この部分は、マリクの『ムアッタ』からの伝承で、贈与や失われた物に関する法的な判断について述べています。以下に各セクションを詳しく解説します。
1. 贈与の取り戻し(36.37)
この部分では、親が子どもに贈与を行った後に、その贈与を取り戻すことができる条件について述べられています。
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贈与の取り戻し
親が息子や娘に贈与をした場合、もしその贈与が後に債務の基盤となり、債務者としての責任を負うことになった場合、親はその贈与を取り戻すことができません。逆に、贈与がその後の債務の原因にならなければ、親はその贈与を取り戻すことができるという判断です。 -
結婚と贈与の取り戻し
また、親が息子に贈与をして、その贈与が息子の結婚において金銭的な条件を伴う場合(たとえば、贈与が高額な持参金となっている場合)、その後、親が「贈与を取り戻す」と言ったとしても、その贈与を取り戻すことはできないということです。これは、贈与が結婚においてすでに重要な役割を果たしているため、取り戻しは許されないという立場です。
このような規定は、贈与の一方的な取り戻しを防ぐことで、贈与が実際にその目的に従って正当に使用されることを保証します。
2. 失われた物に関する法(36.38)
次に、失われた物(いわゆる「見つけ物」)に関する法的判断について記載されています。
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見つけた物の取り扱い
見つけた物について、まずはその詳細を記録し、1年間その物を公表して、所有者が現れるのを待つ必要があります。もし所有者が現れれば、物は所有者に返却され、所有者が現れなければ、見つけた人のものとなるというルールです。 -
失われた羊やラクダ
さらに、失われた羊やラクダについても述べられています。羊は「あなたのもの、またはあなたの兄弟のもの、または狼のもの」と言われ、ラクダに関しては「あなたの心配ではない」とされています。ラクダは自然に水を探し、食べ物を見つけ、最終的に所有者が見つけるまで生き延びるとされています。
これは、動物が自力で生存する能力を持っているため、所有者がそれを見つけるまで放置しても問題ないという立場です。
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見つけた物の公表
見つけた物を公表することが重要だとされています。例えば、80ディナールが入った財布を見つけた場合、1年間モスクで告知し、その間に所有者が現れなければ、それは見つけた人のものになるというものです。 -
見つけた物の使用について
最後に、'アブドラ・イブン・ウマルが見つけた物について、使用を避けるべきであると指示しています。物を見つけた人は、それを自分のものとして使うことを避けるべきだというアドバイスです。
解説まとめ
この部分は、贈与と見つけた物に関する法的判断を示しており、特に贈与に関しては、贈与が一度行われた後の取り戻しに制限を設け、贈与を受けた者がそれを実際に使用する権利を保護する方向にあります。また、見つけた物に関しては、所有者を見つけるために物を公表することが求められ、所有者が現れなければ物は見つけた人のものとなるというルールが定められています。
これらのルールは、取引の公平性や所有権を守るために重要な基盤を提供し、贈与や見つけた物の取り扱いに関する透明性と正当性を確保します。
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36.37 生命給付に関する判断
ヤヒヤは、マリクが言ったことを伝えました。「我々のコミュニティで一般的に合意されている方法では、もし誰かが息子に贈り物をした場合、その息子がその贈り物に基づいて債務を負っていない限り、その贈り物は取り戻せます。しかし、もし息子がその贈り物によって借金を始めた場合、贈り主はその贈り物から何も取り戻すことはできません。」
「もしある男が息子や娘に何かを与え、その後、息子がその財産を理由に女性と結婚し、その父親が『その贈り物を取り戻す』と言った場合、その父親はその贈り物を取り戻すことはできません。」
36.38 失われた物の発見に関する判断
ヤヒヤは、マリクが言ったことを伝えました。「ある男がアッラーの使徒に『失われた物についてどうすべきか』と尋ねたところ、使徒は『見つけた物の詳細を記録し、それを1年間公表しなさい。もし所有者が現れたら、それを渡しなさい。現れなければ、それはあなたのものです』と言った。次に、男は『では失われた羊についてはどうですか?』と尋ね、使徒は『それはあなたのものか、あなたの兄弟のものか、または狼のものです』と答えた。男はさらに『では失われたラクダについてはどうですか?』と尋ね、使徒は『それはあなたの関心事ではありません。それは水を飲み、木を食べて、最終的に所有者に見つけられるまで生きます』と言った。」
ヤヒヤはまた、マリクが言ったことを伝えました。「アyyub ibn Mūsāから、Mu'awiya ibn 'Abdullah ibn Badr al-Juhaniが言ったことを伝えました。彼の父はシリアへの道中で80ディナールが入った財布を見つけ、そのことを'ウマル ibn al-Khattābに報告した。'ウマルは『それをモスクの門で告知し、1年間シリアから帰ってくる者に伝えなさい。1年が経過したら、それはあなたのものだ』と言った。」
ヤヒヤは、また別の事例を伝えました。「ある男が何かを見つけ、'アブドラ ibn 'ウマルにそれについて尋ねた。'アブドラは『それを知らせなさい!』と言い、男はそれを行った。'アブドラは再び『それを繰り返しなさい』と言い、男はそれを繰り返した。」
'アブドラは言いました。「私はあなたにそれを使うことを命じません。もし使いたくないのであれば、それを放置することができます。」