イスラーム法における**qirād(キラード、またはアラビア語で「業務委託契約」)**に関する規定について述べています。qirādは、投資者が資本(通常は現金)を代理人に貸し、その代理人がその資本を用いて商取引を行い、得られた利益を事前に取り決めた割合で分け合う契約形態です。以下では、各セクションごとに重要なポイントを解説します。

32.9 キラードにおける経費

  1. 代理人の経費支出
    • マリクは言った:キラード契約において、代理人が旅行を必要とする場合、経費は投資者から支払われるべきだと述べています。特に大規模な投資の場合、代理人は自分の生活費(食事や衣服など)を資本から支出できることが認められています。ただし、代理人が単に自分の住んでいる都市内で取引をしている場合は、経費を資本から支払うことは許されません。
  2. 代理人の経費に関する条件
    • 投資が大きい場合には、代理人は「投資の規模に見合った適切な方法で食事や衣服を買う」ことができるとされています。つまり、代理人がその業務に必要な範囲で合理的な生活支出を行うことが認められています。これは、代理人が契約遂行に必要な条件を整えるために資本を使用することを許容しています。

32.10 キラードにおける許されない経費

  1. 代理人の不適切な経費支出

    • マリクは言った:代理人がキラード資金を他人に渡したり、乞食に寄付することは許されていません。この規定は、代理人が契約外で資金を使用しないようにするためのものです。もし代理人が資金を使って他人に贈り物をしたり、無断で支出を行った場合、その支出は投資者の承認を得ていなければならず、もし拒否された場合、代理人はその金額を投資者に返済しなければならないとしています。
  2. 代理人の無断での支出

    • もし代理人が自己の意図で食べ物を出すなどの行為を行う場合、それが投資者の許可なしに行われた場合、その支出は不正とされ、代理人はその分を返済する責任を負います。これは代理人が資金を無駄遣いしないようにするための規定です。

32.11 キラードにおける負債

  1. 代理人の死亡とその後の処理

    • 代理人がキラード契約のもとで商取引を行い、利益を得た場合に、代理人が死去した場合、その遺族は代理人が得た利益を受け取る権利を持つとされています。これは代理人が契約のもとで得た利益に対して、その相続人も利益を享受するという原則に基づいています。
  2. 相続人の役割

    • もし代理人が亡くなった後に債務者から支払いを受ける必要がある場合、その相続人は代理人と同じ立場で、その利益の分配を受けることができます。もし相続人が信頼できる場合、彼らが支払いを回収する責任を負うことになりますが、信頼できない場合には信頼できる人物に回収を委任することが認められています。
  3. 相続人の権利と義務

    • 相続人は、故人(代理人)が持っていた権利と義務を引き継ぎ、代理人が行った商取引における利益や損失を分け合うことになります。もし代理人が借金を抱えていた場合、その返済も相続人が引き継ぐことになります。

解説のまとめ

このテキストは、キラード契約における様々な条件と規定について説明しています。主要なテーマは次の通りです:

  1. 代理人の経費:代理人は自分が必要とする経費を資本から支出することが許されますが、生活費や個人的な贈り物など、業務に直接関連しない支出は許されていません。

  2. 代理人の義務と責任:代理人は契約条件を遵守し、資金を他人に渡すことや不正な支出を行うことは禁じられています。もし代理人が契約を越えて行動した場合、その責任を負うことになります。

  3. 代理人の死亡と相続人の役割:代理人が死亡した場合、その遺族は代理人が得た利益を受け取る権利を有し、支払いの回収や負債の処理も引き継ぐことになります。

これらの規定は、qirād契約における公正さと透明性を保ち、代理人が資本を管理する際の適切な行動基準を示すものです。また、代理人と投資者間の信頼関係を保ち、無駄な損失や不正な行動を防ぐための規制として機能しています。


32.9 キラードにおける経費

10. ヤヒヤは言った
「マリクは、ある投資者がキラードの資金をある人物に貸し出した場合について話しました。マリクは言った、もし投資が大きい場合、代理人の旅行費用はその資金から支払われるべきです。彼は投資の規模に見合った適切な方法で食事や衣服を買うことができます。もし彼が困難を避けるために、資金から賃金を取ることが必要であれば、それも許されます。しかし、代理人やその類の者が責任を負うべきでない仕事もあります。それには、借金の回収、商品の輸送、積み込みなどが含まれます。代理人はそのような仕事を他の人に委託するために資本を使うことができます。代理人は、資本を使って自分や家族のために衣服を買うことは許されていません。投資のために旅行する際にのみ、経費が資本から支払われることが許されます。もし代理人が自分の住む都市内で商品の取引を行うだけであれば、資本から経費や衣服を支払うことはありません。

マリクはまた、ある投資者がキラード資金を代理人に渡し、その代理人が自分の資本と共に出かけた場合についても話しました。その場合、経費はキラード資金と彼自身の資本の割合に応じて支払われます。


32.10 キラードにおける許されない経費

11. ヤヒヤは言った
「マリクは、代理人がキラードの資金を持っていて、それを使って衣服を買ったりした場合について話しました。マリクは言った、代理人はその資金を他人に渡してはならず、乞食に与えたり、誰かに賠償金を支払ったりすることもできません。もし、代理人が人々に食べ物を出すことになり、他の人も食べ物を出す場合、投資者の許可なしにそれを行うことが許されるのは、代理人が何かを施しとして与えようとしていない場合のみです。もし代理人がそのようなことを意図しているのであれば、投資者の許可を得る必要があります。もし投資者がそれを承認すれば問題はありませんが、もし拒否した場合、代理人はそれを元本に相当するものと交換して返済しなければなりません。


