GEORGIA事件に関する最高裁昭和61年1月23日第一小法廷判決(昭和60年(行ツ)第68号)は、商標法3条1項3号(旧法)に規定する「商品の産地又は販売地」の意義について重要な判断を示しました。本件は、アメリカ合衆国ジョージア州に本店のある会社が、「GEORGIA」の文字をコーヒー等の指定商品に使用する商標登録出願に対し、同州が食品加工業が盛んであるため、取引者・需要者がその商品をジョージア州で製造されたものと認識し、自他商品の識別表示とは認識しないとして拒絶査定を受けた事案です。

 

商標・意匠・不正競争判例百選 第2版(別冊ジュリスト no. 248)

 

判決の要旨

最高裁は、商標法3条1項3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りると判示し、上告を棄却しました。

裁判所は、原審の確定した事実関係に基づき、「GEORGIA」なる商標に接する需要者又は取引者は、その指定商品であるコーヒー、コーヒー飲料等がアメリカ合衆国のジョージアという地において生産されているであろうと一般に認識するものと認められるため、本件商標は商標法3条1項3号所定の商標に該当するとしました。

解説のポイント

解説では、以下の点が指摘されています。

  • 本判決は、商標法3条1項3号の解釈に関し、指定商品が現実に産地・販売地で生産・販売されている必要はなく、需要者・取引者の認識を重視する判断を示した点で重要です。
  • ワイキキ事件判決(最判昭和54・4・10)と同様の趣旨を前提として、「商品の産地、販売地」の解釈を示したとされています。
  • 商標法3条1項3号の趣旨は、商品の産地・販売地などの記述的・説明的な標章は、自他商品識別力を欠くこと、および取引上有用・不可欠であり特定人の独占を許すのは公益に反することにあります(ワイキキ事件判決の趣旨)。
  • 商品の現実の産地・販売地ではない地名を産地・販売地として使用する場合、一般的に使用されているとは言い難いため、本判決の「商品が生産されまたは販売されているであろうと認識されていればよい」という解釈は、自他商品識別機能を欠くという観点からは疑問も残ると指摘されています。

GEORGIA事件判決は、地理的名称が商標登録の可否に与える影響を考える上で重要な判例であり、単に現実の生産地・販売地であるか否かではなく、需要者の認識が判断の重要な要素となることを示しました。