このテキストは、イスラム法における「手を切る」刑罰に関連する規定について述べたもので、特に奴隷や家庭内の盗みについての例に焦点を当てています。イスラム法の中で「手を切る」という刑罰は、特定の盗みの罪に対する厳格な処罰として定められていますが、その適用にはいくつかの条件があります。以下に、その主要な点について解説します。

1. 奴隷による盗みと手の切断

最初に述べられているのは、奴隷が盗みを犯した場合についてです。もし奴隷が主人の財産から盗んだ場合、通常はその手を切られるべきとされていますが、特定の状況ではその適用が異なることもあります。たとえば、奴隷が主人の家から盗んだ場合、その手は切られますが、家族の一員として扱われることが多い妻の財産から盗んだ場合、同じ刑罰が適用されないことが示唆されています。これには家族内の信頼関係や役割が影響していると考えられます。

2. 小さな子供や外国人の盗み

マリクは、明確に言葉を話せない小さな子供や外国人についても言及しています。もしこれらの人々が盗みを犯した場合、その盗まれたものが施錠された場所や保管場所から盗まれたものであれば、手を切る処罰が適用されることになります。しかし、盗まれた物がそのような場所から盗まれたものではなく、外部の無人の場所から盗まれた場合には、この刑罰は適用されないとされています。この点は、盗みの対象となった物の保護状態が刑罰の適用に重要な役割を果たしていることを示しています。

3. 墓からの盗み

墓から盗んだ場合も、物が手を切るべきものであれば、刑罰として手が切られます。墓も家のように「保管場所」として扱われるため、墓から取り出された物はその価値に応じて刑罰の対象になります。これにより、墓という神聖な場所に対する保護が強調されています。

4. 果物やヤシの実の盗み

果物やヤシの実を盗んだ場合、手を切る刑罰が適用されないことが明確に述べられています。これは、これらが盗まれた際にそれほど重大な罪と見なされないためです。したがって、物の種類やその価値によって、刑罰の適用が異なることが理解できます。

5. 家族内での盗み

夫婦間や家族内での盗みについても言及されています。もし妻や夫が盗んだ場合、それが二人が共に鍵をかけた部屋以外の場所から盗まれたものであれば、その手は切られます。これは家族内の財産が守られるべきという立場からの規定です。

6. ウマルによる判断

ウマル・イブン・アル=ハッターブが述べたように、盗んだものの内容やその盗みの状況によって、手を切るかどうかが判断されます。たとえば、鏡のように家庭内で使われる物が盗まれた場合、その手を切ることは適切ではないとされています。この判断は、盗みの対象が生活に密接に関連した物であるかどうか、また盗まれた物がその価値に応じて適切に扱われるべきかを基にしたものです。


このように、イスラム法では「手を切る」刑罰が盗みに対する非常に厳格な対応とされていますが、その適用には詳細な条件が設けられています。物の価値や保管状態、盗んだ者の立場や関係性によって刑罰が変わるため、非常に慎重に判断されるべき事案であることが分かります。

 

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マリクは次のように述べています。「手を切るべきものを盗んだ主人からの奴隷について、手は切られない。それは、主人の財産から盗んだ女奴隷についても同様だ。彼女の手は切られない。」
さらにマリクは、家の中で仕えておらず、信頼されていない奴隷がひそかに主人の妻の財産から手を切るべきものを盗んだ場合について述べています。「その場合、手は切られる。」
「それは、夫や妻に仕えていない女奴隷が主人の財産から手を切るべきものを盗んだ場合と同じだ。その場合、彼女の手は切られる。」
マリクは、「夫が妻の財産から手を切るべきものを盗んだ場合や、妻が夫の財産から手を切るべきものを盗んだ場合、それが二人が共に鍵をかけた部屋以外の場所から盗まれたものであれば、手は切られるべきだ。」とも述べています。
マリクは、小さな子どもやはっきりとした言葉を話さない外国人についても言及し、「もし彼らが保管場所や施錠された部屋から何かを盗まれた場合、その泥棒の手は切られる。しかし、財産がその保管場所や施錠された部屋の外から盗まれた場合、手は切られない。」と述べています。
さらに、マリクは「墓から盗んだ場合、盗んだものが手を切るべきものであれば、その手は切られるべきだ。墓も家と同じように保管場所であり、そこから取り出された場合にのみ手が切られる。」とも述べています。


41.11 手を切るべきでないものに関する部分
ヤフヤがマリクから伝えた話によると、ある奴隷がある男性の庭から小さなヤシの木を盗み、それを主人の庭に植えたという。ヤシの木の持ち主はその木を探して見つけ、マルワーン・イブン・アル=ハカムに助けを求めました。マルワーンはその奴隷を監禁し、手を切ろうとしましたが、奴隷の主人はラフィア・イブン・カディージにこの件を尋ねました。ラフィアは、預言者が「果物やヤシの芯で手を切ることはない」と言ったのを聞いたと答えました。そのため、奴隷の主人はラフィアとともにマルワーンの元に行き、ラフィアは「この奴隷を捕まえたのか?」と尋ねました。マルワーンは「はい」と答え、ラフィアは「預言者が『果物やヤシの芯で手を切ることはない』と言った」と言いました。マルワーンはその後、奴隷を解放するよう命じました。
また、ヤフヤがマリクから伝えた話によると、アブドゥッラー・イブン・アムル・イブン・アル=ハドラミは、彼の奴隷が盗みを犯したとして、ウマル・イブン・アル=ハッターブの元に連れて行きました。アブドゥッラーは「この奴隷の手を切ってください」と頼みましたが、ウマルは「何を盗んだのか?」と尋ねました。アブドゥッラーは「妻の鏡を盗んだ。価値は60ディナールだ」と答えました。ウマルは「彼を解放しなさい。その手を切ることはない。彼はあなたの奴隷で、あなたの財産を盗んだのだから。」と言いました。