モロッコのマネーロンダリング(資金洗浄)犯罪に関する法的な枠組みを解説しています。以下、重要なポイントを順に解説します。
1. マネーロンダリング犯罪の仮定の要素(源泉となる犯罪)
- 仮定の要素とは、マネーロンダリング犯罪が成立するためには、まず最初に「不正な資金の源(初期犯罪)」が必要だということです。つまり、マネーロンダリング自体は、他の違法行為(例えば、麻薬取引や人身売買など)から得られた不正な資金を合法的に見せかけるために行われるものです。もし最初の違法行為が存在しなければ、マネーロンダリングとして扱うことはできません。
2. 初期犯罪の特定
- モロッコでは、マネーロンダリング犯罪における初期犯罪(不正な資金源)を明確に定義しています。これにより、どのような違法行為から得た資金がマネーロンダリングの対象となるかが明確にされています。このような規定により、犯罪行為を特定しやすくし、合法化する過程に関与する者を追及することができます。
3. 法43-05の第574.2条
- モロッコの法43-05(マネーロンダリング防止に関する法律)の第574.2条は、マネーロンダリングを構成する不正資金の源となる具体的な犯罪を列挙しています。これらの犯罪は、国内外で行われた場合でも対象となります。リストには以下のような犯罪が含まれます:
- 麻薬取引:麻薬や精神作用物質の違法取引。
- 人身売買:売買目的での人の違法な取引。
- 密入国:不法に国境を越えさせる行為。
- 武器の違法取引:武器や弾薬の違法な販売や取引。
- 賄賂や横領:公私の財産に対する賄賂や権力の乱用、横領。
- テロ関連犯罪:テロ活動に関連する犯罪。
- 偽造:通貨や公的文書、決済手段の偽造。
- 性的搾取:性的搾取を目的とした行為。
これらの犯罪で得た不正な資金が洗浄され、合法的な資金に見せかけられます。モロッコの法制度では、こうした犯罪から得た資金がマネーロンダリングの対象であることを強調しています。
4. 特定の法体系との比較
- このような定義は、モロッコの法律に特有であり、他の国々(例えば、クウェート、エジプト、アラブ首長国連邦など)の法体系でも似たような定義がされていますが、それぞれの国の法律には微妙な違いがあることが示唆されています。例えば、モロッコは**「リスト方式」**で初期犯罪を列挙し、どの犯罪がマネーロンダリングの源となり得るかを明確に定義している点が特徴です。
このように、モロッコは国際的な努力に従い、マネーロンダリング防止に関する厳格な法律を制定しており、不正資金の源となる犯罪を明確に特定しています。これにより、マネーロンダリングを抑制し、経済の健全性を保つための取り組みが進められています。