第2回:サンスクリットの文字 - デーヴァナーガリー文字入門 (1)

皆さん、こんにちは!前回の「はじめに」では、サンスクリットを学ぶ意義や、このブログの進め方についてお話しました。今回からは、いよいよサンスクリットの文字、デーヴァナーガリー文字の世界へ足を踏み入れていきましょう。

デーヴァナーガリー文字とは?

デーヴァナーガリー文字は、インドの多くの言語(ヒンディー語、マラーティー語、ネパール語など)で使用されている文字体系です。サンスクリット語もこの美しい文字で記述されます。

特徴:

  • アブギダ: シラブル(音節)を表す文字体系で、基本的には子音字に母音記号が付くことで音を表します。
  • 左から右へ横書き: 日本語とは逆方向に書きます。
  • 文字の上に引かれる線(シローレーカー): 多くの文字は、上部が線で繋がっているように見えます。これは「シローレーカー」と呼ばれる線で、単語のまとまりを示す役割があります。

母音(स्वर - svara)

まずは、デーヴァナーガリー文字の母音から見ていきましょう。サンスクリットの母音には、日本語の「あ・い・う・え・お」に似た基本的な母音と、それらの長音、そして少し特殊な母音があります。

ローマ字表記 デーヴァナーガリー文字 名称 発音の目安
a 短い「ア」
ā アー 長い「アー」
i 短い「イ」
ī イー 長い「イー」
u 短い「ウ」
ū ウー 長い「ウー」
舌を丸めて出す「ル」に近い音
リー ऋの長音(現代語ではあまり区別されない)
舌先を歯の裏につけて出す「ル」に近い音
リー ḷの長音(現代語ではほとんど使われない)
e エー 常に長音に近い「エー」
ai アイ 「ア」と「イ」を繋げた音
o オー 常に長音に近い「オー」
au アウ 「ア」と「ウ」を繋げた音

ポイント:

  • 短母音と長母音は、意味を区別する上で非常に重要です。
  • 「ṛ」「ṝ」「ḷ」「ḹ」は、日本語にはない音なので、最初は少し難しく感じるかもしれません。特に「ḷ」と「ḹ」は現代語ではあまり使われません。
  • 「e」と「o」は、常に長音に近い発音になります。

母音字の形と単独での使用

上記の表は、母音が単独で現れる場合の文字の形です。単語の先頭などで母音として発音される場合にこの形が使われます。

子音字との組み合わせ - 母音記号(मात्रा - mātrā)

デーヴァナーガリー文字の基本は、子音字に母音記号(マートラー)が付いて音節を表すことです。子音字は次回詳しく解説しますが、ここでは例として最も基本的な子音「क्」(k - カ)に様々な母音記号が付いた形を見てみましょう。

母音 母音記号 क् + 母音記号 発音
(なし) क्
का カー
ि कि
की キー
कु
कू クー
कृ クリ
कृ̄ クリー
क्लृ クリ(ḷ)
क्लृ̄ クリー(ḹ)
के ケー
कै カイ
को コー
कौ カウ

ポイント:

  • 母音「अ」には、独立した母音記号はありません。子音字単体で「ア」の音を表します。
  • 母音記号は、子音字の右、左、上、下など、様々な位置に付きます。
  • ऋ、ॠ、ऌ、ॡの母音記号は、子音字の下に付きます。

अभ्यास - 練習問題

  1. 以下のデーヴァナーガリー文字をローマ字で表記してみましょう。

  2. 以下のローマ字表記に対応するデーヴァナーガリー文字を書いてみましょう。

    • a
    • ū
    • i
    • o
    • ai
  3. 子音「म्」(m - マ)に以下の母音記号を付けて、発音を想像してみましょう。

    • ि

次回予告

今回は、デーヴァナーガリー文字の母音について学びました。次回は、子音(व्यञ्जन - vyañjana)について詳しく解説していきます。お楽しみに!