モロッコ社会における社会的・経済的な協力と連帯の形態、特に部族制度とその関連に関する歴史的な解説です。以下の点について詳しく説明します。

1. 社会的資本と慣習法(عرف)

慣習法は、長期間にわたり地域社会で確立された行動規範です。この慣習法は、書面で記録されていない法律であり、人々がその慣習を遵守することが期待される法的な義務となっています。モロッコでは、これらの慣習法が社会秩序を維持するための基本的な枠組みとなり、特にアマジグ(ベルベル)人々の間では、慣習法と成文化された法がほぼ同義と見なされています。

慣習法の力は、物理的な面(社会的行動の繰り返し)と精神的な面(その遵守が義務とされるという意識)によって支えられています。このような慣習が法律として成り立つ背景には、長年の継続と地域社会内での信頼があることがわかります。

2. 部族制度(النظام القبلي)

部族制度は、モロッコ社会における個人や集団の生活を構築する重要な要素です。部族制度は、単なる社会的な組織の枠を超えて、伝統、慣習、信念、そして社会秩序そのものに深く結びついています。モロッコの部族は、特定の地域を基盤に、血縁や親族関係を中心に形成されており、これが集団の結束力と協力を生み出します。

部族間での協力は、個人にとっては保護の源であり、集団全体の社会的・経済的な繁栄を支える重要な要素です。例えば、土地を共有する場合でも、部族内で協力し合って困難を乗り越えることが基本的な価値観となっています。

3. 家族制度(العائلة)

家族は、モロッコにおける部族制度の基本単位として、社会内で重要な役割を果たします。家族内では、父親が家族の管理者として、土地や財産を管理し、その支配権を行使します。家族の財産は、父親が死亡するまで分割されることなく管理され、その後も家族全体の合意によって売買や賃貸が行われます。

このような家族制度は、モロッコの農村部などでは土地や資源の管理において重要な役割を担っていますが、一方でその社会構造が発展に対して障害となることもあります。例えば、財産の売買や賃貸が家族全員の合意を必要とするため、個人の自由な経済活動が制限されることがあります。

まとめ

このテキストは、モロッコ社会における伝統的な社会構造—部族制度、慣習法、家族制度—がどのように経済活動や社会的行動に影響を与え、モロッコの経済・社会システムにおいてどのような役割を果たしてきたかを示しています。これらの社会的枠組みは、モロッコ社会の価値観や行動規範を形作る重要な要素であり、近代化や発展においても一定の影響を及ぼしています。