32.11 キラードにおける負債

12. ヤヒヤは言った
「マリクは、ある投資者がキラード資金を代理人に渡し、代理人がその資金で商品を購入し、それを後払いで販売し、取引で利益を得た場合、その代理人が支払いを受ける前に亡くなった場合について話しました。その場合、代理人の相続人がそのお金を受け取ろうとするなら、彼らは亡き父親の定めた利益の割合を受け取ります。もし彼らがその支払いを債務者から回収するのに信頼できるのであれば、それは彼らのものです。もし債務者から回収することを好まない場合、彼らは投資者にその回収を委ねることができ、その場合、彼らは回収しなくても問題はなく、その結果に対して特に得るものも失うものもありません。もし彼らが回収する場合、父親が受け取ったのと同じ割合を受け取ります。彼らが信頼できない場合、信頼できる者を代わりに立ててそのお金を回収させることができます。もしその者が全額を回収した場合、相続人は父親と同じ立場に立つことになります。


この翻訳では、キラード契約における代理人の経費や義務、代理人の行動が規定されています。代理人が投資者の資金を使用する際に許される経費や、許可されていない支出についても説明されており、代理人が他者に資金を渡すことや支払いを行うことに対する条件が述べられています。また、代理人が死亡した場合の相続人の立場についても触れています。

 

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上記のqirād契約に関する規定は、基本的には投資と代理業務に関する内容ですが、雇用契約や解雇に関する法的議論といくつかの関連点があります。特に、代理人と投資者間の信頼関係や責任の分配という点で、雇用契約と類似の側面が見受けられます。以下では、これらの規定が雇用契約や解雇にどのように関係する可能性があるかを解説します。

1. 信頼関係と責任の分配

  • qirād契約では、代理人(業務を行う側)が投資者の資金を使って商取引を行い、その利益や損失を分け合うことが前提となっています。このような契約は、信頼関係に基づいて成立しており、代理人は自分の行動に対して責任を負います。
  • 雇用契約においても、雇用主(企業側)と従業員(労働者)の間には信頼関係があります。従業員は企業の利益を得るために働き、その報酬を得ることになります。もし従業員が業務規定に違反したり、不正行為を行った場合、その行為に対して責任を負う点では、qirād契約における代理人と同様の仕組みがあります。
  • 解雇の文脈では、従業員が契約や規定を守らない場合、雇用主は解雇する権利を持ちます。この点で、代理人が契約条件を守らなかった場合に責任を負うのと似た構造が見られます。

2. 過剰な行動(overstepping)と責任

  • qirād契約において、代理人が契約の範囲を超えて行動した場合(例えば、投資者の承認なしに資金を使って他の取引を行うなど)、代理人はその行動に対して責任を負い、場合によっては投資者に損害を補填しなければならないとされています。
  • 雇用契約においても、従業員が契約外の業務を行った場合や、業務範囲を超えた行動を取った場合、その行動が企業に損害を与えると、従業員は責任を負うことになります。また、解雇理由としても、「契約外の行動」や「過剰な行為」は一般的に認められます。例えば、従業員が会社の資産を私的に使用したり、不正な取引を行った場合には、解雇や法的措置が取られる可能性があります。

3. 代理人の経費と雇用契約における経費

  • qirād契約では、代理人が業務の遂行に必要な経費を投資者から支払うことが許されていますが、無断で経費を使った場合には、投資者の許可を得なければなりません。無許可の支出があれば、それを返済する責任が代理人に課せられます。
  • 雇用契約においても、従業員が業務を遂行するために必要な経費を会社から支払ってもらうことが通常です。しかし、従業員が私的な目的で業務経費を使った場合、その経費を返済する責任があります。たとえば、会社の経費を個人的な支出に充てた場合、企業はその返済を求めることができます。
  • また、解雇の原因にもなり得ます。業務外の経費を会社の資金から無断で支出する行為は、不正行為と見なされ、解雇事由となることがあります。

4. 代理人の死亡と相続人の権利

  • qirād契約では、代理人が死亡した場合、その相続人が代理人の役割を引き継ぎ、契約上の利益や損失の分配を受ける権利を持つとされています。代理人の業務が終了していない場合、相続人がその業務を継続するかどうかの選択肢もあります。
  • 雇用契約においても、従業員が死亡した場合、その家族(相続人)は、従業員がまだ完了していない業務に関する権利を引き継ぐ場合があります。たとえば、未払給与や退職金など、雇用契約に基づく残務を相続人が受け取ることがあります。また、業務が途中で終了する場合、その影響を受けるのは相続人ではなく、企業側の責任となることが一般的です。

5. 代理人の経費に関する制限と不正経費

  • 代理人が不正に経費を使うことが制限されている点は、雇用契約における不正経費の支出と似ています。たとえば、従業員が業務に関連のない支出をした場合、企業はその不正経費を返済させる権利を持ちます。また、過剰な支出がある場合、解雇理由としても扱われる可能性が高いです。

結論

qirād契約の規定と雇用契約の規定には、いくつかの重要な共通点があります。両者ともに、信頼関係を基盤にしており、契約を超える行動(過剰な行動)や経費管理に関する規定が中心となっています。また、代理人(または従業員)が契約を遵守しない場合には、責任を負うことが求められ、最終的には解雇などの措置が取られる場合もあります。

qirād契約は主に商業契約に関するものですが、代理人と投資者の関係が雇用主と従業員の関係に類似しており、その契約規定が雇用契約に適用される場合、企業の経営や労働法の運用において有用な指針を提供することができます。