人生を浪費しなければ、人生を見つけることはできない。
この言葉は、飛行家チャールズ・リンドバーグの妻であり、自身も作家であったアン・モロー・リンドバーグの言葉です。初めてこの言葉に触れた時、少しドキッとしました。「浪費」という言葉には、どうしてもネガティブなイメージがつきまとうからです。しかし、深く考えてみると、この言葉には人生の本質を突くような、力強いメッセージが込められていることに気づかされます。
恐れずに「無駄」を楽しむ勇気
私たちは、どうしても効率や合理性を重視しがちです。「この行動は意味があるのか」「将来に繋がるのか」といった損得勘定で、日々の選択をしてしまうことは少なくありません。もちろん、それは大切なことではありますが、あまりにも計算づくで生きようとすると、予期せぬ発見や心躍るような偶然の出会いを逃してしまうのではないでしょうか。
アン・モロー・リンドバーグの言う「浪費」とは、決して無計画にお金や時間を垂れ流すことではないでしょう。それは、目的や効率だけを追い求めるのではなく、時には立ち止まって寄り道をしてみる、興味の赴くままに新しいことに挑戦してみる、一見すると無駄に思えるような時間の中に身を置いてみる、そういった心の余裕や遊び心を持つことの大切さを教えてくれているのだと思います。
ビジネスにおける「浪費」という視点
この考え方をビジネスに当てはめてみると、意外な発見があります。
例えば、
- 新しいアイデアを試すための「実験的な投資」: 短期的な利益に繋がらないかもしれないけれど、将来の可能性を広げるための研究開発や、斬新なプロモーション施策などは、ある意味「浪費」と捉えられるかもしれません。しかし、そこからイノベーションが生まれたり、新たな顧客層を開拓できたりする可能性を秘めています。
- チームの創造性を刺激する「ゆとりある時間」: 常に時間に追われ、タスクに追われている状態では、斬新なアイデアは生まれにくいものです。あえて業務時間内に自由な発想を促すための時間を設けたり、チームビルディングのためのイベントを実施したりすることは、一見すると非効率な「浪費」かもしれません。しかし、そこから生まれるチームの一体感や新しい発想は、長期的に見れば大きな成果に繋がるはずです。
- 顧客との「深い繋がり」を築くための「手間」: マニュアル通りの効率的な対応だけでは、顧客の心に響くことはありません。一人ひとりの顧客の声に耳を傾け、時には手間のかかるパーソナルな対応をすることは、短期的な効率を考えれば「浪費」かもしれません。しかし、そうした丁寧な対応こそが、顧客のロイヤリティを高め、長期的な信頼関係を築く上で不可欠です。
予期せぬ「副産物」こそが宝物
もちろん、ただ闇雲に時間やお金を使うことが良いわけではありません。大切なのは、「何が生まれるかわからない」という可能性に心を (開く) ことです。一見無駄に思える経験の中にこそ、新しい発見や学び、そして何よりも「自分らしい生き方」を見つけるヒントが隠されているのではないでしょうか。
ビジネスにおいても同じです。効率や計画性も重要ですが、時には少し立ち止まって、遊び心や好奇心に従ってみる。そうした「浪費」の中にこそ、未来を切り開く鍵が眠っているのかもしれません。
人生もビジネスも、予定調和だけでは面白くありません。時には「無駄」を楽しむ勇気を持つこと。それこそが、本当に「見つける」ための、大切な一歩なのかもしれません。