第5回:名詞の基礎 - 性と数
皆さん、こんにちは!前回のデーヴァナーガリー文字の学習、お疲れ様でした。少しずつサンスクリットの文字に慣れてきましたでしょうか?
さて、今回はサンスクリット語の名詞の基礎となる「性(せい)」と「数(すう)」について解説していきます。日本語にはない概念なので、最初は少し戸惑うかもしれませんが、仏典を読み解く上で非常に重要な要素となりますので、一緒にじっくり学んでいきましょう。
1. サンスクリット語の名詞の「性」
サンスクリット語の名詞には、男性(पुल्लिङ्ग - pulliṅga)、女性(स्त्रीलिङ्ग - strīliṅga)、中性(नपुंसकलिङ्ग - napuṃsakaliṅga) の3つの「性」があります。これは、その名詞が生物学的な性別を表すとは限りません。例えば、「山(parvata)」は男性、「川(nadī)」は女性、「花(puṣpa)」は中性です。
なぜ名詞に性があるの?
名詞の性は、主に文法的な役割を果たします。形容詞や動詞の語尾が、修飾する名詞の性に合わせて変化するため、文の構造を理解する上で非常に重要になります。
名詞の性の見分け方
名詞の性を完全に理解するには、多くの単語に触れて慣れていく必要があります。しかし、いくつかの一般的な傾向や語尾から判断できる場合があります。
- 男性名詞の傾向:
- -अ (-a) で終わる名詞(例: बालक - bālaka - 男の子)
- 特定の神様の名前(例: राम - rāma - ラーマ)
- 月や太陽などの自然現象(一部例外あり)
- 女性名詞の傾向:
- -आ (-ā) や -ई (-ī) で終わる名詞(例: बालिका - bālikā - 女の子、 नदी - nadī - 川)
- 自然や感情を表す名詞(一部例外あり)
- 中性名詞の傾向:
- -अम् (-am) で終わる名詞(例: फलम् - phalam - 果物、 ज्ञानम् - jñānam - 知識)
注意点: これらの傾向はあくまで目安であり、例外も多く存在します。辞書などで一つ一つ確認していくことが大切です。
2. サンスクリット語の名詞の「数」
サンスクリット語の名詞には、単数(एकवचन - ekavacanam)、双数(द्विवचन - dvivacanam)、複数(बहुवचन - bahuvacanam) の3つの「数」があります。日本語には「双数」という概念がないため、少し特殊かもしれません。
- 単数(एकवचन - ekavacanam): 1つのものを表します。(例: पुरुषः - puruṣaḥ - 男の人)
- 双数(द्विवचन - dvivacanam): 2つのものを表します。(例: पुरुषौ - puruṣau - 2人の男の人)
- 複数(बहुवचन - bahuvacanam): 3つ以上のものを表します。(例: पुरुषाः - puruṣāḥ - 男の人たち)
仏典における「双数」
仏典の中では、対になっているもの(例えば、両目、両耳、父母など)を表す際によく双数が用いられます。
3. 簡単な अभ्यास (練習問題)
次のサンスクリット語の名詞の性と数を考えてみましょう。(現時点では、辞書などを参照しても構いません)
- पुस्तकम् (pustakam) - 本
- अश्वः (aśvaḥ) - 馬
- लता (latā) - つる
- मित्रौ (mitrau) - 2人の友達
- देवाः (devāḥ) - 神々
(解答は次回の記事で解説します!)
まとめ
今回の記事では、サンスクリット語の名詞の「性」と「数」の基礎について学びました。
- 名詞には 男性・女性・中性 の3つの性がある。
- 名詞には 単数・双数・複数 の3つの数がある。
- 名詞の性は文法的な役割を持ち、語尾の傾向からある程度判断できる。
- 双数は2つのものを表す特別な数である。
次回は、いよいよ名詞が文の中でどのような形に変化するのか、「格変化(かくへんか)」について解説していきます。お楽しみに!