ネガティブ・ケイパビリティは、もともと文学の分野で使われていた言葉ですが、近年、人材育成や組織開発の領域でも注目されています。

 

ネガティブ・ケイパビリティとは

ネガティブ・ケイパビリティとは、不確実さや曖昧さ、矛盾といった状況に耐え、すぐに答えを出したり、性急な判断をしたりすることなく、じっくりと深く考える力のことです。詩人のジョン・キーツが提唱した概念で、「事実や理由によって裏付けられなくても、不確実さ、神秘、疑念の中にいられる能力」と定義されています。

HRMにおけるネガティブ・ケイパビリティの重要性

現代のビジネス環境は、変化が激しく、予測困難な状況に満ちています。このような状況下では、従来の論理的思考や分析力だけでは対応できない場面が増えています。

ネガティブ・ケイパビリティを持つ人材は、以下のような点で組織に貢献すると考えられます。

  • 複雑な問題への対応: 曖昧な状況を受け入れ、多角的な視点から深く考えることで、本質的な課題を見抜き、新たな解決策を生み出す可能性を高めます。
  • 創造性の発揮: 既存の枠にとらわれず、不確実な状況の中で試行錯誤を繰り返すことで、革新的なアイデアや発想が生まれやすくなります。
  • 変化への適応: 予期せぬ変化や困難な状況に直面した際にも、感情的に反応することなく、冷静に状況を分析し、柔軟に対応することができます。
  • リーダーシップ: 状況が不透明な中でも、焦らず、周囲の意見に耳を傾けながら、より良い方向へと導くリーダーシップを発揮することが期待できます。

ネガティブ・ケイパビリティを育成するために

ネガティブ・ケイパビリティは、座学で身につけられるものではなく、日々の経験や内省を通して育まれるものです。HRMの観点からは、以下のような取り組みが考えられます。

  • 多様な経験の機会提供: 異質な文化や価値観に触れる機会、未経験の業務に挑戦する機会などを提供することで、不確実な状況への耐性を養います。
  • 内省を促す仕組み: 研修やワークショップ、1on1ミーティングなどを通して、自身の思考や感情を深く理解する機会を提供します。
  • 対話と議論の重視: 多様な意見が交わるオープンなコミュニケーションを促進することで、異なる視点から物事を捉える力を養います。
  • 失敗を許容する文化: 挑戦的な取り組みを奨励し、失敗から学びを得る文化を醸成することで、恐れずに探求する姿勢を育てます。

ネガティブ・ケイパビリティは、VUCA時代(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の高い時代)において、個人と組織の成長に不可欠な要素と言えるでしょう。