ベトナムの有期雇用契約と解雇について解説します。
有期雇用契約について
ベトナムの労働法では、労働契約は以下の2種類に分類されます。
- 無期雇用契約: 期間の定めがない契約
- 有期雇用契約: 一定の期間を定める契約で、その期間は最長36ヶ月です。
有期雇用契約は、原則として1回のみ更新が可能です。2回目の更新後、労働者が引き続き勤務する場合、その雇用契約は無期雇用契約に転換されます。ただし、一部の例外規定があります。
有期雇用契約の解雇について
有期雇用契約の期間中の解雇は、無期雇用契約に比べて制限が多いです。雇用主が一方的に有期雇用契約を解除できるのは、労働法に定められた以下のいずれかの事由に該当する場合に限られます(労働法第36条)。
- 労働者が、労働契約に定められた業務を常時適切に遂行できないと評価された場合(雇用主の評価基準に基づく)。
- 労働者が病気や事故により、以下の期間を超えて休業した場合。
- 12ヶ月以上の無期雇用契約の場合:継続して12ヶ月
- 12ヶ月から36ヶ月の有期雇用契約の場合:継続して6ヶ月
- 12ヶ月未満の有期雇用契約の場合:契約期間の半分を超える期間
- 天災、火災、またはその他の不可抗力により、雇用主が事業の縮小または閉鎖を余儀なくされた場合。
- 雇用主が組織再編、技術革新、事業統合・分割などを行う必要があり、人員削減を行う場合。
- 労働者が無断で5日以上勤務を欠席した場合。
- 労働者が雇用契約締結時に虚偽の情報を提供し、それが労働契約の履行に影響を与える場合。
- 労働者が懲戒解雇の対象となる行為を行った場合(労働法第125条)。
解雇の手続きと通知
雇用主が上記の事由に基づいて有期雇用契約を解除する場合、以下の事前通知期間が必要です(労働法第36条)。
- 12ヶ月以上36ヶ月以下の有期雇用契約の場合:少なくとも30日前
- 12ヶ月未満の有期雇用契約の場合:少なくとも3営業日前
ただし、上記1、5、6、7の事由に該当する場合は、事前通知は不要です。
留意点
- ベトナムの労働法は労働者保護の傾向が強く、不当な解雇は法的紛争に発展する可能性があります。
- 実務上は、解雇ではなく、労使双方の合意による退職(労働法第36条3項)を選択するケースが多いようです。
- 試用期間中の解雇は、日本の労働法と比較して比較的容易です。
- 契約期間満了による契約終了の場合も、原則として労働者への通知が必要です(労働法第45条)。