取引する人たちが両方とも会社(商人)の場合にだけ当てはまるルールはどれ?」ということを尋ねています。

商法には、普通の人が行う取引(民法)とは違う、商人向けの特別なルールがたくさんあります。これは、会社同士の取引をスムーズに進めるためだったり、特別な事情に対応するためだったりします。

それでは、各選択肢を見ていきましょう。

 

ア.契約の申込みを受けた対話者が直ちに承諾をしなかったときは,その申込みは,その効力を失うとの規律

 

これは、電話などで取引の話をしているときに、「今すぐ返事しないなら、この話はなかったことにするよ」というルールです。会社同士の取引では、素早い決断が求められるので、このようなルールがあります。

これは、当事者双方が商人である場合に限り適用されます。

 

イ.商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは,その他人に対し,相当な報酬を請求することができるとの規律

 

これは、会社が他の会社のために何か仕事をしてあげたら、たとえ事前に「お金を払う」という約束がなくても、その会社にちゃんとお金を請求できるというルールです。普通の民法では、事前に約束がないと報酬を請求するのは難しいのですが、会社同士の取引では、仕事には通常報酬が発生するという考え方があります。

これは、当事者双方が商人である場合に限り適用されます。

 

ウ.金銭の消費貸借をしたときは,利息の約定がなくても,貸主が年6分の利率による利息を請求することができるとの規律

 

これは、会社がお金を貸し借りした場合、「利息を払う」という約束がなくても、年6%の利息を請求できるというルールです。普通の人がお金を貸し借りするときは、利息の約束がなければ利息は発生しませんが、会社同士の取引では、利息が発生するのが当たり前だと考えられています。

これは、当事者双方が商人である場合に限り適用されます。

 

エ.商行為によって生じた債権は,商法に別段の定めがある場合及び他の法令に5年間より短い時効期間の定めがある場合を除き,5年間行使しないときは,時効によって消滅するとの規律

 

これは、会社同士の取引で発生したお金を請求する権利(債権)は、特別な場合を除いて、5年間放っておくと、請求する権利がなくなってしまう(時効になる)というルールです。普通の民法では10年などもう少し長い期間ですが、会社同士の取引は早く解決した方が良いので、期間が短くなっています。

これは、当事者双方が商人である場合に限り適用されます。

 

オ.質権設定者は,設定行為において,質権者に弁済として質物の所有権を取得させることを約することができるとの規律

 

これは、**「質権」**という担保(もし借金が返せなくなったら、担保に入れたものを売ってお金を回収できる権利)についての話です。この選択肢は、「もしお金が返せなかったら、担保に入れた物の所有権をそのまま相手にあげますよ」という約束を事前にできるか、という内容です。

実は、この「もしお金が返せなかったら、担保に入れた物の所有権をそのまま相手にあげますよ」という約束(これを「流質契約」と言います)は、**民法でも商法でも、原則として認められていません。**質権では、もしお金が返せなくなっても、担保物を売って、そのお金から借金を返してもらい、残ったお金があれば返す、というルールがあるからです。

したがって、この規律は「当事者双方が商人である場合に限り適用される」ものではありませんし、そもそも原則として認められていません。


 

最終的な答え

 

これまでの解説から、ア、イ、ウ、エは「当事者双方が商人である場合に限り適用される」規律だと分かりました。

したがって、これらを組み合わせたものが正解となります。